みなさん、こんにちは! ファッションスタイリスト&ライターの角佑宇子(すみゆうこ)です。昨今、ファッションをはじめとしたトレンドといえば「Y2K」や「平成レトロ」。懐かしの2000年〜2010年代に流行したアイテムをオマージュしたスタイルが巷で話題となっています。私たち40代にとっては、青春時代をプレイバックするかのようなアイテムばかりが目について何だか複雑な気分です。
ただ、平成アイテムだからといって全てが令和女子たちにウケているかと言えばそうわけでもないようで……そこで今回は、Z世代に今愛される平成アイテムと、Z世代ですらさすがにダサいと思っている平成アイテムの違いについてご紹介いたします。
◆あゆの“尻尾”も! 令和にウケてる平成アイテム
「オンニ(お姉さん)、これ可愛くないですか?」そういって、趣味仲間の20代韓国女子が見せびらかしてくれたのは、フォックスファーのチャーム。そう、懐かしのあの「尻尾チャーム」です。彼女は20年近く前にそれが流行していたことを知らずに、最近流行っているものとしてランランとした純粋な瞳で私に“今のカワイイ”をシェアしてくれました。
「うわっ、懐かしい! 浜崎あゆみがつけてたやつだ!!!」と思わず発しそうになったのを抑えて、一緒にカワイイ! と盛り上がっていたのですが、その脳裏には流行は巡るって本当なんだなと自分が歳をとったことを改めて痛感いたしました……。
さて、そんな久々の平成アイテムに出くわす機会はこれだけではありません。尻尾チャーム以外にも、ルーズソックス、バルーンスカート、バタフライモチーフ、パッチン留めクリップ、メタルフレームメガネ、アームウォーマー、厚底シューズなどが20代の令和女子の心にグッとくるアイテムなよう。と、同時に平成JKさながらのミニ丈プリーツスカートも増えています。
同時に、たまごっち、パワーパフガールズ、オシャレ魔女 ラブ and ベリーなど、今の20代が幼少期に愛してやまなかったアイテムたちも、Y2Kや平成レトロブームで注目されています。この時代にリニューアルして商品化されるなどして、カルチャー全体として注目度を高める施策が働いているようですね。
◆え、ダサ……生き残りに負けた平成アイテム
いっぽう、平成に流行ったアイテムならなんでもイケる…!? というワケではもちろんありません。平成といっても31年ありますからね。「平成レトロ」と称して今ブームが再来しているのは、とくに2000年〜2010年前後に流行ったものです。ですが、その期間に流行したアイテムでも「これは今見てもダサいね……」と認識されているアイテムも存在します。
具体的には、トレンカ、ハンパ丈レギンス、ゴムタイプのサッシュベルト、膝丈コクーンスカート、ウエストマークのダウンコート、花柄のスキニーパンツ、ビビッドな発色のカラータイツなど。とくにファッションアイテムでいえば、スカート以上にボトムスや脚のラインが目立つような流行アイテムは再ブームにはいたらなかったようです。
これらのアイテムは、脚の露出はしたくないけれど、体型カバーしつつオシャレに見せたいという目的で当時流行ったもの。令和のZ世代から言わせれば「これ着るくらいなら、生足出したほうが可愛くない?」ということなのでしょう。再流行に乗るには、ちょっと中途半端な位置付けのアイテムだったのかもしれません。
サッシュベルト、ウエストマークのダウンコートもしかり。今はボトムスがロング丈かミニ丈に二極化されています。ウエストマークをする着こなしはハンパ丈のトップスやボトムスを着る際にスタイルが悪くなるのをカバーするために生まれた着こなしテクニックなので、今の流行りに乗り切らなかったのでしょう。
◆再ブームになるかの線引きは「ギャルマインドの有無」
ファッションにおいて、受け入れられるものとそうでないもの線引きとなるのが、やはり「ギャルっぽいかどうか」なのではないかなと思います。個性的で自由で、カワイイをギュッと詰め込んで、誰に何をどう思われるか気にしないギャルマインドが、今の令和女子に刺さっているのでしょう。
そのため、平成ギャルが所持していたアイテムは20年以上経った今でも、そのオマージュとしてしっかり生まれ変わっているのです。対する、当時からあった体型カバーやモテを狙ったような平成アイテムは時代の波を越えられず、ダサいものとして認識されやすいのかもしれません。
◆リバイバルする起因は、前向きな美学にもとづく
どんな流行も時代とともに廃れる日はやってきます。しかしその流行するアイテムの本質が「自分らしくあるため」という前向きなものなのか、または「気になる人の目をカバーする」という後ろ向きなものなのかで、その後にブームが再来するかどうかが分かれるように思えます。洋装ファッションの基礎を作ったココ・シャネルの服も、女性が社会で活躍するためにという前向きな服装を提唱し続けた結果、それがリバイバルを繰り返して今の定番服としてなお存在し続けています。
日本においては、ギャルたちがその前向きなマインドを提唱し続けてくれているのでしょう。ギャル最盛期のころ、小・中学生だった筆者はギャルを怖い存在として見ていました。ですが時を経て大人になった今改めて思うのは、日本のギャル文化は世界に誇れる素晴らしい美学であるということです。かつてのような黒ギャルは消滅しても、ギャルマインドは形を変えて永遠に語り継がれていくのかもしれません。
<文&イラスト/角佑宇子>
【角 佑宇子】
(すみゆうこ)ファッションライター・スタイリスト。スタイリストアシスタントを経て2012年に独立。過去のオシャレ失敗経験を活かし、日常で使える、ちょっとタメになる情報を配信中。2023年9月、NHK『あさイチ』に出演。インスタグラムは@sumi.1105