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「あなたのキャリアを正しく評価してくれる会社があります」「プロのエージェントがあなたの未来をサポートします」――聞き心地の良いキャッチフレーズのCMが、毎日流れてきます。
「転職すれば幸せになれる」という考えは、はっきり言って錯覚です。
確かにキャリアアップして新しい職場でのリスタートに期待を抱くことは自然なことです。しかし、転職が必ずしも幸せにつながるわけではないという現実を知っておくことが重要です。
まず、転職のポジティブな側面について考えてみましょう。
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転職は、新しいスキルを身に付けたり、これまで経験したことのない業務に挑戦したりする機会を提供してくれます。また、より良い職場環境を求めて転職することでストレスが軽減され、仕事と日常生活のバランスの取れた健康的な働き方を取り戻すことができます。現在の職場で長時間労働やストレスフルな人間関係に追い込まれている場合、転職はひとつの解決策となりえます。
一方で、転職によってすべての問題が解決されるわけではないことには注意を払う必要があります。
まず、転職をする動機が「なんとなく今の職場がつまらないから」「友人が転職して楽しそうだから」といった曖昧なままでは、たとえ転職できたとしても、その後もあいまいな動機で転職を繰り返す可能性が高くなります。職場の人間関係が原因で転職しても、転職後の職場でも似たような人間関係の悩みに直面するというのはよくあることです。また、仕事に対する価値観や働き方に一貫性がない場合、次の職場でも満足感を得るのは難しいでしょう。
「転職すれば幸せになれる」という幻想を抱いてしまう背景には、現代社会の情報過多が一因として挙げられます。
SNSやインターネット上には、転職成功者のストーリーがあふれかえっています。彼らは転職をきっかけに年収が大幅に増え、キャリアも順調に進んでいるように映ります。しかし、これらの成功事例はコマーシャルであり、良い部分だけが切り取られていて、実際にあった転職後の苦労については語られていません。これは当たり前の話です。
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しかし、今の仕事がうまく行かず精神的に不安定な時は、どうしても他人の芝生は青く見え、自分自身が進むべき道を見失って安易に転職してしまうリスクがあるのです。
さらに、転職後も新しい職場に適応するためには、多大なエネルギーと時間が必要です。新しい人間関係を築き、企業文化を理解し、仕事の進め方に慣れるまでには、場合によっては数カ月から1年以上かかることもあります。この過程で、予想していた以上のストレスを感じることもあり、逆に不満が増す場合もあるのです。
転職によって得られる幸せは一時的であることが少なくありません。
最初は新しい環境に対して興奮や期待感が高まるものの、しばらくするとそれらは薄れ、再び日常の業務に追われるようになります。このサイクルが繰り返される中で、「転職さえすれば幸せになれる」という錯覚は崩れます。
高度な技術を有する技術者やアナリストなどの中には、戦略的に短期間で転職を繰り返すことでキャリアアップをする人たちもいます。しかし、安易な転職を重ねるだけでは悪い意味の「ジョブホッパー」になってしまいます。
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「石の上にも3年」という言葉は、約2000年前のインドの修行方法に由来したものとされています。いつの時代も「辛いことでもあきらめずに続ければ成果が得られる」という本質を忘れてはいけません。
(水野臣介、株式会社オーピーエヌ 代表取締役社長)
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