“初任給30万円”は高い?初任給引き上げで学生歓迎も“就職氷河期世代”「うらやましい限り」 世代間の賃金格差を考える【news23】

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2025年01月23日 14:24  TBS NEWS DIG

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人手不足を背景に、空前の売り手市場が続いています。そんな中、大手企業を中心に初任給を30万円以上に引き上げる企業が増えています。一方で、就職氷河期世代は賃金がなかなか上がらない現状があります。

【写真を見る】“初任給30万円時代”の到来?就職氷河期世代は…

「初任給30万円時代」 幅広い業界で初任給引き上げ

大阪名物の串カツでおなじみ、「串カツ田中」。売り上げは好調で、4年連続の賃上げを実現。全正社員を対象に平均4.7%、最大23%賃上げしました。

いま、賃上げをめぐり注目されている言葉が「初任給30万円時代」。

初任給を30万円以上に引き上げる動きが「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングなど、幅広い業種に波及しているのです。このうちの一つが、生命保険大手の明治安田生命です。

明治安田生命 浅野芳一 常務執行役
「若い世代に対してもしっかりと還元をしていきたいという考えのもと、今回初任給の引き上げをすることにした」

2025年度から大卒の初任給は月額33万2000円。さらに、若手の一部については8%以上の賃上げを実施する方針です。

明治安田生命 入社4年目
「若手の給料も大分上げていただいて、素直にうれしいなと思っております」

賃上げの流れを定着させられるのでしょうか。1月22日、連合と経団連が会談し、2025年の春闘が事実上スタートしました。

連合 芳野友子 会長
「ようやく動き始めた賃金(アップ)の流れを滞らせることは絶対に避けなければならない」

“初任給30万円時代”、学生の受け止めは…

就活中の大学3年生
「結局みんな給料前提で話していると思う。就活の界隈にとって好影響であることは間違いない」

就活中の大学4年生
「アプリを使っているが、ものすごい勢いでオファーが来る」

大学2年生
「就職先がいっぱいあるのはいいことだと思う。自分にとって良い企業を選べるのは今の時代だからこそなのかな」

就職氷河期世代「うらやましい」

いまは人手不足を背景とした空前の売り手市場。しかし、30年前は…

1995年のニュース
「大卒の初任給が0.4%増の19万5774円、高卒が0.7%増の15万2675円といずれも過去最低の伸びです」

バブル崩壊後、厳しい就活を経験した就職氷河期世代。セミナー会場に入りきれず、通路に座り込む人までいた時代です。

1994年当時の学生
「門前払いをされることが多くて(就職)活動と言えるかは分からない」
「『3年後には泣きを見るんだぞ、人が足りなくなって』と思う」

現在、40代から50代の就職氷河期世代は“初任給30万円時代”をどう思うのでしょうか。

47歳
「うらやましい限りです。民間はことごとく落ちましたし」

――ご自身の初任給は?

48歳
「14万円です。25年前」

――何年くらいで(30万円に)届くイメージ? 

49歳
「当時のイメージだと、10年かな。内定取れたらどこでも喜んでいくみたいな周りの人たちがいっぱいいた」

世代間格差 日本経済に与える影響とは

藤森祥平キャスター:
今回のテーマは、年代ごとにいろんな考えがあると思います。トラウデンさんはどう感じますか?

トラウデン直美さん:
20代の1人としては、伸びることはいいことだと思います。一方で、初任給30万円を「高い」と思う人が多いと、それだけ全体としては賃金が上がっていない。結局、全体の賃金が良くならないと、若い人だけを良くしても、いい循環にはならないと思います。

いまの状況は、多分賃金が純粋に上がったということではなく、人手不足で人材の取り合いになっているんだなと思います。

藻谷浩介さん:
賃金が上がっていない、30万円もらえていない若い人もいっぱいいると思います。東京では(新卒の)年収は400万円くらいになります。これは、欧米で見るとおそらく平均の半分以下ぐらいの水準。つまり日本人全体が非常に安く使われているんです。

藤森キャスター:
もちろん、それぞれの国で物価水準も違うので、一概には言えませんが。

小川キャスター:
VTRでは就職氷河期世代からの「報われない」という恨み節のような声もありました。

藻谷浩介さん:
就職氷河期世代は待遇で非常に割を食っているにもかかわらず、「本人の自己責任でしょう」みたいな言われ方をされることに私は強く憤っています。本当に優秀な人たちが多い世代。ただ彼らにちゃんと十分な給料をあげなかったことにより、その後の日本に大きな悪影響が出ている。

藤森キャスター:
就職氷河期世代は約2000万人いるといいます。賃金の増加率はコロナ前と比べると全体としては伸びてます。しかし就職氷河期世代は伸び率が低い、あるいはマイナスになっている。差は歴然です。

藻谷浩介さん:
いろいろな資料でこのような結果が出ています。改めて見ると愕然とします。私の2つ上くらいの世代の待遇を良くするお金があるのであれば、非常に割を食った就職氷河期だけこんなに(賃金の増加率が)下がるのはおかしいですね。

就職氷河期世代は「団塊ジュニア」と言われ、団塊の世代の子どもの世代で人数は非常に多いです。しかし待遇が非常に悪かったために、団塊の世代の孫にあたる世代が生まれなかったんです。これは本人の選択ではなくて、本当は子どもを持ちたい人もいたはずですが、所得が低くて子どもを持てなかった人がたくさんいる。

このことは本人がかわいそうというだけではなく、必ず日本経済を非常に悪くします。就職氷河期世代の待遇を上げないと、いずれ自分たちが苦しむので、大企業の皆さんには考えてほしい。

トラウデン直美さん:
就職氷河期世代はきっとお金の面だけではなく、いろいろな面でやりきれない感みたいなものを持っていますよね。

藻谷浩介さん:
結局就職氷河期の待遇が悪かったことによっていま人手不足に苦しんでいます。その世代の待遇を上げることは世間にとっても利益があります。自分でやったことは自分に返ってくる。大企業の人事の方はこれ(世代間格差)を修正しなくてはなりません。

トラウデン直美さん:
若い人にとっては就職氷河期世代はおそらく上司にあたる世代です。上司が納得感を持って気持ちよく働いていない職場で、果たして若い世代が気持ちよく働けるのかなというところもあります。やはり全体としての底上げが必要かなと思います。

小川キャスター:
世代間でギスギスしてしまうのは最も避けたいところです。時代の風向きやその時々の政策に左右され、煽りを受けた世代があるならば、そこに手当をするのが政治の課題だと思います。

藻谷浩介さん:
これは決して自己責任ではなく、もっと平等になるように企業も政府も意識すべきだと思います。

『初任給』について「みんなの声」は

NEWS DIGアプリでは『初任給』について「みんなの声」を募集しました。

Q.大卒の初任給30万円台 どう思う?

「高すぎる」…36.2%
「少し高い」…27.8%
「妥当」…24.6%
「まだ安い」…6.1%
「安すぎる」…1.4%
「その他・わからない」…3.8%

※1月22日午後11時23分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは23日午前8時で終了しました。

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<プロフィール>

トラウデン直美さん
環境問題やSDGsについて積極的に発信
趣味は乗馬・園芸・旅行

藻谷浩介さん
(株)日本総研主席研究員 著書「デフレの正体」
NYコロンビア大学ビジネススクール卒業

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  • くどいようだが、一番支えている人間達にそっぽを向かれたら、グダグダにしかならない。
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