近年、20代後半から30代の若い世代が陥る「クォーターライフクライシス」という現象が注目されています。
【表】クォーターライフクライシスとはどんな状況? 5つのフェーズを解説
この時期は社会人としてのキャリアが始まり、将来への期待が高まる一方で、自己実現や人間関係に悩むことが多く、人生の転換期とも言える時期です。
多くの20代や30代の社会人が、将来に対する漠然とした不安を抱えながら、どう対処すべきか悩んでいるかもしれません。本記事では、クォーターライフクライシスが起こる原因とその対処法について、詳しく解説していきます。
クォーターライフクライシスとは
クォーターライフクライシスは、20代後半から30代半ばの人々が抱える漠然とした不安や焦りのことです。この年齢層は人生の約4分の1が過ぎる時期のため「クォーターライフ」という言葉が用いられています。
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20代後半から30代半ばは、社会に出て数年経ち、理想と現実のギャップに直面しやすい時期です。また、友人や同僚が結婚や出産、キャリアアップをしているのを見ると、自分と比べて焦りや劣等感を感じることもあります。
これからの人生をより良くするためには、クォーターライフクライシスをうまく乗り越えることが重要です。
<ミッドライフクライシスとの違い>
人生に対する悩みや焦りを感じる現象には、ミッドライフクライシスもあります。
クォーターライフクライシスとミッドライフクライシスは、どちらも人生への疑問や不安、焦りを感じる点では共通していますが、起こる年代と原因が異なります。
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ミッドライフクライシスは40代から50代に多く見られ、これまでの人生を振り返って感じる漠然とした不安や焦りがおもな原因です。
一方で、クォーターライフクライシスの原因は「クォーターライフクライシスに陥る原因」で詳しく解説します。
クォーターライフクライシスが注目されている背景
近年、クォーターライフクライシスに悩む人が増えており、注目を集めています。
その背景の一つに、インターネットの普及があります。特に若者はX(旧Twitter)やInstagramなどのSNSを多く利用しており、同年代の成功や日常が簡単に目に入るようになりました。これにより、自分と他者を比べて、焦りや不安を感じやすくなっているのです。
さらに、この世代は、デジタル技術の急激な進歩や新型コロナウイルス感染症の流行など、不確実性の高い時代に生きていることも、クォーターライフクライシスの一因と考えられています。
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クォーターライフクライシスに陥る原因
すべての若年層がクォーターライフクライシスに陥るわけではありません。この世代特有のさまざまな要素が複雑に絡み合うと、誰でもクォーターライフクライシスに陥る可能性があります。
<理想と現実のギャップ>
クォーターライフクライシスに陥りやすいのは、20代後半から30代半ばの世代です。この時期は、社会人としての経験を積むなかで、学生時代に思い描いていた理想と現実の違いに悩むことがあります。たとえば「仕事にやりがいを感じられない」「収入が思ったほど増えず、経済的な不安がある」といった悩みです。
特に完璧主義の人は、自分に対して理想を持ち過ぎた結果、現状に満足できず、常に何かが足りないと感じやすいです。理想と現実にギャップがあると「このままでは良くないのではないか」と不安や焦りが強くなります。
<SNSの影響>
20代後半から30代半ばの人は「デジタルネイティブ世代」と呼ばれ、インターネットやデジタル機器が当たり前の環境で育った世代です。
この世代はSNSの利用率が高く、同世代の様子をリアルタイムで把握しやすい環境にあります。SNSには、結婚、出産、仕事での成功や充実したプライベートの投稿が多く、それを見てつい自分と比べてしまうこともあるでしょう。
また、SNSを通じて多くの人とつながっているように見えても、実際には深い人間関係を築けず、孤独を感じる人もいます。他者の幸せそうな姿を見て、自分と比べることで、クォーターライフクライシスに陥りやすくなります。
<平均寿命の延伸>
クォーターライフクライシスに陥る原因の一つは、平均寿命の延伸です。日本の平均寿命は年々伸びており、世界でもトップクラスです。
これまでの一般的な人生設計は、就職、結婚、出産、老後という流れでしたが、平均寿命が延びたことで、従来の計画では対応しきれなくなっています。長い人生を見据えた新たな設計が必要になっているからです。
特に日本は少子高齢化の影響により、現役世代が老後を迎える頃に十分な年金を受給できるとは限らなくなりました。今後の長い人生を考えたときに、若い世代でも老後に対して不安を感じやすくなっています。
クォーターライフクライシスの5つのフェーズ
クォーターライフクライシス研究の第一人者は、オリバー・ロビンソン氏です。オリバー・ロビンソン氏は、論文でクォーターライフクライシスを5つのフェーズに分類しています。
フェーズ1は仕事や人間関係において、過去の選択を後悔し始める段階です。自分の選択に悩み、閉じ込められているように感じることがあります。
フェーズ2は、現状打破を検討する段階です。フェーズ1の状況を課題として捉え、現状を抜け出すために具体的な行動を検討し始めます。
フェーズ3は現状を打破し、不安や焦燥を感じながらも、自分自身と向き合う時間を持つ段階です。過去の自分と決別し、新たなスタートを切り始めます。
フェーズ4は、人生を再構築する段階です。見つめなおした理想の自分に向かい、ゆっくりと進み始めます。小さい成功体験を積み重ね、徐々に自信を取り戻していきます。
フェーズ5はクォーターライフクライシスを乗り越え、新たな人生に向けて歩み始める段階です。自分らしい生き方を見つけ、充実感を得られるようになります。
クォーターライフクライシスに陥りやすい人の特徴
クォーターライフクライシスには陥りやすい共通の特徴があります。
<理想が高い人>
自分に高い基準を課し、常に最高の結果を求める人は、クォーターライフクライシスに陥りやすい傾向にあります。
完璧な自分を求める場合、些細なミスでも自己評価が下がりやすくなります。自分が課した基準をクリアできなければ、理想と現実とのギャップに苦しみ、自己肯定感も低くなりがちです。
理想が高いことは、必ずしも悪いことではありません。高い理想を持つことは、モチベーションの源にもなります。
しかし、ときには理想と現実のギャップを受け入れ、現状を客観的に見ることも大切です。
<他者と比較しやすい人>
クォーターライフクライシスに陥りやすい人の特徴の一つは、他者と比較しやすい人です。
他者と比較する癖がある場合、周囲の人の成功に劣等感を抱きやすくなります。その結果、自分の価値や能力を過小評価してしまい、自信を失ってモチベーションの低下につながることがあります。
特に近年はインターネットの普及により、SNSを通じて手軽に周囲の様子が把握しやすい状況です。SNSを通じて他者の成功や生活と自分を頻繁に比較する人は、自己肯定感が低下しやすく、不安や焦りを感じやすい傾向にあります。
<ネガティブ思考の人>
ネガティブ思考の人はものごとを悲観的に捉えてしまう傾向にあり、クォーターライフクライシスに陥りやすくなります。
自身の過去に失敗や否定的な経験があると、それを引きずりやすく、ネガティブな思考パターンを固定化しがちです。理想を描いても、将来に対して悲観的に捉える傾向があります。
前に進むには、新たな環境に飛び込むのも一つですが、ネガティブ思考の人は変化を恐れ、新たな環境や人間関係を避け、現状維持を望むケースが多くなります。
<気持ちの切り替えが苦手な人>
気持ちの切り替えが苦手な人も、クォーターライフクライシスに陥りやすい人の特徴としてあげられます。
ミスをした際には、気持ちを切り替え、次に活かす経験として前向きに捉えることが大切です。しかし、気持ちの切り替えが苦手な人は、不安や焦りにとらわれやすく、クォーターライフクライシスに陥る可能性があります。切り替えが難しい原因には、過去の失敗やトラウマなどが影響していることが考えられます。
また、クォーターライフクライシスは、変化が多い時期に陥りやすいのも特徴です。気持ちの切り替えが苦手な人は、状況の変化に適応するために、柔軟性を高める工夫が必要になるでしょう。
クォーターライフクライシスへの対処法
20代後半から30代半ばになると、誰もがクォーターライフクライシスに陥る可能性があります。人生のなかでも活発な時期を有意義なものにするためにも、今からクォーターライフクライシスへの対処法を把握しておきましょう。
<自分自身と向き合う時間をつくる>
クォーターライフクライシスの対処法の一つは、自分自身と向き合う時間をつくることです。自分自身と向き合う具体的な方法は、次のとおりです。
・自分の価値観ややりたいことを書き出す
・これまでの人生を振り返る
・日々の生活を振り返る など
上記のような方法で自分自身と向き合う時間をつくり、どのようなことに悩んでいるか、どのようなことに価値を感じているかを考え、将来の方向性を再評価してみましょう。
自分自身と向き合う時間をつくることで、自己理解を深められ、将来のビジョンが見えやすくなります。自分の強みや良いところを見つければ、自己肯定感を高めることにつながります。
<他者との比較をやめる>
クォーターライフクライシスに陥らないためには、他者との比較をやめることも必要です。
SNSを通じて他者の状況がわかると、自分と比較しやすくなり、クォーターライフクライシスに陥る可能性があります。すでにクォーターライフクライシスになりかけている場合、SNSで他者の状況を見ることで悪化する可能性があるため、注意しましょう。
SNSの利用を中止できない場合は、閲覧する時間を制限するのも一つの方法です。クォーターライフクライシスに関わらず、他者とは比較せず、自分のペースで人生を歩むことが大切です。
<プロの助けを借りる>
クォーターライフクライシスに陥らないためには、自分自身と向き合う時間をつくる、他者との比較をやめるといった方法があります。しかし、自分だけで、クォーターライフクライシスに対処するのは難しいケースもあるでしょう。
このようなときには、心理カウンセラーやメンターなどプロに相談するのも手段の一つです。プロに相談すると客観的な視点を得られるため、漠然と抱えている不安や悩みを解決できる可能性があります。また、仕事について悩んでいる場合は、転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談してみましょう。
クォーターライフクライシスを乗り越えて自分らしい人生を歩もう
クォーターライフクライシスとは、20代後半から30代半ばの人々が抱える漠然とした不安や焦りのことです。社会に出て数年が経過したこの時期は、将来への不安や現実とのギャップに悩みがちです。
現代ならではの環境により、多くの人がクォーターライフクライシスに陥る可能性があります。人生をより有意義なものにするためには、クォーターライフクライシスへの対処法を把握しておくことも大切です。
クォーターライフクライシスになりかけていると感じたら、自分自身と向き合う時間をつくり、他者との比較をやめましょう。それでも不安や悩みが解消されない場合はキャリアアドバイザーなどへの相談がおすすめです。
(まいどなニュース・20代の働き方研究所/Re就活)