「寝つきが悪い」「食欲がない」「肩こりがひどい」そんな症状の原因には「冷え」がひそんでいることがあります。こうした状態は生活の質を下げ、病気につながることも。東洋医学をベースとした、身体の代謝を上げるレシピで冬の毎日を健やかに過ごしましょう。
寒さで体調をくずしがちなこの季節。ストレスや運動不足、睡眠不足なども重なると身体は冷え、代謝が衰えます。
冬の不調をオフ!温活おかず
「東洋医学では、生命力の源であり、身体を健やかに保つ働きのことを“気”と呼びますが、現代に生きる私たちは偏った食生活などで、“気”は傷つき削(そ)がれています。
“気”の重要な働きに、全身に血を巡らせて身体を温める作用がありますが、足りなかったり巡らなかったりすると“身体を温める力の低下”つまり“冷え”が起こります。すると五臓六腑の働きが鈍り、心身のあちこちに不調が起こるのです」と麻木さん。
今回、紹介してくれたのは「温活薬膳」。入手しにくい高価な生薬や、手間のかかる調理法は不要、身近な食材でパパッと作れるものばかり。
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「朝食にはお粥(かゆ)やスープなどをとり、しっかり胃の腑を温めて一日を始めるのはいいですね。また首・手首・足首の3つの首の保温をし、マフラーやスカーフを巻いて、とにかく身体を冷やさないように毎日を過ごしたいものです」
温活薬膳のポイント
1.しょうがやにんにく、スパイスなどの香辛料、香味野菜など身体を温める食材を取り入れる。ただし、唐辛子のような刺激の強いものを大量にとるのはNG。
2.揚げ物など油を多用する調理法よりも、蒸す、煮るなどの優しい調理法を心がける。味つけはシンプルに、塩分は控えめが原則。
3.一物全体といって、可食部はできるだけ丸ごといただく。野菜の皮などはできるだけそのままに。魚などは圧力鍋で骨までやわらかくして丸ごといただくのもよい。缶詰などを利用するのもおすすめ。
4.冷蔵庫で冷やしたものはとらない。常温以上の温度でとる。特に水やお茶など日常的にとる水分は常温で。白湯(さゆ)もOK。
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5.生野菜や果物などは身体を冷やすものが多いので、身体がまだ目覚めておらず温まっていない朝には食べず、午後以降の時間帯にとる。
6.食べる量は腹八分目に。間食や寝る直前の飲食は控えて。ダラダラと飲食し、常に消化に熱を奪われるのはよくないのでメリハリのある食生活を心がけて。
肉の温活おかず
長ねぎの豚肉巻き
ご飯にもビールにも
材料/作りやすい量
・長ねぎ……1本
・豚ばら薄切り肉……150g
・シソ……4枚
・スライスチーズ……2枚
・しょうゆ……大さじ1
・みりん……大さじ1
・酒……大さじ2
・おろししょうが……小さじ1/2
・ごま油……小さじ2
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【作り方】
(1)長ねぎは長いまま両面に蛇腹の切り込みを入れる。
(2)広げた豚肉にシソ、ちぎったチーズ、(1)を置き、ねぎを芯にして豚肉で巻く。
(3)フライパンに入る大きさに切る。
(4)フライパンにごま油を入れて熱し、(3)を入れて転がしながら焼く。焼き目がついたら酒をまぶしてふたをし、長ねぎが柔らかくなるまで蒸し焼きに。
(5)しょうゆ、みりん、おろししょうがを入れて絡める。食べやすい大きさに切る。
薬膳効果
長ねぎ……風邪予防。発汗作用により悪寒を払う。冷えによる腹痛に。食欲不振に。
しょうが……風邪予防。発汗作用により悪寒を払う。冷えによる身体の痛みに。食欲不振に。吐き気がある時に。
シソ……風邪予防。発汗作用により悪寒を払う。胃もたれに。魚介類の中毒予防に。つわりの時にも。
豚肉……気を補う。陰を補う。血を補う。ビタミンB1が多く含まれ疲労回復によい。貧血予防に。潤い不足の便秘に。
大根と豚ばらの八角煮込み
野菜が肉のうまみをしっかりまとう!
材料/作りやすい量
・大根……200g
・豚ばら肉……150g
・しいたけ……3枚
・キクラゲ(あれば)……40g
・八角……1個
・しょうが……1かけ
・しょうゆ……大さじ1
・砂糖……大さじ1と1/2
・酒……大さじ3
・オイスターソース……小さじ2
・ごま油……大さじ1
・水……150mL
【作り方】
(1)大根は皮をむき、厚さ 1cmのいちょう切りにする。豚肉としいたけも大根の大きさに合わせて切る。
(2)フライパンにごま油を入れて熱し、豚肉の表面を焼く。焼き色がついたら取り出し、大根を入れて焼く。軽く焦げ目がついたら酒を回しかけてふたをし、弱火にして5分ほど蒸し焼きにする。
(3) 豚肉を戻し入れ、しいたけ、砂糖、水を入れてふたをし、弱火で5分煮る。
(4)しょうゆ、オイスターソース、しょうがの薄切り・八角を入れ、火をやや強めの中火にし、煮汁が半分くらいになるまで煮絡める。
薬膳効果
豚肉……気を補う。陰を補う。血を補う。ビタミンB1が多く含まれ疲労回復によい。貧血予防に。潤い不足の便秘に。
大根……ジアスターゼが消化促進に効く。胃もたれや腹部膨満感に。痰が絡む時も。
八角……臓腑を温める。気を巡らせる。胃の痛みや張りによい。リラックス効果も。
しいたけ……気を補う。体力不足や精神的な疲れに。食欲不振に。免疫機能強化作用。
トレンド料理もお手軽に
鶏の黒ごま焼き
黒ごまのパリッとした香ばしさに食欲を誘われる!
材料/2人分
・鶏もも肉……300g
・塩……小さじ1/2
・しょうゆ……小さじ1
・酒……小さじ2
・黒ごま……20g
・パセリ……少々
・サラダ油……大さじ2
衣〔小麦粉……大さじ1、水……大さじ1、マヨネーズ……小さじ2〕
【作り方】
(1)鶏肉は2つに切り、塩を振って10分おく。水けを拭き、しょうゆ、酒をもみ込む。
(2)衣の材料をよく混ぜる。
(3)皮目と反対の面に薄く小麦粉(分量外)をはたき、(2)を塗り、黒ごまをまぶしつける。
(4)フライパンにサラダ油を入れて熱し、鶏肉を皮目から入れ、ふたをして弱めの中火で8分ほど焼く。裏返してごまのついた面を2分ほど焼く。
薬膳効果
黒ごま……アンチエイジング効果。足腰の衰えや頻尿、耳鳴り、肌の乾燥、便秘などに。
鶏肉……気を補い、臓腑を温める。疲労時でも消化吸収がよい。虚弱体質にも。
まな板を使わないチーズタッカルビ
食卓に出せる鍋かホットプレートで調理するとそのままいただけます
材料/2人分
・鶏肉(唐揚げ用にカットされているもの)……250g
下味用調味料〔コチュジャン……小さじ2、しょうゆ……大さじ1、砂糖……大さじ1、酒……大さじ1〕
・キャベツ……150g
・赤パプリカ……1個
・黄パプリカ……1個
・しめじ……1/2パック
・ごま油……大さじ1
・おろしにんにく……小さじ1/2
・おろししょうが……小さじ1/2
・ピザ用チーズ … 好きなだけ
【作り方】
(1)ボウルに鶏肉、下味用調味料を入れてよく混ぜ、20分くらいおく。※鶏肉が大きい場合はキッチンバサミでひと口大に切る。
(2)キャベツ、パプリカ、しめじは食べやすい大きさにちぎる。※春キャベツが出回る時季は、やわらかく栄養もある春キャベツを使用して。
(3)フライパンにごま油を入れて熱し、(2)を入れてさっと炒めたら、鶏肉をつけ汁ごとのせて、にんにく、しょうが、酒少々(分量外)を入れ、ふたをして蒸し焼きにする。
(4)鶏肉に火が通ったら、真ん中を空けてピザ用チーズを入れ弱火にし、ふたをして溶かす。
薬膳効果
鶏肉……気を補い、臓腑を温める。疲労時でも消化吸収がよい。虚弱体質にも。
キャベツ……気を補い、巡らせる。こもった熱を取る。胃もたれや腹部膨満感、便秘などによい。
ピーマン……腹部の冷えを取る。食欲不振や消化不良など胃腸の不調によい。
しめじ……気を補う。血を補う。お通じを整える。
チーズ……陰を補う。口の渇きや肌の乾燥によい。潤い不足による便秘を改善する。
魚の温活おかず
新鮮魚介類のフリッター
外はカリッと、中は半生で
材料/作りやすい量
・サーモン、タコ、ホタテ、タイなどの刺身……各適量
・基本の衣(小麦粉:片栗粉:炭酸水=7:3:10(体積比))
・変わり衣に入れる素材(ディル、パセリ、カレー粉、コショウ、細ねぎなど……各少々)
・揚げ油、塩……各適量
【作り方】
(1)材料はそれぞれ食べやすい大きさに切る。塩少々を振って5分おき、表面の水けを拭く。
(2)小麦粉、片栗粉、炭酸水、塩ひとつまみを混ぜ、衣を作る。
(3)材料に薄く小麦粉(分量外)をはたき、衣をつけ、180℃に熱した油でカリッと揚げる。※衣にカレー粉、ディルなどのハーブなどを混ぜて変わり衣にしてもよい。
(4)器に盛り、レモンや粗塩(分量外)を添える。
薬膳効果
サーモン……胃の腑を温める。冷えによる胃痛に。疲労回復、むくみ解消にも。身の色のもとであるアスタキサンチンには抗酸化力が。
タコ……血と気を補う。肌荒れに。豊富に含まれるタウリンに抗動脈硬化作用や肝臓の機能強化作用が。
ホタテ……陰を補い身体に潤いを与える。豊富に含まれるタウリンには抗動脈硬化、肝臓機能強化が。倦怠感や不安感がある時にも。
タイ……気を補う。むくみ改善。母乳不足にも。
パセリ……血を補う。デトックス作用。胃もたれに。口臭の防止。
ブリのソテーバルサミコ酢とバターの極上ソース
バルサミコ酢とバターでブリがおしゃれに
材料/作りやすい量
・ブリ切り身……2枚
・塩……小さじ1/4
・小麦粉……大さじ1
・にんにく……1片
・長ねぎ……10g
・オリーブオイル……大さじ2
・バルサミコ酢……大さじ1
・白ワイン……大さじ2
・しょうゆ……大さじ1
・砂糖……ひとつまみ
・バター……10g
・コショウ……少々
・つけ合わせ野菜……適宜
【作り方】
(1)ブリは両面に軽く塩を振って少しおき、出てきた水けを拭き取り、小麦粉を軽くまぶす。にんにくは薄切り、長ねぎはみじん切りにする。
(2)冷たいフライパンにオリーブオイル、にんにくを入れて弱火にかけ、にんにくが少し色づいたら取り出す。
(3) (2)のフライパンでブリに皮のほうから焼き目をつけ、ふたをして4分ほど火を通す。裏返し、再びふたをして2分ほど焼き、取り出す。
(4) (3)のフライパンの余分な油を拭き取り、バルサミコ酢、白ワインを入れて半量くらいまで煮詰め、とろりとしたら、しょうゆ、砂糖、バター、コショウ、長ねぎを入れ、ひと混ぜしてからブリを戻し入れ、ソースを絡める。
(5)ブリをつけ合わせ野菜とともに盛りつけ、(2)のにんにくを散らす。
薬膳効果
ブリ……気と血、潤いを補う。体力や気力が低下している時に。貧血の改善に。目の疲れにも。
にんにく……気の巡り、水の巡りをよくする。消化吸収を促進する。胃の腑を温める。独特の匂いのもとであるアリシンには疲労回復の効果がある。
麻木久仁子さん●1962年生まれ。知性派タレントとしてクイズバラエティー番組などで活躍。2010年に脳梗塞、2012年に初期の乳がんが見つかったことから、検診の大切さや自身の体験を、講演会や情報番組などで伝えている。そんな経験から食事を見直し、中でも「薬膳」に興味を持つ。その後、国際薬膳師、国際中医師、温活指導士の資格を取得。著書に『パパッと元気 おいしい! かんたん!! 温活薬膳レシピ』(毎日新聞出版)など。
料理写真/伊藤高明