2025年の正月はひたすらガンダムの話をしたい。1979年の放送以来、多くのファンを魅了している『機動戦士ガンダム』。今回は、その初代ガンダムの主人公機RX-78ガンダムについて語りたい。
主人公、アムロ・レイが成り行き上搭乗することになったRX-78-2ガンダム。開発の中枢にいたのがアムロの父、テム・レイ。運命的なめぐり合わせで出会ったアムロ少年とこのMSは、開戦以降連戦連勝だったジオン軍のMSザクを次々と撃破していく。
本編開始時点では地球連邦軍とジオン公国との対決軸は既に確立されているが、先んじてMSという人型巨大兵器を開発したジオン軍に対して、宇宙戦艦や戦闘機しか有しない連邦は大いに苦戦をしていた。
そのため、ジオンのザクを参考に連邦軍の急進派が開発を急いだのが、連邦軍初のMSとなるガンタンク、ガンキャノン、ガンダムであった。一連のMS開発計画を、「V作戦」と称している。
連邦軍は、大気圏内での飛行機能も有した新造戦艦、ペガサス級も開発する。このペガサス級のホワイトベースこそ、V作戦で開発提案された前述3機のMSの運用試験の母体となっていく。(文:松本ミゾレ)
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V作戦を経て完成した万能機動歩兵こそガンダムだ!
V作戦ではまず、コアブロックシステムを基幹としたコンセプトの異なる3種のMSの試験的な運用が行われた。最初に作られたのがガンタンクだ。MSとは名ばかりの機動戦車のような形状をしているが、遠距離砲撃戦では無類の火力を発揮していた。
続いて、ビーム兵器や強力なキャノン砲を有した支援型MSのガンキャノンが完成する。そして最後に完成したのが、ビーム兵器や強靭な装甲を有し、単独で大気圏突入すら可能かつ宇宙はおろか地上、果ては水中でも稼働可能なMS、ガンダムなのである。
V作戦はこのガンダムの完成をもって完了しており、初戦で圧倒的に優勢であったジオン軍に対しての対抗馬として活躍。以降はジオン軍からもその白いカラーリングから、「連邦の白い悪魔」と呼ばれるようになる。
そもそもジオン軍が人型兵器のMSを開発したのにもちゃんとした背景がある。本作の舞台となる宇宙世紀では、ミノフスキー粒子という物質が存在しており、この粒子は散布することで戦域においてレーダーに障害をもたらす効果がある。
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そのため、粒子が濃いエリアでは、強力な電波障害が発生し、従来のような戦艦同士の艦隊戦は効果を発揮しにくくなる。電子戦がマジで不可能な世界観なのだ。
そこでジオン軍は独自にMSという人型兵器を開発し、レーダーに頼らない有視界領域での接近戦という、前代未聞の戦術を実践に移したのだ。この兵器の出現によって連邦はジオンに蹂躙され、一時は連邦軍の高級将校であるレビル将軍が身柄を拘束される事態をも招いてしまう。
火力面では決してジオンのザクに劣らない連邦の戦艦も、ミノフスキー粒子下ではその威力を発揮できなかったのである。
戦艦並みの威力を有する携行型のビームライフル
その後、幸いにもレビルはジオンの下から脱出。いわゆる「ジオンに兵なし」の演説を行い、連邦軍全体の士気を向上させる。V作戦はレビル脱出後に提案された、連邦軍の起死回生のプランの一つであった。
一方で連邦よりも先にMSを開発していたジオン軍は、V作戦が完了するまで連邦を圧倒しており、地球各地の要所を抑えるまでに勢力を伸ばしていた。
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さらに地上での運用を前提とした、ザクに次ぐ新型機の開発も異様な速度で進めており、まさにV作戦の発動がもう少し遅れていれば、連邦の反攻はもっと遅れていただろう。
さて、肝心のガンダムの性能は、ザクとは比較にならない。ザクマシンガンの直撃を受けても明確なダメージを与えることができないルナ・チタリウム合金製のボディ。戦艦並みの威力を有する携行型のビームライフル。ザクを文字通り一刀両断してしまうビームサーベルなど、固有の装備は多種多様。
これはガンダムが、連邦軍でも初めての機動歩兵として完成されたことに起因する。連邦軍のMS運用の方向性を決定する上でも重要となる、さまざまな戦闘データの確保もまた、ガンダムの大切な使命だったのだ。
そのため、本作では後に連邦軍も新型MSをロールアウトする。それが量産型MSのジムだ。
ジムはガンダムの戦闘データを踏まえて完成したマシンではあるが、ガンダムほどの性能は有していない。
プロトタイプであるガンダムの運用を経て、より低コストで戦列に配備できるMSとして、ジムはその真価を発揮したのである。つまり、ガンダムはジムの親のようなMSであり、量産型のジムは武装こそ貧弱ながら、ガンダムのデータを経て誕生した、ザクを凌駕するスペックを持つ、これまた優秀なマシンでもある。
劇中では演出の関係上、ジムはそこまで活躍しない。しかし、ビームスプレーガンやビームサーベルを装備しており、実際の性能はザク以上であることは確実。
一部書籍でリック・ドムにも勝るともされている。実際に劇場版ではジムの活躍場面も増えており、パイロット次第でその活躍の度合いはある程度変化する様子だ。
ジオンの新型MSを次々撃破、強すぎるガンダム
本作においては、連邦軍は主人公サイドの勢力であるが、新型MSは前述のようにジムぐらいしか登場しない。
一方でジオン軍は敵方なので、絵的に変化が必須だったため、ザク以降もグフ、ドム、ゲルググといった新型が続々登場した。また、地球の攻略のために水中用MSのアッガイやズゴック、ゴッグなどもロールアウト。
これらを向こうに回して戦うホワイトベース隊は、毎回相当に苦戦を強いられることとなる。が、ガンダム、ガンキャノン、ガンタンクとそれらの機体のパイロットらの活躍で辛くも勝利を手にする。
実際、ガンタンク、ガンキャノンだけでも相当に活躍しており、V作戦は相当に有効なプランだったことが視聴者目線でも理解できる作りになっている。でもやっぱりガンダム。何においても、アムロが乗ったガンダムは相当強い。
ガンダムは同系機が他にも複数ロールアウトされていたが、このアムロの乗るRX-78-2がもっとも有名かつ、もっとも敵を撃破したガンダムとして知られている。
グフを駆る青い巨星ランバ・ラルも、キシリア直属の部下かつレビル将軍を拿捕した戦績も持つ黒い三連星のトリプルドムも、ホワイトベースと何度も火線を交えた赤い彗星のシャアも、結局はガンダムに押し切られて敗れ去った。
また、劇中のジオン公国をまとめ上げているザビ家4兄妹のうち2名がホワイトベース隊と交戦した挙げ句に戦死しているため、ガンダムはジオン公国の支配体制そのものへも、直接的に打撃を与えたということにもなる。
連邦軍の反抗を象徴したフラッグシップであるホワイトベース隊のガンダムは、文字通りザビ家の存亡にも関与してしまった、ジオンにおいてはまさに死神のような機体だったのだ。
単独で大気圏突入可能な機体は宇宙世紀の中でも少ない
また、量産型のジムも後にアムロの戦闘データをフィードバックされ、性能を向上するなどのアップデートが施されている。相変わらず劇中ではパッとしない機体だが、全体的な連邦のMS部隊の性能は、アムロのガンダムによってさらに底上げされてもいたというわけである。
ジオン軍は、MSの量産体制が整った連邦軍の主力部隊やホワイトベース隊の活躍により、徐々に地球各地の占領地帯から撤退を強いられ、やがては宇宙各地の宙域やソロモンなどの宇宙基地まで手放す羽目になる。
最終的には本拠地であるサイド3をも改造した巨大レーザー兵器「ソーラ・レイ」を用いてレビル将軍を亡き者とすることには成功するが、最終防衛ラインの宇宙要塞ア・バオア・クーまで攻め込んだ連邦艦隊に敗北。
最終決戦に参加していたホワイトベース隊は、ホワイトベースそのものが沈没。V作戦以来、最前線で戦ってきたMSも次々に倒れていくものの、アムロをはじめとしたクルーたちは生存。物語は、指導者を失ったジオンが連邦との終戦協定締結を飲んだことで幕を閉じる。
ガンダムというMSがなければ、ところどころ連邦は詰んでいたのではないか? と思える局面もあるため、まさに番組名を冠したこのMSは、連邦軍の戦況挽回には欠かせなかった名機と言って良いだろう。
ちなみに、単独での大気圏突入を可能とする機体は、このガンダム以降は宇宙世紀全体を俯瞰しても、かなり少ない。こういった点からも、連邦軍がV作戦に賭けた決意を垣間見ることができる。