現地時間21日(日本時間22日)に2025年度の米国野球殿堂入り投票結果が発表される。今年度は日本が誇るレジェンド・イチローの有資格1年目。満票選出なるかどうかに注目が集まる。
そんなイチローと同時に殿堂入りを狙うのが、有資格3年目を迎えた47歳のカルロス・ベルトランである。
有資格1年目の2023年度に46.5%を獲得し好スタートを切ったベルトランは、24年度に57.1%と10ポイント以上の上積みに成功。今回はさらに20ポイント近くが必要となるが、一気に数字を伸ばしても驚けない。
プエルトリコ出身のベルトランは、ロイヤルズ時代の1998年9月に21歳でメジャーデビュー。翌年にセンターのレギュラーに定着すると、156試合で打率.293、22本塁打、27盗塁を記録し、ア・リーグ新人王にも輝いた。
ベルトランを表す言葉として最もよく用いられてきたのが“5ツールプレイヤー”ではないだろうか。日本では走攻守三拍子などと表現するが、メジャーでは「ミート力」「長打力」「走力」「守備力」「送球力」の5つの能力の高いプレイヤーを指すのが一般的だ。
そのすべてを高いレベルでこなしたベルトランだが、スイッチヒッターだったことも忘れてはいけない。
通算打率.279を残したが、右打席で.280、左打席で.279。OPSも.835と.843と左右で大きな差はなかった。まさにどんな場面でも与えられた役割をこなす選手だった。
また、パワー以上にセンスの高さをのぞかせたのが類まれなる走塁能力である。2年目の1999年から11年連続で二桁盗塁をマークするなど通算312盗塁を積み重ねたが、盗塁失敗が極端に少なかった。2001年に盗塁企図32回で31盗塁、03年に45回の企図で41盗塁、04年にも45回の企図で42盗塁を記録している。
通算では509盗塁のイチローに及ばない312盗塁に終わったベルトランだが、成功率は81.3%のイチローをしのぐ86.4%という高水準。単にスピーディだっただけでなく、技術に裏打ちされた走力を兼ね備えていた。
そんなベルトランは、イチローと同じくポストシーズンにはあまり縁がなかった。特にプロ入り当初はスモールマーケットのロイヤルズに所属していたこともあり、初めてポストシーズンに出場したのは、シーズン途中のトレードでアストロズに移った04年。27歳の時だった。
その後、06年にメッツで、12年以降はヤンキースなどでポストシーズンを味わった。カージナルス時代の13年には初のワールドシリーズ出場を果たしたが、その時はレッドソックスに苦杯をなめている。
ベルトランが唯一、ワールドシリーズ制覇を成し遂げたのは、結果的に現役ラストイヤーとなった17年である。ただこの時は、サイン盗みに揺れたシーズンで、首謀したとされるベルトランにはケチが付く形になっている。
メジャー史上8人しかいない「300本塁打&300盗塁」のメンバーの一人でもあるベルトラン。その事実だけで殿堂入りには値するだろう。長らく同じ外野手としてしのぎを削ったイチローとともにその名前が呼ばれることになるのか。
【カルロス・ベルトラン通算成績(1998〜2017年)】
2586試合、打率.279、435本塁打、1587打点、312盗塁
文=八木遊(やぎ・ゆう)