2024年のスマホを総括 生成AIの浸透/カメラは完成形の域に/メーカーの勢力図に変化も

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2024年12月31日 10:10  ITmedia Mobile

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2024年も、各メーカーから多種多様なスマホが発売された。そのトレンドをまとめていく

 「Galaxy AI」「Apple Intelligence」「Gemini」……2024年は、スマホが生成AIを取り込み、その基本性能を大きく伸ばした1年だったと総括できる。一方で、スマホに搭載される機能の中で最も重要視されているカメラも、本家といえるデジタルカメラに迫る性能を持った端末が多数投入された。カメラの処理にもAIがフル活用されてきたが、その集大成的な1台が目を引いた1年だった。


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 メーカー別という切り口で見ると、“新顔”が大きく伸びた傾向も見て取れる。Xiaomiとモトローラは、その代表格といえる。規模感ではこれら2メーカーには及ばないものの、新規参入のメーカーとしてNothing Phoneのミッドレンジモデルである「Nothing Phone(2a)」も大きな話題を集めた。スマホ市場に再参入したZTEも、格安のフォルダブルスマホで注目された。1年を振り返る連載の後編ではそんな各社のスマホに焦点を当て、進化の方向性をまとめていく。


●オンデバイス+クラウドで動作する生成AIがスマホの標準機能に、残る日本語対応の課題


 この1年のスマホは、まさに“AI一色”だったといっても過言ではない。スマホにAIを搭載するトレンドは2024年に突如始まったものではないものの、この1年は特にその動きが目立った。2023年までのトレンドと区別するなら、機能の1つとしてAIを使うのではなく、あたかもOSかのようにベースとしてのAIが浸透した1年だったといえる。1月に発表されたGalaxy S24シリーズで対応が始まったGalaxy AIは、その先駆けともいえるサービスだった。


 Galaxy AIは、CMなどでもフィーチャーされた電話の同時通訳に加え、ボイスレコーダーの文字起こしやブラウザの要約、PDFの翻訳など、適用される機能が多岐にわたる。いずれもスマホの基本と呼べるアプリや機能だが、AIによってそれが大きく底上げされた格好だ。オンデバイスAIとクラウドAIを組み合わせているため、文字起こしや電話の通訳のような機能は、データ通信をオフにしているときでも利用できる。


 先行してGalaxy S24シリーズに搭載されたGalaxy AIだが、その後、サムスン電子は過去のモデルにもアップデートでこれを適用。7月に登場したフォルダブルスマホの「Galaxy Z Flip6」「Galaxy Z Fold6」も、Galaxy AI対応の「折りたたみAIスマホ」として発売された。Galaxy S24シリーズは発売当初から日本語が利用でき、定期的にその精度を上げているのも特徴といえる。


 Appleもここに対抗し、6月に開催されたWWDCで生成AIを全面的に取り入れた「Apple Intelligence」を発表。9月に発売された「iPhone 16」シリーズを、Apple Intelligenceのために設計された初のiPhoneとして売り出した。入力した文章のトーンを変更したり、イラストを書き起こせたりと、さまざまな機能をiPhoneに追加した格好だ。Apple Intelligenceは、10月に配信が始まった「iOS 18.1」でサービスを開始。12月に登場した「iOS 18.2」では、イラスト生成の「Image Playground」が加わった。


 Googleは、「Pixel 8 Pro」が搭載したGemini Nanoを、6月に「Pixel 8」や「Pixel 8a」に拡大。8月、9月に発売した「Pixel 9」シリーズは、全機種がGemini Nanoを内蔵していた。これによって、キーワードから画像を生成する「Pixel Studio」や、取得していたスクリーンショットを分析し、その内容を表示する「Pixel Screenshot」などが利用できるようになった。通話の内容を自動的に要約してくれる「Call Notes」も、オンデバイスAIのGemini Nanoで実現した機能だ。


 一方で、いずれの機能も現状では日本語に非対応。Pixel 9シリーズを紹介するGoogleのサイトやCMでも、これらには一切言及されていない。Apple Intelligenceも当初は英語のみの対応で、設定を英語に切り替えるなどしないと、日本で利用することはできない。Appleは、2025年4月のアップデートでApple Intelligenceを多言語化することを表明しており、おそらくこのタイミングで日本語への対応も実現するはずだが、半年以上のタイムラグがあるのは少々残念だ。


 英語での開発が先行しているAIを売りにしながら、端末をグローバル展開することの難しさが浮き彫りになった。先に挙げたGalaxy AIや、Xiaomiが「Xiaomi 14T/14T Pro」で搭載したAIは当初から日本語が利用できたものの、現状では日本語の文字起こしなどの精度は英語のそれに及んでいない。こうした各社のAIを見ると、ローカライズの難度が一段と上がっていることがうかがえる。


 おサイフケータイ対応や防水・防塵(じん)仕様など、ハードウェアにまつわる日本市場対応をすればよかった時代に比べ、よりソフトウェアのローカライズが求められるようになってきたというわけだ。英語以外でいかにAIを実装していくかは、2025年に持ち越された各メーカーの課題といえる。


●カメラスマホは完成形に? 目立ったカメラメーカーとの協業


 文章や画像の解釈、生成などが可能になったAIだが、どちらかといえば、これまでのスマホではカメラの画質向上に使われるのが一般的だった。コンピュテーショナルフォトグラフィーと呼ばれるのがそれだ。イメージセンサーから入力された映像を分析し、それぞれに最適化を施すことで、一般的なデジタルカメラよりも鮮やかでダイナミックレンジの広い写真を実現している。こうした機能は今やミッドレンジモデルでも一般的になりつつある。


 とはいえ、その操作性に関しては撮影専用機ともいえるデジタルカメラには及んでいなかった。高倍率のズームや、超広角など、メイン以外のカメラ性能にも課題があったといえそうだ。こうした中、Xiaomiは2月にスペイン・バルセロナで開催されたMWC Barcelonaに合わせ、「Xiaomi 14 Ultra」のグローバル版を発表。同モデルは日本市場におけるXiaomi初のナンバリングモデルとして、5月に発売された。


 Xiaomi 14 Ultraは、メインカメラのセンサーが1型と大きいだけでなく、F1.63からF4.0まで無段階に絞りを変更することができるのが大きな特徴。ソニーの「Xperia PRO-I」やサムスン電子の「Galaxy S9」など、絞りが可能なスマホは過去にもあったが、いずれも2つの値からどちらか一方を選択できるだけで、中間はなかった。また、ソニー、サムスンともに後継機で絞りの搭載をやめ、現行モデルでは非対応になっている。


 Xiaomi 14 Ultraは、1型の広角カメラに加え、12mm超広角カメラと75mm望遠カメラ、120mmペリスコープカメラの4つを搭載している。これらをデジタルカメラのレンズを模した円形のリングの中に収めたデザインも、同モデルを際立たせているポイントといっていい。また、Xiaomi 14 Ultraには本体と合体させ、シャッターの押下やズーミング操作が可能な「Photography Kit」が用意されており、装着するとよりデジタルカメラ風の見た目に近づいた。日本では、これが付属していたのも、注目を集めたポイントといえる。


 デジタルカメラ超えを目指してAIを取り込み進化してきたスマホだが、操作性に関しては一歩及ばないところもあった。それを周辺機器で補うのがXiaomiの方針だ。周辺機器ではなく、本体に大型のシャッターキーを搭載した端末も登場した。シャープの「AQUOS R9 pro」だ。同機も、Xiaomi 14 Ultraと同様、メインカメラに1型のセンサーを搭載。これまでのAQUOS R proシリーズよりも、さらにカメラ風の見た目になり、Xiaomi 14 Ultraに真っ向から対抗するモデルとして話題を集めた。


 2社とも、カメラにはライカブランドを冠しており、画作りやレンズシステムなどの開発で密接に連携している。日本市場では、もともとシャープがライカのブランドを独占的に使用していたが、Xiaomi 14 UltraでXiaomiにも拡大。11月に発売された廉価ハイエンドのXiaomi 14T Proや、そのベースモデルにあたるXiaomi 14Tでもライカブランドは全面的に打ち出されていた。


 12月には、その対抗馬になりうるOPPOの「OPPO Find X8」も発売された。同機は約3年ぶりとなるOPPOのハイエンドスマホで、カメラはハッセルブラッドと共同で開発。画作りなどにそのノウハウが生かされている他、ハッセルブラッド特有の1:2.7という画角で撮影が可能な「XPan」モードを搭載する。こうした老舗カメラメーカーとの協業により、スマホメーカーに足りなかった画作りに対するノウハウが底上げされた。


 一方で、スマホのカメラで追求できる画質は限界に近づきつつあることも事実だ。特に1インチセンサーを搭載するようになって以降、差別化のポイントがより細かくなっている。このような中、Xiaomi 14 UltraのPhotography KitやAQUOS R9 proのシャッターキーに象徴されるように、撮影時の操作性を改善し始めたのは面白い動きといえる。スマホカメラの画質はもちろん、その使い勝手もデジタルカメラに近づいた1年だったと総括できる。


●躍進したXiaomiとモトローラ、NothingやZTEも市場を開拓


 メーカー別に見ると、2024年は、そのXiaomiが大きく存在感を伸ばした1年だった。調査会社MM総研が11月に公開した2024年度上期の出荷台数調査では、XiaomiがApple、シャープ、Google、サムスン電子に次ぐ5位につけており、ついに日本でも上位メーカーに名を連ねた。期間の区切り方によっては、より上位になることもあるようだ。調査会社Canalysが8月に公開した第2四半期の出荷台数調査では、AppleやGoogleに次いで3位の座を獲得した。


 ミッドレンジモデルのコストパフォーマンスの高さが評価され、キャリアへの採用も進んだことがこうした結果の背景にある。出荷台数への直接的な貢献は限定的だが、先に挙げたXiaomi 14 Ultraのようなフラグシップモデルをしっかり投入できたこともブランド力の向上に一役買っている。直近では、ハイエンドモデルとそん色ない性能を持つXiaomi 14Tが、auとUQ mobileから5万7300円(税込み、以下同)で発売され、その価格の安さが衝撃を与えた。


 日本市場で急速に存在感が高まったもう1つの海外メーカーが、モトローラだ。同社は、折りたたみスマホの「motorola razr 50」とそのソフトバンク版にあたる「motorola razr 50s」を9月に発売。アンバサダーにタレントの目黒蓮さんを起用し、知名度を一気に高めた。さらに同社の端末は、約18年ぶりにドコモにも採用され、「motorola razr 50d」として12月に発売された。縦折りスマホのバリエーションを武器に、キャリアでの採用が拡大している。


 また、ミッドレンジ以上ハイエンドモデル未満ともいえるミッドハイの領域でも、「motorola edge 50 pro」を発売。こちらも、edgeシリーズで初めてソフトバンクに採用され、「motorola edge 50s pro」として発売された。もともと販売数の多かったローエンド寄りのgシリーズに加え、より単価の高いedgeシリーズやrazrシリーズをキャリアとのタッグで拡大していくのが同社の戦略だ。


 この方針が当たり、同社の端末は販売台数が倍増のペースで伸びている。razr 50dの発表会で公開したデータでは、2022年度から2024年度で販売数が3.5倍に拡大していることが明かされた。2025年度は、さらにその2倍を目標に据える。外部調査でも同社のシェアは急増している。IDC JAPANが12月に公開したデータでは、モトローラと同じレノボ傘下になったFCNTとの合算で第3四半期にシェア4位まで浮上。2メーカー合わせての数値にはなるものの、Pixelシリーズが好調なGoogleを猛追する。


 新興メーカーでは、Nothing Technologyが日本に拠点を設立し、マネージングディレクターに“Xperiaの父”としても知られる黒住吉郎氏を迎えたことも話題になった。Nothingは、4月にミッドレンジモデルの「Nothing Phone(2a)」を発売した。


 同機はシリーズ初のおサイフケータイ対応モデルとなり、日本市場でも大きな話題を呼んだ。Nothing Phone(2a)には、歴代製品に使用されてきたカラーを用いた「Special Edition」や、同社のファンが集うコミュニティーからデザインを募った「Community Edition」などが加わり、限定で販売されたが、いずれも完売に。一部のユーザーから高い支持を得ていることを印象づけた。


 ZTEも、nubiaブランドの海外展開を強化する一環として、日本のオープンマーケットに再参入を果たし、「nubia Flip 5G」と「nubia Iby」を発売した。中でも注目を集めたのは、フォルダブルながら本体価格を7万円台に抑えたnubia Flip 5G。同モデルはY!mobileからも「Libero Flip」として登場した。Y!mobile版はさらに価格を抑えており、本体価格は3万1680円。新規契約などに伴う割引を受けると、1万円を下回る。これはフォルダブルスマホとしては異例の安さで、同ジャンルが一般層に広がることを期待させた。


 躍進したXiaomi、モトローラに、新顔ともいえるNothingやZTEのnubiaも目立った2024年だったが、年末には価格やコストパフォーマンスの高さを武器にしていたメーカーに厳しい法令改正もあった。12月26日に施行された新ガイドラインが、それだ。新要素として盛り込まれたのが、端末購入プログラムで下取りをする際の基準だ。新ガイドラインでは、リユースモバイル・ジャパン(RMJ)の公表する下取り価格の平均値に統一された。これにより、キャリア各社は一部モデルの残価の減額を余儀なくされた。


 中でも影響が大きかったのは、Androidスマホだ。改正ガイドラインでは、リセールバリューの高さが残価に直結するため、どちらかといえば中古市場で人気の高いiPhoneが有利になる傾向がある。裏を返せば、これまでのAndroidの残価は“盛られすぎていた”というわけだ。2025年は、この制度改正がAndroidスマホの逆風になるおそれもある。キャリアの施策にも左右されるため、端末購入プログラムへの注目もさらに高まりそうだ。



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  • カメラに原点回帰した1年だった、個人的には。
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