子どもが遊べる博物館はもうできません―。SNSに悲痛な思いを綴ったのは、新潟県にある「出雲崎レトロミュージアム」。昭和レトロなゲーム機やブリキのおもちゃ、フィギュアなど1万点超を展示し、実際に触って遊べる施設だ。「新潟の冬は厳しくて、子どもが遊べる場所が少ないんです。楽しんでもらいたいと思って始めたんですが…」と館長。2023年12月にオープンし、1年弱で閉館に追い込まれた事情とは―。
一部の来館者におもちゃを壊されて
館長は、岐阜県の「飛騨高山レトロミュージアム」を運営していた中野賢一さん(54)。大腸がんや難病のクローン病を患い、妻の実家がある新潟県に移住。治療を続けながらも、大好きな子どもに遊びの場を提供したいとの思いから、私財で出雲崎レトロミュージアムを始めた。「30年以上かけて集めてきました。4トントラックで5台分です」
マナーを守って楽しんでくれる人たちが多い中、一部の来館者におもちゃを壊され、頭を悩ませてきた。「幼児が多いですね。入館前に保護者に『子どもに目を離さないようにしてください』と案内しているんですが。保護者が懐かしいパチンコやゲームに夢中になっているうちに壊しちゃって」と説明する。
おもちゃを投げたり、レコードの針で円盤をガシガシとされたり、ゲーム機のボタンがなくなったり…。連日、壊されたおもちゃは中野さんが修理しているが、生産が終了して部品がないものばかりで、修理不能になることも多いという。
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閉館の引き金となったのは、昨年12月。小学生の男児と20代らしき父親が訪れた際、親子で言い合いが始まり、男児が机の上のおもちゃをバサーッと落とした。「注意すると、親から『だったら、触れるような状態にして出しとくんじゃねえよ』と言われたんです。心が完全に折れましたね」。今年2月3日に閉館を決めた。
「子どもは悪くない。こちらの責任」
ただ、中野さんは子どもを一切、責めていない。「物が壊れていくのが耐えられなかっただけで、子どもは悪くないと思っています。幼い子どもが壊すのは当たり前。触って遊べる仕組みにしたのは私で、館長である私に責任があると思っています」と話す。一方で、閉館を発表してからは、常連の子どもから直筆の手紙をもらうなど、この1年で幸せな出会いもたくさんあったと感じているという。
閉館後は、新たに昭和の博物館を開く予定。「昭和の街並みを作り、懐かしさを楽しんでもらいたい。仕組みを考えて、子供も入館できるような仕組みを考えていきたいです」
(まいどなニュース・山脇 未菜美)
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