【ロンドン時事】英国が15日、環太平洋連携協定(TPP)に加入した。日英経済連携協定(EPA)で見送られたコメの関税撤廃が実現し、日本政府や農家が日本産米の輸出拡大に期待を膨らませている。おにぎりを軽食として売り込む考えで、政府関係者は「サンドイッチに取って代わるくらい浸透してほしい」と意気込んでいる。
「すしより手軽で安価な上、おいしいところが魅力」。おにぎりの販売を8月に始めた香港出身のビッキー・レオンさんはこう話す。日によって産地の異なる日本産米を使い、客から好評を得ているが、価格が高いのが難点。関税撤廃で「いずれ安くなってくれれば」と語った。
日本貿易振興機構(JETRO)が11月にロンドンで主催した日本米のイベントでは、おにぎりをその場で握って振る舞う演出を通じ、水分を多く含む日本米の炊き方を紹介。産地や銘柄によって変えることで、おいしさが増すことを説明した。イタリア料理と和食を融合したレストランで働くシェフのウサマン・ハイデアさんは「軟らかくもちもちしている。こんなにおいしい米を食べたことがない」と目を見開いた。
英国で流通しているジャポニカ米(短粒種)はイタリア産やスペイン産が多く、日本産は高級店などでしか使われていない。円安を追い風に対英輸出は伸びているが、香港や米国の1割前後にとどまる。
レオンさんのパートナーで、ビジネスコンサルタントのリチャード・ゼンガーさんは、産地によって異なる味の体験が消費者の共感を呼ぶと指摘。日本米の販売拡大に向けては、SNSなど「消費者をターゲットにしたプロモーションが重要だ」と述べた。