限定公開( 7 )
魔法瓶メーカーのサーモスが手掛けるあったかグッズシリーズ「&ONDO(アンドオンド)」がじわじわ売れている。&ONDOでは起毛タイプのルームソックスや、手首を温めるビーズウォーマーなどを展開。一部商品はすでに完売するほどの人気ぶりだという。なぜ、サーモスは畑違いのあったかグッズ市場に参入したのか。開発担当者の森弘美氏(マーケティング部 商品戦略室 企画2課 企画第2グループ)に話を聞いた。
&ONDOのコンセプトは「温度によるセルフケア」で、今年9月に発売した。アイテムは全12種類で、ふくらはぎまで温める靴下や手首を温めるビーズウォーマー、腹巻き、ブランケットなどを用意。サーモス直営店と、Amazonや楽天市場などECサイトなどで販売している。サーモスはこれまで保冷バッグなど布製のアイテムは販売していたが、&ONDOのようなアパレル小物を展開するのは今回が初だという。
サーモスは2018年まで、真空断熱技術を活用したボトルやタンブラー、スープジャーなどを中心に商品展開していた。2019年からは新しいジャンルとしてフライパン市場に参入。「飲食シーンに関わる魔法瓶メーカーから、消費者の生活全般に関わる総合家庭用メーカーへと転身を図る中で、可能性がありそうだと着目したのがライフスタイルのジャンルでした」(森氏)
ライフスタイルに関わるアイテムは幅広い。どういったアイテムを展開するべきか検討する中で、ヒントになったのがサーモスのブランドイメージだった。
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サーモスのブランドイメージをヒアリングしたところ、「保温」「温かい」という回答が多かったそうだ。こうしたイメージは、これまで展開してきたボトルやタンブラー、スープジャーなどから連想されたものだった。森氏は「ライフスタイルの分野では、サーモスは後発かつ新参者です。ならばサーモスがこれまで培ったリソースであるブランドイメージをフル活用できる、あったかグッズでの参入を決めました」と振り返る。
●水筒のパッキンをイメージ
あったかグッズとして、どのような商品を売り出すべきか。自身も冷え性であるという森氏は、手や足などを温める大切さを身をもって感じていたという。「サーモスの定番商品である水筒には、中身が漏れるのを防ぐためにパッキンがついています。このパッキンのように自分の体温を閉じ込めることで温かくなれるアイテムがいいと考え、王道である靴下や腹巻きなどをラインアップすることにしました」(森氏)
製造については、協力企業を探すことにかなり苦労したと森氏。あったかグッズに関わる知見や販売実績がないため、商談を重ねた末に断られることも何度かあったそうだ。
12種類のあったかグッズの中で特にこだわった商品が、「起毛であったかルームソックス」(希望小売価格1760〜1980円)だ。サーモスの魔法瓶の保温効果から着想し、約2年をかけて開発した。内側に使用している「極起毛」は、毛足の長さに特にこだわって独自に開発。毛足の長い極起毛が空気層を作ることで、足先の体温を閉じ込め温かさを保つという。
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「手首あったかビーズウォーマー」(同3850円)、「あったかビーズクッション」(同4950円)には、体温を逃がしにくくするため、チタンでコーティングしたビーズを使用している。また、ビーズ内部の空洞と、ビーズ同士の空間が温かい空気層を作り、魔法瓶のような保温効果が期待できるという。
●男性客からも支持、なぜ?
今年は11月に真夏日を記録するなど暑さが長引き、あったかグッズには不利な状況が続いた。「夏も秋も長くてやきもきしていました」と森氏は苦笑するものの、朝晩が冷え込み始めた10月頃から売れ始め、一部商品は完売となった。この好調の1つに男性からの支持があるという。
当初、&ONDOの想定ターゲットは30代以降の女性に設定。実際の購買層も30代を中心に、40代以降など幅広い年代の女性が中心だ。その一方で、森氏の予想以上に男性も購入しており、特に靴下系のアイテムが人気だという。
男性からも支持された要因について、森氏は男性の中に、サーモスの水筒やタンブラーを使っている人が多いからではと分析する。「あったかグッズは女性寄りなイメージを持たれやすいです。ですがサーモスは商品特性上、ジェンダーレスなブランドイメージがあります。加えて日常生活で商品を使っていただいていることで、あったかグッズへの抵抗も少なかったのではないでしょうか」(森氏)
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今後の商品展開については、12商品のサイズやカラーバリエーションの追加を検討しているという。その他、子ども向けやゆったりしたサイズが好きな人向けなど、より幅広い層に向けた商品も企画しているという。
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