訪日ラッシュで、日本の常識を知らない"Z世代中国人"がやらかしそうなこと。バズ目的の"愛国はしゃぎ"も

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2025年01月29日 07:11  週プレNEWS

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富士山が見える景勝地、山梨県の忍野八海に殺到する中国人の若い旅行者たち。多くの人は実はお行儀がいい


1月28日から春節の休みによる中国人の訪日ラッシュが始まる。物価安などで「気軽に旅行できる国」になった日本は、中国の若い世代にとっても旅行先として有力候補になっているはず。しかし、中国人にも大人気な観光地である富士山周辺を取材してみると彼らの日本での行動は現地で思わぬ波紋を広げそうな心配が......。

【写真】富士山頂で中国国旗を掲げる女性旅行者

*  *  *

■「愛国動画」を撮影するために

中華圏の旧正月「春節」。今年は1月28日から2月4日の8日間が中国の新年休暇に当たる。この時期の名物となっているのが、中国人観光客の大量出国だ。

近年は政治的影響もあり、訪日中国人客の動きは低調で、コロナ前と比べると7割程度の出足にとどまってきたが、今年は石破政権下で日中両国の関係改善が進んでおり、来日者数の増加が見込まれている。

中でもZ世代(1990年代中盤以降に生まれた世代)の中国人にとって、自国から近く治安もいい日本は、友達同士の個人旅行先としても選ばれやすい場所だ。

近年の中国では、豪華なホテルや高級レストランを利用せず、滞在費を安く上げる「特殊兵式旅遊(ターシュービンシーリュイヨウ)」という旅行スタイルも流行しており、物価の安い日本はこの手の旅と相性がいい。

ただ、それゆえ懸念されるのが、新たな世代の中国人観光客たちの殺到に伴うオーバーツーリズムと、文化や政治の摩擦によるトラブルだ。

「祖国は偉大だ! 感動した!」

中国国内のショート動画サイトには、中国人の若者が日本国内の観光地で巨大な五星紅旗(中国国旗)を振り回す動画が数多くアップされている。

とりわけ、撮影場所として選ばれやすいのが富士山頂だ。日本を象徴する場所で五星紅旗をはためかせる行為は、ネット上ではしばしば「よくやった」と称賛の対象になる。


また、昨年5月末、日本を旅行中だった当時36歳の中国人男性インフルエンサーが、靖国神社の石柱に放尿して落書きする動画をアップロードした事件も記憶に新しい(男性は中国国内で別件逮捕。日本国内でも、撮影に協力した25歳の別の中国人男性が逮捕されている)。

ほか、意外な"愛国系"の行動には、中国人女性が京都や奈良の街角で漢服(かんぷく)を着て練り歩く、というものもある。

漢服は漢や唐など歴史上の王朝の宮廷服装を模した服装だが、実際は今世紀に入ってから流行した"新しい伝統"だ。若者の間で「映(ば)える服」として人気で、漢民族のナショナリズムと関係が深い服装でもある。

そのため、「日本鬼子(リーベングイヅ/日本人の蔑称)に漢服を見せつけてやった」「漢服は和服より美しい」といった反日的(中国では愛国的)な字幕と共に、漢服のお散歩動画が投稿される例が多く見られる。

こうした動画撮影の大部分は、投稿者が中国のネット上でバズることを目的としている。

富士山や京都、靖国神社など、中国人が日本の象徴と考えている場所が撮影地に選ばれやすいのも、そうした理由からだ。日本の名所で"愛国はしゃぎ"をする彼らは、日本人としてはかなり不愉快な存在として映るだろう。

■基本的には行儀がいい

もっとも、中国人旅行者が多い観光地で実際に観察すると、こうした極端な行為に及ぶ人はほとんど見かけない。

今どきの日本を旅するリアルなZ世代中国人は、むしろ行儀が良くて育ちのいいタイプのほうが多いようだ。

「お客さんは9割以上が外国人で、その中の相当数が中国人なのですが、トラブルはほとんどないですね。せいぜい『アリペイ(中国の決済サービス)は使えないの?』と尋ねられるのが煩わしい程度で......」

取材にそう答えるのは、山梨県の景勝地、忍野八海(おしのはっかい)で軽食のキッチンカーを出していた日本人女性店員(22歳)だ。

忍野八海は富士山麓にある湧水池群で、澄んだ泉と富士山が組み合わさった絶景が見られる場所として、中国人からの人気も非常に高い。

現地では、小旗を持った中国人ガイドに連れられた観光団や、若い個人旅行客の姿を数多く見かけた。

春節前に前倒しで休暇を取ったという、上海出身の30代の女性ふたり組はこう話す。

「日本では6日間の滞在で、旅行費用は1人当たり2万元(約43万円)ほど。忍野八海の後は、山形県の銀山温泉に行く予定です。中国人の間では『千と千尋の神隠し』の舞台のモデルだといわれている場所なんです」

ほか、忍野八海で目立ったのが、中国国内の名門校の遠足で訪れたという富裕層の子女たちだ。例えば、浙江省(せっこうしょう)の中高一貫校から来た中学2年生の少女は、取材にこう話す。

「校内の学生の中で、海外遠足の行き先に日本を希望した30人ほどのグループで来ています。1週間の遠足参加費は3万元(約64万円)。出発前には、親に新しいGoPro(アクションカメラ)を買ってもらいました」

従来の中国人観光団のイメージと違い、Z世代旅行者たちのマナーは悪くない。昼食時、付近のコンビニ前の駐車場で食事する彼らの姿を観察したところ、数十人が出入りしていたにもかかわらず、全員が食後のゴミをちゃんと片づけていた。

とはいえ、問題がゼロというわけではない。現代中国の若者ならではの習性が、結果的にトラブルを引き起こしている例もあるからだ。

■映え写真を求める大勢の若者たち

「小紅書(シャオホンシュー/インスタグラムに似た中国のアプリ)で評判の場所だったので写真を撮りに来ました。日本で迷惑がられているなんて、まったく知りませんでしたよ」

富士河口湖町船津(ふなつ)の「ローソン河口湖駅前店」前の路上で話を聞いた中国人の男子大学生グループはそう話す。彼らは友人3人で、中国南部の深圳(しんせん)市から12日間の日本旅行に来たという。


このローソンは数年前から、背後に富士山がくっきり見えることで外国人観光客の間で聖地化した。

だが、大型車両の駐車スペースがない場所に観光バスが何台もやって来るほどの事態になったため、昨年5月、「撮影スポット」である道路向かいの歩道に視界を遮るための黒い幕が設置された。

ところが同年夏、台風被害を防ぐため黒幕は一時撤去。さらに黒幕設置について町にクレームが殺到していたことで、再設置はなされず景観が復活した。結果、いったん姿を消した外国人観光客たちも戻ってくることになった。

現在、店舗の周囲には「(横断歩道以外で)道路を渡らないで」と書かれた英語の看板が大量に設置され、少し異様な光景となっている。


そのおかげか、道路横断やゴミのポイ捨てのような明確なマナー違反は見られないものの、かつて黒幕が設置された場所に、多いときで20人近くの若者が集まっていた。

現場は幅の狭い普通の歩道で、地域の歩行者を完全に妨害している。ローソンの駐車場内でも撮影ポーズを取る人が大勢おり、私自身もクルマをバックする際に彼らと接触しそうになった。ちょっと危険だ。

近年、中国の若者の間では、SNSで話題の撮影スポットを巡る「打卡(ダァカァ)」と呼ばれる旅行スタイルが流行中だ。タイムカードに打刻するように駆け足で「映え写真」を撮り続けるのが特徴である。

映える特定のスポットには、こうした打卡旅行者たちが集中する。結果、観光公害につながってしまうのだ。

■悪気はないけれど......

日本の習慣を知らないことで、中国のZ世代が悲惨な事故に巻き込まれた例もある。例えば今年1月9日、神戸市垂水区にある山陽電鉄の踏切内で、旅行者とみられる23歳と24歳の中国人女性が電車にはねられて亡くなった事故だ。

彼女らはなぜか踏切内の遮断機の手前に立っていたことで事故に遭った。現場には付近のアウトレットモールで購入したらしき商品が散乱していたという。

事故が起きた踏切は、遮断機を出てすぐに国道が線路と並行して走っており、地域でも危険視されていたという。ただ、女性らが踏切内で待っていたのは、おそらく別の理由もあった可能性が高い。

なぜなら現在、中国の大都市では踏切がほとんど見られないからだ。現地の近郊鉄道は基本的に地下鉄であり、長距離鉄道の線路が一般の道路と交差する場合も、大部分が高架になっている。

中国が豊かになってから生まれ育ち、日本に個人旅行に来るような若者(多くは大都市出身者)の場合、そもそも自国内で踏切を歩いて渡った体験がほとんどなかった可能性があるのだ。

ほか、近年は日本でレンタカーを運転する中国人旅行者の事故も増えている。自国にはない日本の交通ルールを理解していなかったり(例えば中国は右側通行なので「右折信号」が存在しない)、飲酒運転のように本国ではタブー意識が薄い行為を日本でもやってしまったりすることが一因だろう。

行儀が良くても、悪気なく騒動を起こしている中国のZ世代旅行者。彼らはもうすぐ、春節休みで大挙して日本にやって来ることとなる――。

取材・文・撮影/安田峰俊

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  • 捕まえて豚箱に入れろよ。甘やかしても馬鹿にはわからない。馬鹿は痛い目に合わないと理解しねーんだよ。
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