高等教育の修学支援新制度、いわゆる「大学無償化」制度が改正され、令和7年度より支援が拡充されることをご存じですか? あるママはこれについて不満を噴出させます。
『うちには3人の子がいて今年、第一子は大学を卒業して社会人1年目、第二子は専門学校を卒業して同じく社会人1年目。2人の学生生活がかぶった2年間は、経済的にとても大変でした。第三子は親がのちに返済しますが、来年度から奨学金で大学に通う予定です。
うちの第三子と、3人の子がいるママ友の第一子が同級生でして……。ママ友が「大学無償化になるから良かった」と話すのがイライラします。仕方がないことだと自分に言い聞かせますが、悔しさを抑えきれません』
もっと詳しく!「大学無償化」の支援拡充とは?
支援を受けられるママ友宅と、受けられない投稿者さん宅。同じ子ども3人の世帯でも、対象になるケースとならないケースがあるようですね。まずは、令和7年度より始まる支援拡充のポイントを押さえておきましょう。
大学無償化制度は、本人の進学意欲があれば経済状況に関わらず、大学などに進学できるチャンスを与える、という少子化対策などのための制度。入学金と授業料の一定額を支援するというものです。制度にはこれまで世帯年収に応じた支援がありましたが、令和7年度からは「3人以上の子どもを扶養」していれば「所得制限なく」支援を受けられることに決まりました。「3人以上の子どもを扶養」という条件であるため、たとえば3人きょうだいで長子が扶養から外れると、あとの2人は支援を受けられなくなります。
参考:文部科学省|高等教育の修学支援新制度
つまり、すでに第一子や第二子が社会人となって扶養を外れている投稿者さん宅は対象外。かたや来年度、大学進学する第一子をもつママ友宅は3人の子を扶養しているため、少なくとも第一子が社会人になるまで支援を受けられるということです。
新制度や制度改正が生み出す不公平感……
この支援拡大の網に引っかからず、投稿者さんのようにやるせなさを感じるママは少なくないようです。
『こういう制度って、ちょっとしたタイミングでラッキーな人と損する人が出てくるよね。似た境遇で格差を感じると不公平感がえぐいよね』
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『奨学金を借りずに大学まで行けるように子どもは2人にしたのに。真面目は馬鹿を見る世の中なのかな』児童手当や幼児教育・保育の無償化などさまざまな少子化対策がありますが、そのたびに人知れず悔しさを噛みしめる家庭があるのかもしれません。仕方がないと言われればそれまでですが、なかなかモヤモヤが晴れませんね。
きょうだいの「歳の差」がネック。歳の差で比べてみる支援総額
さてこの制度、支援を受けられる家庭において、第一子と第二子の歳の差が離れていない方が、支援の総額は大きくなるわけです。きょうだい間の歳の差や、高校卒業後の進路はさまざまなケースがあるものですが、3人きょうだいがみな4年制大学に進学すると仮定して、支援の総額を考えてみると以下のようになります。
○「年子」の場合 ・・・・ 授業料 計9年分 + 入学金 3人分
○「2学年差」の場合 ・・・ 授業料 計6年分 + 入学金 2人分
○「3学年差」の場合 ・・・ 授業料 計5年分 + 入学金 2人分
○「4学年差」の場合 ・・・ 授業料 計4年分 + 入学金 1人分
参考:文部科学省|令和7年度からの奨学金制度の改正(多子世帯の大学等の授業料等無償化)に係るFAQ|P.10-11
この事実に考えが行き着いたママはどうにも納得が行かず……。
『同じ子ども3人を生み育てているのにも関わらず、すごく不平等じゃない?』
この条件なら納得感も違うのに。ママたちから飛び出す代替案
大学無償化の支援額は決して少なくない額ですから、子どもが3人いても扶養を外れた子がいたり、そもそも子どもが2人以下だったりする家庭が抱く不公平感は相当なものだと予想されます。すでに施行されることが決定している制度改正ですが……納得の行かなさゆえ、ママたちから代替案が飛び交います。
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全員支援アリ or 全員支援ナシ。この2択でお願い!
『深夜までバイト必須のわが子と、大学無償化の友達が混在するのがやるせない。子どもも「この差は何?」って思うよね……無償化はやるなら全員。無理ならナシでお願いしたい』子どもの気持ちに焦点を当てるママが現れました。親のみでなく、子どもたちの心の持ちようにまで波及する可能性は十分考えられますね。そんな制度ならば、いっそ全員支援アリかナシかで! という心の叫びに同感というママも多いことでしょう。
1人目を産みやすい策の方が公平で、少子化にも効果的?
『一律に授業料を減額するのはダメかね? これだって子どもを持つハードルは低くなりそうだけど』
『1つの家庭で1人だけ無償の方が公平じゃない? 子を持たないというカップルが、持ちたいと考え直せる方がいいと思う』多子世帯への支援を充実させる今回の改正ですが、少子化対策であれば、より多くのカップルが子どもを持ちやすくする仕組み作りだって有効なはず。一律に授業を減額する案や、1世帯で1人分を支援する案が寄せられました。こちらの方が不公平感が生まれにくいという大きなメリットもありそうです。
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対象は「これから生まれる子」で
『3人以上産んでもらって少子化を食い止めたいということなら、これから生まれる子を対象にしたらいいのに』すでに生を受けている子は、ある程度家庭の経済面を鑑みた家族計画に基づいたものだろうということを前提にすると、「これから」のパパママ世代に焦点をしぼった制度改正の方が賢明との意見、一理ありますね。
求む、学力制限
『日本のために優秀な子には進学してほしい。でも3人子持ちのママが「下の子が恩恵を受けるために、勉強のできない上の子をFラン大学に行かせる」と言っていて不快だった。偏差値の条件を設けてほしい』国のお金の使い方が有意義でないと人々は怒りや無力感を覚えるもの。今回の制度改正に、非建設的な印象を抱いたママは少なくありませんでした。
はたしてこの制度、長続きするのか!?
『こんな制度、長く続くかな? これから生まれる子が大学進学するまで残ってるか怪しいよね……』それなりのママたちの目に「バラマキ」のように映った大学無償化制度の改正。巨額の費用がかかるはずですが、財源はどうするのか? 向こう見ずで闇雲なイメージが満載ゆえに、今回のトピックでは不安や批判がこもったコメントが散見されました。この制度、人々の心に不公平感を呼び起こしながらも、政府の思惑どおり少子化対策として功を奏すのか、はたまた残念な結果に終わり、非難の声が飛び交うのか……。なりゆきを注視していきたいところですね。
文・みちはら宵子 編集・きなこ イラスト・Ponko