年末年始といえば、多くの人が家族や親戚と過ごす時間を楽しみにしているのではないだろうか。しかし、この時期は高速道路が渋滞し、新幹線も大混雑するのが悩みだ。今回は、そんな帰省の道中で予期しない事態に直面した2人のエピソードを紹介する。
◆事故渋滞で疲れ切っていた矢先…
毎年、都内から関西へ車で帰省するという田中康太さん(仮名・50代)。
「渋滞が嫌で、少しでも快適に帰りたかったので、事前にもっとも空いている時間帯を選んで帰省することにしています。その年も、深夜1時頃に出発しました」
順調に進んでいたものの、静岡県に差しかかった頃、突然、事故渋滞に巻き込まれたという。道路情報板には“渋滞15キロ、90分”と表示されていたそうだ。すでに疲れていた田中さんは、サービスエリアに立ち寄って少し休憩を取ることにした。
「私と同じように、渋滞で疲れきった人たちが、言葉少なに不満をこぼしていましたね」
田中さんは車に戻り、再度走り出す準備をしようとしたのだが……。
◆車の目の前にゴミが散乱していた
「私の車の前にゴミが散乱していたんです。袋に入った食べかけのインスタントラーメンや、飲みかけのジュースなどがありました」
田中さんは驚きと怒りで、「どうしてこんなことが起こるのか」と一瞬、思考が停止したという。ゴミを片づけないと車を出せないほどだったそうだ。
「しばらくすると、ゴミを捨てたと思われる人たちが戻ってきました。尋ねてみると、彼らはすぐに非を認めました。私のことが怖かったのかもしれませんね。全員が平謝りでした」
田中さんは格闘技経験者で体格がよいため、彼らにとって威圧感があったのだろうと振り返る。
「彼らと対峙した時、私の眼は鋭かったと思います。おそらく空気を察してすぐに謝ったのでしょう」
しかし、田中さんは今までの怒りが嘘のように、悲しい気持ちが襲ってきたという。
「どうして人って自分の行動を俯瞰できないんでしょうか。自分の言動が他人にどのような影響を与えるのか予測できないんでしょうか……」
田中さんは自分を見つめ直すよい機会だったと言い聞かせ、再び渋滞のなかへと車を走らせたそうだ。
◆新幹線で遭遇したトンデモ家族
「帰省の楽しみが台無しになった日でした」と話す佐藤美香さん(仮名・40代)は、帰省で思わぬトラブルに見舞われた。
「本来なら、家族で新幹線に乗って帰省する予定だったのですが、仕事の都合で主人が帰れず、私は子どもたちと先に出発することになりました」
息子は新幹線に乗ることを楽しみにしており、駅ではお弁当やお菓子を購入。ワクワクしながら幸せな気分に浸っていたという。
「新幹線はお昼頃に出発だったので、乗車時間帯にはすでに多くの乗客が乗っていました。私たちの隣の席は2列空いていたので、“この後集団で乗ってくるかもしれないな”とは思っていたのですが……」
佐藤さんは荷物を整え、お待ちかねのランチタイムにしようとした。ちょうどその時、空いていた席に子ども2人を含む家族が座ったそうだ。はじめは普通の家族と思っていた佐藤さん。しかし、すぐにその家族の行動に驚かされることになった。
◆お酒やおつまみの匂いが車内に充満
「席に座るや否や、ガサゴソとビニール袋からお酒やおつまみをたくさん出していました。親1人につき2缶ほどのお酒を出していたので、『結構お酒を飲みそうだな』とは思いました」
そして、乗車してから10分ほどが経った頃、大声で話し始めたという。
「お酒やおつまみの匂いが車両に充満するし、声はうるさくて、私たち家族が話したくてもお互いの声が聞こえないくらいの状況でした。新幹線に乗ることを楽しみにしていたのに、テンションが一気に急降下しましたね」
その後も、その家族の賑やかさはエスカレート。子どもたちは音を出してゲームをし、大人たちは動画を見ながらやりたい放題だったのだとか。
「私たちだけでなく、他の乗客も振り返って見るくらいでした。幸いなことに、その家族は次の駅で降りたので、静かにはなりましたけど……」
車内に残されたお酒やおつまみの匂いはなかなか消えず、イライラしながらの乗車時間になったようだ。
<取材・文/chimi86>
―[年末年始の憂鬱]―
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。