事故や事件、自殺など、さまざまな事情で人が死亡した現場となった物件は「事故物件」と呼ばれます。これらの物件を売買や賃貸契約する際には、契約前にその事実を告知する義務があります。
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多くの買主や借り手は、安心して過ごせる場所を求めるため、心理的な抵抗感を抱かない環境を重視するのが一般的です。このため、事故物件は相場より約2割ほど安く、殺人事件が発生したなど理由によっては半額近くに設定されるケースもあります。
「事故物件購入」をめぐっては、家族で意見が分かれることも珍しくありません。
「これなら家が買える」乗り気の夫にびっくり
関東在住のAさん(40代、パート)が、夫から「マイホームを購入しよう」と提案されたのは突然のことでした。
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もともと戸建てに憧れはあったものの、夫の転勤の可能性や、子どもの習い事や車関連の出費が重なり、なんとなく家を買うのは難しいと考えていたAさん。
そんな中、ある日夫が帰宅するなり「これなら家が買える!」と提案してきたのは、なんと「事故物件」でした。
夫の会社の先輩社員の親戚が小さな不動産会社を経営しており、そこで事故物件の情報を知ったとのこと。その物件とは、ひとり暮らしの高齢男性が自宅で亡くなり、夏場にも関わらず長期間発見されなかった家でした。
通常はいわゆる「孤独死」のあった物件というだけでは事故物件扱いにならないものの、放置期間が長くなり、通常の清掃では対処しきれないようなケースでは「事故物件」として扱われることがあります(※国土交通省ガイドラインより)。
「子どもはだいぶ昔に大学進学で独立して、その後奥さんが早くなくなってお爺さんがずっとひとり暮らしをしていたんだけど、元気だったのに突然倒れちゃったみたいでね。それまで特に介護も必要なかったし、倒れたことに誰も気がつかないままになってたみたいで…」
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お子さんとしては元々戻るつもりもなかった実家。家をそのままにしておくのも心情的に辛いため、できるだけ早く買い手を探してほしいのだそう。
「しかも、そういうことがあったからご近所に売ることをあまり広めたくなくて、できるだけ広告を出さずに買い手を探してほしいってことでね、売り急いでいるから、あの立地ではなかなか出てこない価格の物件なんだって!興味あるでしょ?その場で内見したいって連絡してもらったよ!!」
急な話にAさんはビックリ。
「そりゃお得かもしれないけど、やっぱりちょっとコワイというか気になるというか…。住んでから変に意識しちゃうかもしれないし、安く買えるってことは自分たちが将来売るときも安くしか売れない可能性があるよね?」と反対しましたが、「買う買わないは別として、一度見に行こう!」と夫に説得されてしまいました。
「気持ちの問題」と割り切れるか
物件は専門の清掃業者による「特殊清掃」がすでに済んでおり、実際に内見した際の印象は、思っていた以上に「普通」でした。それでも心理的な抵抗を拭えないAさんに対し、不動産会社の担当者はこう話しました。
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「ご不安ですよね、でもですね、私のところでも年に何件か出るんですけどね…事故物件。こういうお年寄りの一人暮らし今は多いですから、仕方ないんです。普通です」
「今の時代、高齢者の孤独死は珍しくありませんし、それが理由で安くなるならお得ですよ。むしろ『ピンピンコロリ』で、亡くなる直前まで元気に過ごせた家とも言えませんか? 結構なことだと思いますけどねえ…。殺人事件のような申告なケースでは、抵抗感強くなるのわかりますけど、こちらは違いますからね」
この言葉に「確かに…」と納得してしまったAさん。結局、不動産会社から紹介してもらった神主さんにお祓いを依頼し、事故があった部屋だけ床や壁紙をリフォームして、購入を決断することになったそうです。
「結局『気持ちの問題』なんですよね。不動産屋さんの説得にはつい納得しちゃいました」とAさんは振り返ります。
「引っ越してみて、これまで特に怖い思いをしたこともないですし、今では買ってよかったかなって思っています。でも、『気持ちの問題』だからこそ、納得しないで買うのはやめた方がいいとも思いますね。私は納得しちゃいましたけど」
確かに“受け取り方”に大きな個人差があることだけに、そこがいちばんのネックになるのかもしれませんね。
(まいどなニュース特約・中瀬 えみ)