世の中には「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」だけでなく、「ヤバい男=ヤバ男(ヤバダン)」も存在する。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、芸能人や有名人の言動を鋭くぶった斬るライターの仁科友里さんが、さまざまなタイプの「ヤバ男」を分析していきます。
第40回 中村芝翫
2024年の御用納めをした方も多いことと思いますが、どうにも納まらないのが女優・三田寛子と歌舞伎俳優・中村芝翫夫妻。2024年12月5日号『女性セブン』によると、芝翫さんは妻子と暮らす家を出て、自分の実家で不倫相手の女性(以下、A子さん)と2年半あまり同棲していたそうですが、歌舞伎の興行を差配する松竹芸能から「同棲を解消しないなら、しばらく歌舞伎座には出さない」と言われたことから、同棲を解消し、妻子の待つ家に900日ぶりに戻ったと報じたのでした。
めでたしめでたしと言いたいところですが、12月24日配信『ポストセブン』によると、芝翫さんとA子さんの関係は完全に切れておらず、三田さんら家族と住む家と、A子さんの住む実家や職場を行ったり来たりしているそうです。
“実家での同棲”はヤバい
そりゃ、そんな簡単に別れられまいて、と思うのです。A子さんに対する気持ちがさめやらず離れがたいのかもしれませんが、令和という時代だからこそ、別れるのはそう簡単ではないように思えてならないのです。
梨園では「女遊びは芸のこやし」として、歌舞伎俳優たちの不倫に目くじらを立てるほうが無粋という風潮がありました。しかし、それにしても「実家で同棲」というのは聞いたことがない。それの何が悪いのかと思われる方もいるかもしれませんが、もしA子さんの家で同棲、もしくは二人で新たに借りた家で同棲をする場合、芝翫さんが別れようと思えば、いつでもそこを出ていけるわけです。しかし、実家にA子さんを招きいれてしまえば、A子さんが納得しない限り、出て行ってもらえません。
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また、芝翫さんの実家は人間国宝である七代目中村芝翫さんが建てた家であり、家族としての思い出が詰まっているだけでなく、成駒屋の聖地とも言える場所でしょう。
2024年6月13日発売『女性セブン』によると、この実家は芝翫さんと三田さんの2人の名義で相続したそうですが、法的にも自分に権利があり、嫁として三人の男児を生み、歌舞伎俳優に育て上げるなど、成駒屋に多大な貢献をしてきた三田さんにとって、夫が愛人と“聖域”で同棲することで、どんなにプライドが傷つけられたことでしょう。
芝翫さんがどんなつもりでA子さんと交際していたかはわかりませんが、「実家での同棲」はA子さんと別れにくくなると言う意味で悪手ですし、2016年の襲名以降、相手は変われど、ずっと芝翫さんの不倫に苦しめられてきた三田さんをさらに痛めつける行為と言えるでしょう。「実家での同棲」は、明らかに遊びの範疇を越えたヤバいことだと思うのです。
もうひとつ、芝翫さんとA子さんを別れにくくさせているのは、時代の変化でしょう。歌舞伎界と女性と言えば、隠し子が話題になることがあります。
十三代目市川團十郎白猿さんは市川新之助時代に、十代目松本幸四郎さんは染五郎時代に、片岡愛之助さんも認知した子どもがいることを認めています。特に團十郎さんの会見は印象的でした。隠し子がいるという週刊誌の報道を受けて、緊急会見を開いた團十郎さん。子どものことは認めた上で、相手の女性との会話をこう再現したのです。
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「『お腹に子どもがいます』『ああ、そうですか』『生みたいのですが』『ああ、そうですか。僕は今ちょっと結婚は考えられないのですが、いいですか?』『それでもいいです』ということだったので、僕は『なら、どうぞ。きちんと認知もします』とお話しました」
文字で読むと、丁寧なやりとりに思えるかもしれませんが、実際に会見を見た私は團十郎さんの抑揚のない、冷たい言い方にゾっとしましたし、非常に女性ウケの悪いヤバい会見だったと記憶しています。冷静に考えてみれば歌舞伎界には歌舞伎界のルールがあり、会見では明かされていないこともたくさんあるでしょうから、部外者が口を出す権利はありません。
しかし、今はよく知りもしないことを匿名でああだこうだ言えるSNSが非常に力を持っていますし、「知名度のある人気者の男性が、一般人女性にひどいことをする」というのは、いちばんSNSでバズるネタと言えるのではないでしょうか。
SNS時代は暴露の危険性が伴う
もし芝翫さんがA子さんの気持を無視して、無理やり実家から追い出すような形で別れれば遺恨が残り、A子さんがSNSで芝翫さんの行いを暴露してしまうかもしれない。こうなると芝翫さんのイメージダウンにつながるでしょう。三田さんも有名人ですから、暴露のターゲットになりえます。賢夫人として名高い三田さんですが、二人の結婚生活、もっと言うと妻としての三田さんのウラの顔をA子さんが暴露したのなら、三田さんだってノーダメージではいられません。
不倫が長引くほど、妻と不倫相手が正面衝突する確率も上がりますが、もし三田さんがA子さんを傷つけるような言動を取れば、これまた暴露の対象となってしまう。こう考えた場合、芝翫さんはA子さんと無理に別れるわけにいかないし、三田さんも民法で保証されている妻の権利をふりかざしてA子さんを責めるわけにもいかず、すべてを我慢して飲みこむしかないのではないでしょうか。
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SNSが出現したばかりに、有名人は暴露の危機におびえることになってしまいましたが、有名人のSNSは拡散力があるため、ある種の攻撃にもなりうると思うのです。芝翫さんの度重なる不倫によって三田さんへの注目度は高まり、三田さんのインスタグラムは、よくネットニュースに取り上げられています。
芝翫さんとA子さんが別れたという報道の後、三田さんのインスタグラムには芝翫さんと息子さん三人での誕生会の様子がアップされていました。また、お姑さんの米寿をお祝いとして、母さんの首に手をまわし、頬をくっつけるというかなり親密な関係性を示すポストがあり、嫁になれてうれしいというハッシュタグをつけています。
結婚してからずっと成駒屋という家と家族を大事にしてきた三田さんらしい投稿で、日常のひとこまを投稿したにすぎないことでしょう。しかし、もし別れを完全に受け入れていないA子さんがこの投稿を見たら、どう思うでしょう。
家族になれない自分を思い知らされるかもしれません。そこで、もう既婚者とは関わらないと気持ちを切り替えられたらいいのですが、自分に対する勝利宣言だと感じてしまったら、そう簡単に引き下がってたまるかという気持ちになるのではないでしょうか。
芝翫さんは今が昭和でないことを理解しているのでしょうか。昭和であれば、スターが不倫して、あげくに相手をポイ捨てしても誰も文句は言わなかったでしょう。SNSもありませんから、暴露の危険性もほぼなかったと言えます。けれど、今は令和です。暴露の可能性に加えて、妻(不倫相手)が不倫相手(妻)のSNSを見てしまい、時に深読みして事態が膠着化することも十分考えられます。
こうやって見ていくと、芝翫さんは、三田さんのことはもちろん、不倫相手に対する思いやりもないんじゃないかと思えてならないのです。不倫といってもいろいろなケースがありますから、ひとくくりにはできませんが、自分のことしか考えない。不倫を繰り返すオトコのヤバさをひと言で言うなら、これに尽きるのかもしれません。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」