限定公開( 1 )
Webで公開されている漫画「娘の弁当が気に入らない!」が、12月半ばごろにX(Twitter)でトレンド入りするなど大きな反響を呼びました。絵柄自体はほのぼのしたエッセイ漫画風ですが、登場人物が内に秘める悪意に、心がえぐられることうけあいです。
同作は漫画家のぱん田ぱん太(@pandapantade/ブログ「ぱんをたずねて2000里ちょい」)さんが、ライブドアブログの漫画メディアYoMuRyで連載していたフィクション。Amazon.co.jpで無料の電子書籍版も配信されています。
●娘の手作り弁当がきっかけで仕事一筋・家事嫌いの主婦が壊れていく
主人公は勤務先で管理職を務める、2児の母の桃子。仕事の面では優秀である一方、家事には一切興味がなく、一家の食事はいつもスーパーのおそうざいです。
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「母親が料理の1つも作らないなんて」と、実家の両親からは不興を買っていますが、夫や子どもたちは桃子の味方。必要な家事は各自が自分でやりますし、両親に家事嫌いをとがめられても守ってくれます。
家族みんなが自分の価値観を尊重してくれる、最高の家庭だと喜ぶ桃子。だからその幸せが、娘の胡桃(くるみ)が「弁当を自分で作って学校に持っていきたい」と言い出したせいで揺らぎ始めるとは夢にも思いませんでした。
ほとんど料理をしてこなかった娘の挑戦を桃子は応援していましたが、弁当の出来栄えが意外にも良かったのが、かえってあだとなります。胡桃が家族の分まで作ってくれた弁当を会社で食べていたところ、かわいがっている部下の高野に、桃子が自分で作ったものと勘違いされたのです。
若い男性に弁当をほめられる、初めての体験に浮き足立つ桃子。毎日高野に評価されているうちに、誤解を訂正できなくなります。このゆがみはやがて親子間に摩擦を生み、ひいては家庭崩壊の危機まで招くのですが――。
●Xでは「つらすぎて最後まで読めない」と悲鳴
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同作は2023年に完結していますが、近ごろXで「衝撃のオチ」と紹介され話題に。ドス黒い感情が渦巻く物語は、「地獄のような漫画」「つらすぎて最後まで読めない」「エッセイ漫画かと思ったらサイコホラーだった」「ちゃんとフィクションでよかった」「言うほど衝撃的でもないだろうと思って読んだら本当にオチが衝撃」と多くの悲鳴を呼びました。
編集部は作者のぱん田ぱん太さんを取材し、執筆の経緯など詳細を聞きました。
●大好きな「食べ物の話」に「親子の確執」を
―― 「娘の弁当が気に入らない!」はどのようなきっかけや着想から生まれたお話なのでしょうか
ぱん田ぱん太 きっかけは完全創作漫画の依頼です。ゼロから作品を生み出すにあたり、最初に浮かんだのは「食べ物が関係するお話を描きたいな」でした。私は小さい頃からおいしそうな食べ物が出てくる絵本が大好きで、現在は食べ物のイラストを描くのが好きだから、というシンプルな理由です。
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そのうえで、親子の確執というものを組み合わせて描いてみようと思いました。そしてそれは作品を読んでくださった皆さんはご存じの通り「1人の親と1人の子」の話には留まらないし、「ただの1世代だけの確執」では終わらないということです。
―― SNSでは「途中までエッセイ漫画だと思っていた」とのコメントもありました。エッセイ漫画風の形式にはどのような狙いがありますか
ぱん田ぱん太 エッセイ漫画形式のほうが、心に入ってきやすいと個人的には思っています。感情移入、自己投影、共感などをしやすいというか。特に私の漫画を読んでくださる読者さんは20代以上の女性が中心ですし、子どもがいる主婦の視点で進む物語はより楽しんでもらえるかなと思います。
―― 執筆にあたってこだわった部分を教えてください
ぱん田ぱん太 とにかく主人公の桃子さんの心理描写をしっかりするということです。彼女は「母親としての感情」「女としての感情」「妻としての感情」「娘としての感情」「上司としての感情」などいろんな立場の自分に振り回されています。その不安定な心が伝わってほしいと思いながら描きました。
―― Xではトレンド入りするほど話題となりました。この大きな反響についてご感想をお願いします
ぱん田ぱん太 漫画そのものへの感想もすごく楽しかったんですが、トレンドをきっかけに見たかたから「この絵柄、見たことある!」「この作者さんの漫画が以前バズってた(編注:「インスタにネイル写真をアップしたら最強にめんどくさいことになった」)のを読んだことがある!」というお言葉が届いたのがとてもうれしかったです。
漫画を描いている身として「絵柄がアイデンティティとして成り立っている」のはとても特別でうれしいことですし、たまたまバズっていたときに楽しんだ漫画を忘れてしまうのではなく、頭の片隅に残していてくださっているかたがたがいるのが本当にうれしいです。
協力・画像提供:ぱん田ぱん太(@pandapantade/ブログ「ぱんをたずねて2000里ちょい」)さん
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