今週末は根岸ステークス。現在のJRAダート重賞で3番目に古い歴史を持ち、ワシントンカラーやブロードアピールなど、数々の名馬が白星を挙げてきた。中でも02年、03年に連覇したサウスヴィグラスは、ダート競馬の歴史を変えた一頭と言ってもいい。
重賞初制覇が6歳1月と遅咲きではあったが、同年3月の黒船賞から全国のダート短距離重賞を総ナメ。翌年も勢いはとどまるところを知らず、根岸Sを連覇したほか、北海道SCで7つ目のタイトルを獲得。続く東京盃は2着に敗れ連勝がストップしたものの、JBCスプリントで短距離王者にふさわしいラストランを飾った。
現役時代もさることながら、種牡馬として驚異的な活躍。とりわけ地方競馬では、“1強”ともいえる成績を残した。09年にスパロービートが船橋記念を勝ち、産駒の重賞初制覇を飾ると、同年暮れにはラブミーチャンが全日本2歳優駿を制覇。産駒のすさまじい勢いと、比較的安価な種付け料が相まって、生産地では人気が爆発。後年の驚異的な活躍、成績につなげていく。
JBCスプリントの父仔制覇を達成したコーリンベリーやサブノジュニアなど、父に似て短距離向きの産駒が多く、「ダートの短距離はサウスヴィグラス」の格言も生まれたほどだが、後年には中距離路線の活躍馬も登場。13年度産のタイニーダンサーはエーデルワイス賞(ダ1200m)と北海道2歳優駿(ダ1800m)を連勝し、翌年には関東オークス(ダ2100m)を制した。14年度産のヒガシウィルウィンは東京ダービー(ダ2000m)、ジャパンダートダービー(ダ2000m)の南関東二冠。2歳時の1勝を除きすべてマイル以上で白星を挙げ、父とは異なる舞台で結果を残した。
ほかにも、テイエムサウスダンやナムラタイタン、アークヴィグラスやカイロスなど、00年代〜10年代に全国のダート競馬を彩った馬たちは、その多くがサウスヴィグラス産駒だった。12年、15年〜21年と計8度の地方競馬リーディングサイアーを獲得。一時代を築いた名種牡馬だったが、18年3月4日にこの世を去った。現7歳がラストクロップとあって、産駒は大きく数を減らしている。昨年は地方リーディングサイアーTOP20からも陥落。シニスターミニスターやホッコータルマエらがリーディング上位を賑わせており、新時代突入を実感させる。
昨年の京浜盃を勝ったサントノーレは母父がサウスヴィグラス。ブルードメアサイアーとして、初のグレード重賞制覇だった。そのほか、昨年のハイセイコー記念を勝ったスマイルマンボ、兵庫でデビュー4連勝のオケマルも同じく母父に名を刻む。今後は次世代の馬たちがスピードとパワーを伝えていく。またいつの日か、リーディング争いを賑わせるような、サウスヴィグラスの血を引く快速馬、名種牡馬が現れて欲しい。