中継が入っていなければ、この程度のことは仲間内ではよくあること。だがMリーグは麻雀を「賭け事」から「スポーツ+知性の娯楽」へと押し上げ、今や人気のエンタメである。
それを貶めたとして非難されているのだが、本人は速やかに謝罪、全責任は自分にあると反省しているようだ。もともと彼女は毒舌が売りでもある。それでもまだ火種はくすぶっている。たった1回の失言さえ許されない社会は誰にとっても生きづらい。
冗談交じりの発言で炎上した44歳の苦い思い出
「以前、引っ越してきて新しくママ友仲間になった人がいたんです。彼女はとてもかわいい顔立ちなんだけど、すごくスタイルがよくて……。仲よくなったころ、『いいよねえ、顔は少女で体はエロくて』と冗談で言ったら、彼女は笑ってくれたんですが、周りがドン引き。もともと私は冗談がきついと言われがちではあるのですが、それは冗談交じりの褒め言葉のつもりだった。職場では結構そういう言い方が受けていたものの、ママ友には受け入れてもらえなかった」
リョウコさん(44歳)は7年ほど前の苦い思い出を話してくれた。そこから彼女はママ友グループから無視されるようになったという。
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ただ1回の失言で人間関係が断絶する
ただ、当該女性とはいまだに仲良くしているというから興味深い。当事者がどう思うかより、周りがどう思うかのほうが「グループ」にとっては重大なのかもしれない。「人って怖いなと思いました。それまでは私が若干、きついことを言っても『リョウコさんって、ほんっと面白いわね』と言ってくれていた人たちが、急に手のひらを返したように背中を向けるんですから。ただ、新たに来た人を温かく迎えようとみんなが思っていたという証拠なんでしょう。そこに私が水を差してしまったということ」
それでも、ただ1回の“失言”が許されないのは怖い。
当人同士はよくても周囲が許さないケースも
「私が社会人1年生のころ、指導社員が怖かったんですよ。何度も言わせるな、想像力を働かせて仕事をしろって。同じことを2度言われないようメモをとって必死に食いついていきました。あるとき凡ミスをしたら『集中力がないからだ。小学校からやり直せ』と言われて……。悔しくて泣きそうになりました。さすがにその指導社員の同期が『そんな言い方はないよ』とかばってくれたんですが、かばってもらえばもらうほどみじめになってきた。指導社員も『悪かった、失言だ』と謝ってくれてその場はおさまったんですが、日に日に彼への風当たりが強くなっていきました。私はむしろ、それが申し訳なくて」
ユキさん(40歳)はそう言う。彼女は体育会系のノリで育ってきたので、指導社員のやり方はむしろ自分に合っていると感じていた。悔しさをばねに伸びるタイプだったのだ。会社側もそれをわかっていて、彼女にその指導社員をつけたのだろう。
「でもやはり周りが許さない雰囲気になってきた。だから『私は指導社員の○○さんを尊敬していますから』とみんなの前で宣言しました。こういうやり方のほうが私には響くんです、と。それでようやく鎮静化したんですが、当人同士の立場や関係をわからないまま批判されると、どちらも傷ついてしまうんですよね」
昔なら冗談で済んだ話が大事になる時代
たかだかあの程度の言葉に傷つく私ではないというプライドが、ユキさんにはあった。自分自身が情けなくて泣きそうになっただけなのだ。それを周りは理解しないまま、言葉だけを取り上げて指導社員を非難する方向にいっていた。それがかえってユキさんを傷つけた。
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言葉だけが一人歩きしていく今の時代、人を傷つけないようにしながら本意を伝えていくには「コツ」だけではない「気持ちの込め方」が重要なのかもしれない。
亀山 早苗プロフィール
明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(フリーライター))