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メンタル不調に陥る若手社員が急増している。パーソル総合研究所の調査によると、メンタルヘルス不調を経験した20代の約4割が退職を選択しているという。その背景には、上司の間違ったフィードバックの仕方がある。
現代の若者は「拒否回避志向」が強いことも影響しているようだ。
フィードバックは誰にだってできる。しかし正しいフィードバックをするためには、相応の知識と経験が必要だ。
そこで今回は、フィードバックの仕方を間違えている上司の特徴と、それを改善する方法について徹底解説する。メンタル不調に陥る若手社員を増やさないために、経営者やマネジャーはぜひ最後まで読んでもらいたい。
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●若手社員のメンタル不調が深刻化する理由
昨今、若手社員のメンタル不調が深刻な問題となっている。パーソル総研の調査(2024年12月)によると、メンタル不調を経験した20代の約4割が退職を選択したという。上司は「仮病なのでは?」と疑うこともあるが、実際の仮病はわずか1%にすぎない。
なぜ、若手社員はこれほどまでにメンタル不調に陥るのか。原因の一つに「拒否回避志向」の強さがあるといわれている。拒否回避志向とは、他者からの否定的な評価や拒絶を避けようとする傾向のことだ。
例えば上司に相談に行こうとして、「今は忙しい」と言われただけで相談する気力を失ってしまう。「自分なんかどうでもいいと思われている」と考え込んでしまう。商談の場面でも同じだ。お客さまから「うちは他社の製品を使っているので」と言われただけで、まるで自分自身が否定されたような気持ちになる。
以前、こんなことがあった。会議の席で、新入社員が自分なりのアイデアを披露してみせた。すると上司が、
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「ちょっとそのアイデアは難しいね」
と柔らかく返した。さらに
「でも、アイデアを出すことはいいことなので、ドンドン言ってほしい」
とフォローもした。
ところがこの若者は「自分は認められていない」と思い込んでしまったそうだ。それからというもの、上司や先輩のメールの返信が遅かったり、社内イベントの誘いを断られたりしただけでも、過剰に気にしてしまうようになった。
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●なぜ「とりあえずやってみて」「自由にやってみて」と言ってはいけないのか
昨今は「主体性を重んじたほうがいい」と思い込む上司が多い。そのため若者には「自分なりに考えて」「自由にやってみて。任せるから」と言いがちだ。強制させてはいけないと勘違いしているからだ。しかし、このような言葉が若者を追い込むことがある。
とくに昭和世代の上司は「経験学習モデル」で指導しようとする。
まずは経験させ、その経験を振り返らせ、そこから学ばせるという方法だ。しかし拒否回避志向が強い若者には、やるべきでない。
「まずは経験が大事って、言われても……。どうすればうまくいくか。教えてくださいよ」
という発想なのだ。
自動車教習所で例えると分かりやすいだろう。いきなり運転させるわけではない。まず教室で座学を行い、次に構内で基本動作を練習する。そしてようやく公道に出るのだ。
それも最初から幹線道路を走らせるわけではない。交通量の少ない道路から練習を始め、徐々に難易度を上げていく。このような段階的な指導が、拒否回避志向の強い世代には必要なのである。
「まずは自分なりに企画書を書いてみて」
こう言って、ろくに企画書作成について知識も技術も学ばせていないのに「まずはやってみて」と経験させようとする。そして上がってきた企画書を見てドヤ顔でダメ出しのフィードバックをしようものなら、若手社員が仕事がイヤになってしまうのも無理はないだろう。
●フィードバックは「タイミング」が命
そもそも「フィードバック」とは何なのか?
単に相手の行動を評価して、良しあしを伝えることではない。目標達成に向けたプロセスで、適切なアドバイスを伝えることがフィードバックだ。
・すぐに
・その場で
・具体的に
この3つがフィードバックには絶対不可欠なポイントである。重要なのが「タイミング」だ。例えば焼きそばを作る場面を想像してみよう。出来上がった焼きそばを食べて、
「味が薄いよ」
「なんだか食感がいまいちだな」
こんな言い方をされても落ち込むだけだろう。そうではなく、作っている段階で、
「麺は先にほぐしておこう」
「火加減はこのぐらいだよ」
「野菜はこの順番で入れていくんだ」
このように声をかけられたほうが、はるかに役立つはずだ。
つまり、正しいフィードバックをするにはタイミングが大事で、そのタイミングとは「実演中」なのだ。実演している「その場」でフィードバックをする。実演中がムリでも、せめて目標達成プロセスの中でやるべきだ。
イベント集客であれば、目的確認、目標設定、イベント選定、企画、運営、プロモーション、集客、改善……。それぞれのプロセスごとで確認をする。
「そのイベントの目的が違うよ」
「目標としている集客人数が違う。いかに経営者を集めるか、だから」
「SNSでプロモーションをかけても、このイベントは集まらない」
「チラシをもって、得意先を回ろう。私も50枚配る」
このように、プロセスごとにチェックすることで具体的なフィードバックができる。
●上司がやりがちな間違ったフィードバック3選
上司がやりがちな間違ったフィードバックは、主に3つある。
1. 定期的なフィードバック
2. 抽象的なフィードバック
3. 又聞きのフィードバック
1つ目の「定期的なフィードバック」について解説しよう。
上司は1on1ミーティングと称して会議室に呼び出し、定期的にフィードバックすることが多い(定期面談と呼ぶこともある)。そして、
「イベント集客はどう?」
「集客がうまくいってないようだけど、目標設定から間違ってたんじゃないかな」
「インスタグラムで集客できるなんて、誰から教えてもらった? 取引先の経理部長がインスタをチェックすると思う?」
既に終わったことを、会議室でフィードバックする。これでは参考にならない。
2つ目が「抽象的なフィードバック」について。
繰り返すが、フィードバックは、「すぐに・その場で・具体的に」が基本だ。だから現場を見て、その場でしないと、具体的なフィードバックはできない。
定期面談や1on1ミーティングでは、
「なぜ商談が前に進まないか分かりません。何かフィードバックをお願いします」
といわれても、商談を見ていない上司は具体的なことを言えない。
「お客さまのニーズをしっかり捉えてないからじゃないかなァ」
「そんなことないと思うんですけど」
「うーん、でも、もっと質問力は鍛えたほうがいいぞ。君の同期のJさんも、質問力を鍛えてから変わったから」
このような抽象的なことに対しては、抽象的なフィードバックしかできない。だから、すぐに、その場で……を心掛けるのだ。そうすることで、
「一緒に商談に参加してよく分かった。オープンクエスチョンを使いすぎだよ」
「君が話す量が多すぎるよ。お客さまにもっと話をさせないと。例えば、こんな質問をしてみたらいい」
自然と具体的なフィードバックができるようになる。
3つ目の又聞きのフィードバックは、最悪だ。
「そういえば2カ月前のイベントのことだけど、SNSでプロモーションしたらしいじゃないか。そんなやり方じゃあ、うまくいかないよ」
このような、結果が出て、随分たった後のフィードバックをされても気分を害するだけだ。しかも、本人はその場にもいないし、誰かから聞いた話を参考にフィードバックしようとしている。こんなやり方では信頼関係を壊しかねない。
●本当に効果のあるフィードバック、2つの秘訣
本当に効果的なフィードバックをするためには、次の2つは押さえておこう。そうしないと上司の自己満足になってしまう。
1. 専門知識を備えておく
フィードバックする側は、そのテーマにおける専門知識を持っていなければならない。例えば部下が作ったプログラムについてフィードバックをするなら、プログラミングについて十分な知識を備えていることが条件。それは、提案書を作るときも、イベントを企画するときも同じだ。
そして、それはフィードバックされる側も同じだ。
プログラム作成についてフィードバックをされても、プログラミングについてほとんど知識がないなら参考にしようがない。
体系的に学ぶことと、フィードバックされることは違うのだ。
提案書作りもイベント企画も同じ。フィードバックを受ける側も基本的な知識がなければ、フィードバックの意味が分からないからだ。
2. 実演の場を設ける
フィードバックは、すぐに、その場で行うことが基本中のキホンだ。自動車教習所で例えるなら、車の運転中、もしくは運転が終わってから、すぐに
「あのタイミングが遅いよ」
「キチンと目で確認してからアクセル踏んで」
このようにフィードバックしなければならない。その場にいられないなら、
「ちょっと実際にやってみて」
とその場で実演してもらうのだ。
「なぜ、こんなイベント企画になったのか。メンバーが誰で、どんな発言があったのか? 再現してみて」
このように提案してもいい。そうでない限り、正しいフィードバックはできないからだ。
●まとめ
若者がメンタル不調に陥るのにはさまざまな要因があるだろう。それらを全て解決するのは難しい。上司ができることには限界がある。
ただ、ダメ出しのフィードバックはもうやめよう。十分に勉強させず、
「とりあえずやって」
「自由にやって。期待してるから」
と丸投げするのは優しさではない。指導からの逃げだ。そのためにも、フィードバックの仕方を改善していこう。フィードバックを大きく変えるだけで、部下は混乱することなく、正しい方向へと成長していくはずだ。
著者・横山信弘(よこやまのぶひろ)
企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。
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