岐路に立つ野球界【白球つれづれ】

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2024年12月30日 20:02  ベースボールキング

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ベースボールキング

スタンドのファンが盛り上がる横浜スタジアム (C)Kyodo News
◆ 白球つれづれ2024・第49回

 2024年の野球界はいくつもの素晴らしい話題を残して幕を閉じようとしている。

 プロ野球ではセ・リーグ3位から日本シリーズに進出したDeNAベイスターズが、ソフトバンクを撃破して下剋上V。横浜の街は歓喜の優勝パレードに沸いた。

 大学では青山学院の強さが際立ち、夏の高校野球は史上初のタイブレークの末に京都国際高が日本一の栄冠を手にしている。

 コロナ禍が終息に向かいつつある今季のNPBでは、例年以上に多くのファンが球場に足を運んでいる。セリーグが約1461万人、パリーグが約1206万人の観客動員を記録。いずれも前年から大きく数字を伸ばしている。

 だが、一方で多くの野球ファンの関心はドジャースに移籍した大谷翔平選手の活躍とメジャーリーグに奪われたことも確かだ。

 国内に再び目を転じれば“投高打低”が顕著になっている。3割打者はセ・リーグが2人でパ・リーグはソフトバンクの近藤健介選手ただ1人。(規定打数到達者)本塁打王もセの村上宗隆選手(ヤクルト)が33本なら、パの山川穂高選手(ソフトバンク)も34本。今までなら40〜50本塁打がタイトルの有望ラインだった。ましてパリーグではこの数年で千賀滉大、山本由伸といった絶対エースがメジャーに流失しているにもかかわらず、打者陣は低調な成績に終わっている。人気とは裏腹な低調ぶりは気になるところである。


 今オフの話題もFAと人材の海外流失が大きくクローズアップされている。

 FAではソフトバンクの甲斐拓也捕手が巨人に、同じく石川柊汰投手がロッテに移籍。中でも甲斐は5年以上20億円以上の大型契約で移籍。これだけ巨額になると資金力のあるチームでしか手を出せない。巨人は中日の守護神、ライデル・マルティネスも4年40億円超の破格契約で獲得している。

 その一方で今季MVPに輝いた菅野智之投手のオリオールズ入団も決まった。目下、ロッテの佐々木朗希投手がポスティングによるメジャー挑戦で多くの球団と交渉中。さらに年明けにはこれもメジャー入りを表明している小笠原慎之介(中日)、青柳晃洋(阪神)両投手の去就にも注目が集まる。

 フリーエージェント制度(FA)に関しては、ルール上ではシーズンの一軍登録145日以上を8シーズン(大学、社会人は7年)海外FAは9シーズンの決まりはあるが、近年は球団との交渉で、それよりも早く海外挑戦の権利を得るポスティング制度を利用するケースも増えている。選手会側ではFAの短縮も要求するなど球団側は対応に追われている。

 FAの巨額化と海外への人材流失はもはや避けては通れない問題となっている。2025年以降もヤクルトの村上がメジャー挑戦を表明し、巨人の岡本和真、阪神の佐藤輝明、才木浩人選手らが新たに将来のメジャー願望を明らかにしている。極論すれば「メジャーの二軍化」する日本球界全体として、どう対処していくのかが、より一層問われる2025年となりそうだ。

 加えて、NPBの抱える課題には、国際基準との適合問題もある。

 今オフに行われた「プレミア12」大会では、日本投手陣がピッチクロックに戸惑う場面が見られた。メジャーではすでに導入されている投球間の時間制限だ。他にもタイブレークやロボット審判の導入。さらにセリーグのDH(指名打者)導入も検討されている。その多くが国際ゲームでは当たり前のシステムである。地球温暖化に伴う真夏の炎熱対策も喫緊の課題となっている。

 繁栄と隣り合わせにある球界の地殻変動と国際化。それとは別にサッカーだけでなく、ラグビー、バレーボール、バスケットボールなど各種団体のプロ化が進み地域密着と娯楽の多様化も目立つ昨今だ。

 今や国技と言われる野球だが、大きな岐路に立たされているのも間違いない。新たなシーズンに向けて、近未来を見据えて、野球界がどう向き合っていくのか? そんな目で新年を見つめてみたい。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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