強大権限で利益誘導か 東京女子医大元理事長の「張りぼて経営」

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2025年01月13日 13:04  毎日新聞

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東京女子医科大の元理事長の岩本絹子容疑者を乗せ、警視庁本部に入る捜査車両=東京都千代田区で2025年1月13日午前10時11分、島袋太輔撮影(画像の一部を加工しています)

 名門医大を巡る不透明な資金の支出問題は、元トップが逮捕される事態に発展した。逮捕された東京女子医科大の元理事長、岩本絹子容疑者(78)は大学や病院のコストカットを推し進めた一方で、側近らを重用して利益誘導を図る姿勢に厳しい視線が注がれていた。


 大学は、東京女医学校が前身で、1900年に創立された。国内で唯一、女性のみを教育する医学部を有する大学とされている。臓器移植など高度医療に取り組むことでも知られる。


 だが、不透明な資金の支出が卒業生らから問題視され、大学が設置した第三者委員会が2024年8月に公表した調査報告書では、当時理事長だった岩本容疑者を「利益相反の疑いを生じさせる行為を繰り返していた」と指摘。その後、理事長の解任に至った。


 岩本容疑者が大きな権限を持った背景には、人事や施設管理を担当する経営統括部の存在がある。経営統括部は14年12月に岩本容疑者が副理事長に就任した直後に、直属の部署として設置された。


 そのとき、大学は苦境に陥っていた。14年2月、大学の付属病院で、男児(当時2歳)が鎮静剤「プロポフォール」を大量投与された後に死亡する医療事故があった。01年に心臓外科手術で女児(同12歳)が死亡した後に診療報酬の優遇措置が受けられる「特定機能病院」の承認が取り消されたように、このときも承認が取り消された。


 事故の影響による患者の減少は深刻で、収支は14〜16年度で計58億円の赤字を計上した。


 経営再建を任された岩本容疑者は、人件費の抑制や不採算施設の集約など徹底的なコストカットを実施。収支は17年度に赤字を脱し、18、19の両年度は40億円超の黒字を計上した。19年には理事長に就任した。


 人件費は15年度の435億円から23年度には341億円に圧縮。11拠点あった医療施設やクリニックも7拠点に統廃合が進んだ。


 一方で、これらは人材の離反を招いた。17〜23年度の間に、職員の2割弱に当たる1272人が減少。経営方針の対立から、集中治療室の医師らが一斉に去り、大学が再建策の柱に据えた「小児集中治療室(PICU)」も22年2月に運用から8カ月で停止に追い込まれた。


 この間にあった新型コロナウイルス禍も重なり、20年度以降は医療収入が減少し、再び赤字に転落。付属病院の病床利用率は、23年度には5割ほどに落ち込み、単年で72億円の赤字を計上した。


 ある大学関係者は「徹底した経費削減による張りぼての黒字化が岩本氏の経営方針だった」と振り返る。


 人材やPICUといった将来性のある事業への投資を絞る一方、岩本容疑者は自身や「側近」の利益確保には余念がなかったと指摘される。


 赤字に転落して以降も自身の報酬は増え続け、23年度には職員平均の5倍超となる3178万円が支払われた。


 また、第三者委の調査では、大学の同窓会組織にあたる「至誠会」の元職員で側近とされる女性(52)と元事務長の男性(56)に対する給与の「二重払い」の疑惑が判明している。


 さらに、第三者委は卒業生の親族向けの推薦入試や教職員の採用・昇進を巡って、大学と至誠会が寄付金を受け取っていたと認定。「相手の弱い立場に付け込み寄付を求める発想」を岩本容疑者が持ち込んだと指摘した。


 逮捕容疑となった新校舎の建設を巡る1級建築士への報酬についても、第三者委は給与と報酬の「二重払い」があったと認定。報酬の金額の根拠や業務内容に関して、経営統括部から理事会などに具体的説明がなく、「ブラックボックス化」していたと指摘した。


 大学の幹部職員は「気に入らない人間は遠ざけて、岩本氏の鶴の一声で意思決定される流れができあがっていった。その結果、大学のお金を好き放題にされてしまった」と話す。【遠藤龍、森田采花】



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