切れない包丁の方がいい!料理家・有元葉子さんが教えるパスタ作りのコツ

1

2025年01月31日 19:00  クックパッドニュース

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

クックパッドニュース

写真

クックパッドのポッドキャスト番組「ぼくらはみんな食べている」。食や料理に熱い思いを持ち活躍するゲストを迎え、さまざまな話を語ります。クックパッド初代編集長の小竹貴子がパーソナリティを務めます。今回は、料理家の有元葉子さんがゲストの後編です。

野菜が主役のパスタは太い麺がおすすめ

小竹:今日はクックパッドの新オフィスで収録をしているのですが、2階にオープンキッチンがあるので、こちらで有元さんに料理を作っていただきたいと思います。

有元さん(以下、敬称略):やりましょう!

小竹:今日はどういったものを作っていただけるのでしょうか?

有元:しいたけの旨味が十分に出たソースを絡めたパスタを作ろうと思います。しいたけはものすごくパワーがあるので、細いパスタでは負けちゃうんです。

小竹:そうなのですね。

有元:一般的にはスパゲッティとかスパゲッティーニなどがありますけど、スパゲッティを使います。だから、太くて茹で時間が長いものがいいです。

小竹:今日、有元さんにおすすめいただいた「パスタ・ティレーナ」は、ちょっと別物なくらい上等そうな感じがします。

有元:このティレーナは本当においしくて、私も大好きなんですけど、作っていらっしゃる方に伺ったら、ちゃんと麦を育ててそれを粉にしてパスタにしたという畑から作ったものなんです。

小竹:お米などは割とこだわって選ぶことも多いですが、パスタでここまでこだわるのはすごいですね。

有元:あまりツルツルのパスタではなくて、外側がザラッとしているパスタのほうが絡んでおいしいから私は好きなんです。野菜のソースは太めのパスタやショートパスタなど、茹で時間がかかるパスタのほうが合います。貝とかエビとかの魚系のパスタは細いパスタが合います。

小竹:今日はしいたけなので太めのパスタですね。では早速、料理のほうをお願いします。

イタリア料理は“切れない包丁”でいい理由

有元:まずはたっぷりのお湯を沸かします。そして塩を用意しておく。この用意ができたらパスタを茹で始めます。今回は立派なしいたけなので4つに割きます。なるべく包丁は使わないでください。

小竹:それはなぜですか?

有元:手で割くと断面がギザギザになってソースが絡みやすくなるので、絶対このほうがおいしくなります。上にちょっとだけ十字の切り込み入れて、あとは手で割きます。

小竹:はい。

有元:割いた面がすごく綺麗でしょ。こういうのを見るのも楽しみで、よく見ながら目でも楽しんでいます。自然の造形ですよね。


小竹:全くこういうことをしたことがありませんでした(笑)。

有元:和食の場合は包丁を研いで綺麗にやりますけど、イタリア料理は包丁が切れなくていいんです。みなさん切れない包丁で無理やり切っています。

小竹:それは文化的なもの?

有元:なぜかなと思っていたのですが、包丁を研いでスパッと切るよりも切れない包丁で食材の断面がギザギザになったほうがおいしくなるということに気づきました。

小竹:私も包丁は毎日研いだほうがいいのかと思っていました。

有元:おばちゃんたちがまな板も使わずに鍋の上でギコギコやっている。全然ちゃんと切れていないんですけど、そのほうがおいしいということがわかってすごくびっくりしました。

小竹:お湯が沸いてきました。

有元:もう少しかな。沸いた状態から塩を入れてパスタも入れて、パスタを茹でている間にソースを作ってしまうのが段取りがいいです。だから、パスタは茹でている時間が調理時間と考えるといいと思います。

小竹:パスタは何gくらい使いますか?

有元:250gですかね。しいたけはしぼんで小さくなるので、ちょっと多いくらいでちょうどいいです。パスタは塩気がある食材でない場合は、パスタに味をつけるために塩を多めに入れます。

小竹:うん。しっかりしょっぱいです。

有元:パスタは入れたらそのままにしないで、ひっつかないためにすぐに混ぜます。生クリームの場合はちょっと玉ねぎを入れる。生クリームがない場合は玉ねぎではなくてにんにくのほうがいいです。

小竹:有元さんは普段からパスタをよく召し上がるのですか?

有元:スタッフのランチとかでよく作りますね。イタリアの場合はトマトのパスタが一般的で、お昼は家でも会社の社食でもほとんどトマトパスタです。どこに行っても当たり前のように出てきます。毎日それです。

小竹:では次に、玉ねぎ2分の1個を切ります。

有元:みじん切りにするときに、このまな板は四角くて小さいから、くるっと回して切るとすごく楽です。


有元さんプロデュース「ラバーゼ」のまな板

小竹:これは有元さんがプロデュースしたラバーゼのまな板ですが、2つを引っ付けることもできますよね。プロデュースするにあたり、どういったことをリクエストしたのですか?

有元:10数種類の木で全く同じものを作ってもらって2年くらい使ったんです。何の木なのかわからない状態で使ってみて、一番使いやすいものを選びました。そしたら結果、ゴムの木でした。刃当たりとか乾きの速さとかで選んだのですが、ゴムの木でびっくりしました。

愛用するオリーブオイルとの出会い


小竹:今オリーブオイルを入れましたが、オリーブオイルもいろいろと食べて選んだのですか?

有元:そうですね。イタリアはオリーブオイルの世界ですので。でも、このマルフーガのオリーブオイルに出会って本当に良かったです。

小竹:どういった出会いだったのですか?

有元:イタリアに住み始めてまだ間もない頃、まだイタリア語学校に通っていた頃に、近所で買ったオリーブオイルがなくなって、隣の隣くらいの山のてっぺんにある街に買いに行ったんです。

小竹:うんうん。

有元:どんな小さな村でも1軒くらいはエノテカ(地元のワインを中心に扱うお店)があるので、そこでオリーブオイルを見ていたら、すごく素敵なボトルがあったので買ったんです。それがすごくおいしかったので、またほしいと思って、ボトルに書いてある住所のところまで行って、「このオイルを日本に送ってください」ってお願いしたんです。

小竹:大きなオリーブ農園とかだったのですか?

有元:いえいえ、小さなところです。山の中腹にあるお家だったのですが、200年くらいの歴史があるお家なんです。そこから始まったのがこのマルフーガとのお付き合いです。

小竹:そうなのですね。

有元:ソースはあまりかき混ぜないほうがいいです。こういったソース作るとき、イタリアでは弱火でやります。点いているのかなと思うくらいに弱い火でやっている。そもそも火そのものが弱い。だから、いろいろなものがちょうどうまくできている気がします。

小竹:なるほど。

有元:ここに生クリームを入れてちょっと煮詰めます。そうすると、しいたけの味がクリームに全部移る。そこにパスタを入れて混ぜ合わせます。あと、セージを入れるとセージの香りがしいたけとすごくよく合います。

小竹:カレー研究家の水野仁輔さんにゲストに来ていただいたときに、有元さんにカレーリーフをプレゼントしたことがあると仰っていました。

有元:そうなんです。うちですごく大きくなって、子どもたちがまたたくさん増えて、それがあちこちに行っています。すごくいいですよ、あれが1本あると。

小竹:どういう料理に使っているのですか?

有元:カレーをよく作る方だったら、スパイスを入れるときにカレーリーフを入れたらいいと思いますよ。

小竹:たしかにそうですね。

有元:今日の料理のように生クリームやチーズを使う場合は、ケチケチ使わないことが大切です。ケチケチ使うのなら全く使わないパスタにしたほうがいいです。アンチョビとかに方向を変えちゃったほうがいいです。

小竹:クリームとチーズはたっぷりですね。

有元:パスタはソースとよく和える。上にちょろっと乗っけるのではなく、しっかりと和えることが大事です。

小竹:有元さんの料理は盛り付けがいつも美しいですが、何かコツはありますか?

有元:あまり技巧的にしないで自然なほうがいいです。あまりいじくらない。いじくるとだんだん変になってくるんですよね。

地震のときに味わった忘れられないパスタ


小竹:では、有元さんの作ったパスタをいただこうと思います。

有元:どうぞどうぞ。

小竹:チーズとクリームとキノコが爆発という感じです。クリームとチーズをたっぷり使うことの意味がわかりました。しいたけがこんなにクリームとチーズと合うとは知りませんでした。パスタとなると、しめじやエリンギが中心だったので。

有元:しいたけの味がすごく出るんです。エリンギもおいしいけど、しいたけの味は特別濃厚なので、今日はクリーム系にしたけど、しいたけとトマトでもいいです。クリームを入れないでトマトソースを入れてもいいし、何もなしでも大丈夫。

小竹:普通にオイルで?

有元:オイルとしいたけとお肉だけでも大丈夫です。唐辛子を入れてもいいですしね。

小竹:有元さんには忘れられないパスタの思い出があると聞きました。

有元:2016年にイタリア中部地震がありました。日本の地震も怖いですが、イタリアの地震もすごく怖い。家の造りが石を積み重ねただけの中世の時代のものなので、中に何も入っていない積み木のような家なんです。だから、レンガや石が自分の頭の上にゴロゴロと崩れてくる。

小竹:それは怖いですね。

有元:地震が起きたら、夜でも家から出ないといけないので、コートを着てバッグを持って靴を履いて寝たりしていました。

小竹:そうなりますよね。

有元:そんな中、お隣さんが「こんなときに1人で家にいちゃいけない。お昼を食べにおいで」って言ってくれたので食べに行ったんです。そしたら、親戚や隣近所の人たちがみんなそこに集まっていて。

小竹:うんうん。

有元:隣のおばさんが大きな寸胴鍋でお肉が入ったトマトソースを煮込んでくれていて、さらにパスタを茹でて「今日はこれだけよ。地震のときはこれを作るの」って。パスタも肉料理も食べられて、あとはサラダだけあればいいわねみたいな感じでした。

小竹:豪華ですよね。

有元:なるほどと思って。あと、「1人でいちゃいけないよ」というその気持ちがすごくうれしくて、その味はやっぱり覚えています。

小竹:料理があることで人と繋がれるのですね。

有元:どこかから買ってくるわけではなく、家にあるパスタとトマトの缶詰や瓶詰、お肉の塊は冷凍になっていればそれを出してきて作るという感じもいいですよね。

小竹:イタリアの方はいろいろと保存をしている?

有元:そうですね。保存するのが上手です。それも買ってきて保存するのではなく、トマトならトマトソースを自分で作って保存しています。マルメラータというジャムから、酢漬けのアスパラガスとか。

小竹:自宅で作っているのですね。

有元:アスパラガスはどこの家にもありますね。太いアスパラガスではなくて、野生のアスパラガスなので細くてすごくおいしい。それをビネガーの中に漬けていて一年中食べられるんです。

小竹:日本のように24時間スーパーが近くにあるという環境ではないからこそ、みなさん工夫をして料理をしているのですね。

有元:それが昔からの当たり前にやることだから続いているんですよね。ファーストフードを食べる人ももちろんいますけど、家ではちゃんと作るということが連連と続いているのがイタリアの田舎の良さですね。

小竹:今も変わらないですか?

有元:変わらないです。お昼にちょっと路地を歩くと、野菜スープを取っている香りがふわっとしてくる。野菜スープは常にあるんです。常にガス台の上に鍋があって、そこに野菜が入っていて、ただ火をつけているだけなんですけど、それが全ての料理に使われている。残った野菜でもいいので、私たちもすぐにマネできますし、体にもいいですよ。

「おせち料理」を作る上で大変なこと


小竹:有元さんは毎年家族総出でおせち料理を作られるそうですが、どのように準備をされるのですか?

有元:まずは材料集めです。材料集めが一番大事で、それは12月に入ったらすぐにあちこちに連絡を取って集め始めます。

小竹:大変じゃないですか?

有元:特に大変なのは海産物です。今年心配なのは鯖が手に入るかということ。鯖はどのお魚屋さんに行ってもあったと思うけど、今はないんです。しめ鯖にできるような鯖がない。

小竹:私は石川県出身で、毎年冬になるとカブと鯖を挟んだかぶら寿司というものを食べるのですが、今年はカブも鯖も手に入りにくいみたいです。

有元:食材が本当に大変ですね。手に入れるというより、作る方がすごく難儀をしていらっしゃいますよね。去年はまだあったけど今年はない。その差が激しいので、来年はもっとないわけですから、作れなくなってしまいますよね。

小竹:ご家族でおせちを作って、お正月はゆっくり過ごされる感じですか?

有元:そうですね。おせちはもちろん買ってもいいと思いますけど、1品でも何か手作りされたらね。1品ではなくてせいぜい3品くらいは作られたらいいかなと思います。

小竹:何がおすすめですか?

有元:伊達巻はうまくいったらすごくうれしいですよ。きちんと手順を踏めば誰でも作れると思います。

小竹:最後に、今後やってみたいことを教えてください。

有元:もっと自分の生活を見つめたい。外にいかずに、もっと内に内にという感じです。そういう時間がほしいですね。外に外に発信していることが多かったので、もう一度戻るというかね。

小竹:でも、発信もされていきますよね?

有元:そうですね。ちょびっとずつはやりたいかな(笑)。

(TEXT:山田周平)

ご視聴はこちらから


🎵Spotify
https://hubs.li/Q02qmsmm0
🎵Amazon Music
https://hubs.li/Q02qmslg0
🎵Apple Podcast
http://hubs.li/Q02qmztw0

【ゲスト】

第19回・第20回(12月6日・20日配信) 有元葉子さん


VAN Jacket企画部、雑誌mc Sister編集、専業主婦を経て、料理家に。料理教室を主宰し、台所道具のシリーズ「la base(ラバーゼ)」を新潟県燕市のメーカーと共同開発、同ブランドのディレクターを務める。またYOKO ARIMOTOブランドの限定生産キッチンウェア開発に携わる。レシピ本のみならず、食を通じて暮らしや生き方を見つめるエッセイなど、著書は100冊以上に及ぶ。東京、長野、イタリアに拠点を持つ。

公式サイト: https://www.arimotoyoko.com/
Instagram: @arimotoyokocom
Instagram: @chantotabeteru

【パーソナリティ】 

クックパッド株式会社 小竹 貴子


クックパッド社員/初代編集長/料理愛好家。 趣味は料理🍳仕事も料理。著書『ちょっとの丸暗記で外食レベルのごはんになる』『時間があっても、ごはん作りはしんどい』(日経BP社)など。

X: @takakodeli
Instagram: @takakodeli

もっと大きな画像が見たい・画像が表示されない 場合はこちら

    ランキングライフスタイル

    前日のランキングへ

    ニュース設定