村上宗隆、岡本和真、佐藤輝明はメジャーで通用するのか? 名コーチ・伊勢孝夫が課したハードルは「日本で45本塁打、100打点」

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2025年02月05日 07:30  webスポルティーバ

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 プロ野球12球団のキャンプがスタートし、2025年シーズンも目前に迫ってきた。今シーズンは開幕前にドジャースとカブスのMLB公式戦が東京で開催されるなど、話題に事欠かない。

 また日本でプレーする選手たちも、村上宗隆(ヤクルト)が今オフのメジャー挑戦を明言しており、岡本和真(巨人)もメジャー移籍の可能性が報じられている。さらに、佐藤輝明(阪神)も具体的な時期こそ明かしていないが、昨年オフの契約更改時にメジャーに挑戦したいと訴えた。

 はたして、彼らはメジャーで真価を発揮できるのか。そのために必要なポイントとは何か。名コーチとして名を馳せ、多くの打者を育ててきた伊勢孝夫氏に解説してもらった。

【メジャーで成功するカギはスピード】

 大谷翔平は例外としても、ダルビッシュ有、菊池雄星、前田健太らの活躍により、日本のトップレベルの投手がメジャーで十分通用することは証明されている。では、打者はどうか。

 イチローや松井秀喜の成功例はあるが、特に長距離打者に関しては、日本で40本塁打を打ってもメジャーでは20本がせいぜいというのが現実だ。メジャーには、アメリカだけでなく、ドミニカやベネズエラ、キューバといった中南米から屈強な選手たちが数多く集まり、パワー勝負だけでは歯が立たない世界である。

 そんななかで、村上、岡本、サトテル(佐藤輝明)がどこまで通用するのか、多くのファンが関心を寄せているのではないだろうか。

 この流れも"大谷効果"と言えるのかもしれない。2023年のWBC、そして昨シーズンの圧倒的な活躍を見て、同じスラッガータイプの選手たちは強い刺激を受けたはずだ。「大谷にできるなら、オレだって」と思った選手もいるだろう。

 しかし、勘違いしてはいけない。メジャーの投手が投げるボールは、本当に厳しいものばかりだ。それに対応するには、並外れたスイングスピードがなければ、惨めな思いをして帰国することになる。

 日本人打者がメジャーで成功するためのポイント──それは"スピード"だと私は考えている。メジャーと言えばパワーのイメージが強いが、私が見て感じるのは、どれだけ力があってもスピードがなければ勝負にならないということだ。そのスピードとは、打席でのスイングスピードはもちろん、走者としての走力も含まれる。

【メジャーに必要な心技体】

 この3人のなかで、私が最も注目しているのはサトテルだ。彼は昨シーズン後半から、前足(右足)をすり足気味に変えている。これはメジャー仕様のスイング、つまり「メジャー挑戦への準備を始めたのではないか」と思わせる変化だった。

 プロに入りたての大谷もそうだったが、日本人打者は足を上げてタイミングを取る者が多い。少年野球でも、足を上げるフォームが一般的だ。しかし、メジャーでは160キロ近い速球や、150キロ台のツーシーム、鋭く曲がる変化球に対応しなければならない。フレディ・フリーマン(ドジャース)のようなメジャーの一流打者ですら、細かく鋭い変化球に対応するためにノーステップに近いフォームを採用している。

 すり足で始動し、タイミングを取り、日本以上に速い投手のボールをできるだけ手元まで引きつけて打つ。ステップしない分、上半身の力が重要になるが、サトテルなら十分対応できるだろう。あとはスイングスピードをどこまで高められるかだ。

 ただし、闇雲に筋肉をつければよいわけではない。ダンベルやバーベルで鍛えた筋肉を、スイングに適した形に変えていくことが重要だ。それが春季キャンプでの注目ポイントにもなる。

 日本で40本塁打打てても、メジャーでは20本程度しか打てないという現状を打破するには、行ってからでは遅い。シーズン中から"メジャー仕様"のスイングスピードに高めていく必要がある。岡本は甘い変化球をうまく捉えて右中間スタンドに放り込む技術があるが、メジャーではその多くが外野フライに終わる可能性が高い。

 鍛えるのは体だけではない。メジャーの速球や変化球に対応するには、動体視力を鍛える必要がある。そのためには"慣れ"が必要になってくるが、日本でプレーしている限り、メジャー級の球を体感する機会は限られる。現時点でそのレベルの球を投げる投手は、中日から巨人に移籍したライデル・マルティネスくらいだろうか。

 それにメジャーでは、走力も求められる。村上や岡本は、メジャー基準で「走れる」と言えるほどのスピードはない。サトテルにしても走れないわけではないが、盗塁数を重ねていくような選手ではない。近年のメジャーを見ていると、40本塁打以上打てる選手は別として、「打つ・守る・走る」が揃ってはじめて高い評価を得られる。ひとつでも欠けると、レギュラー獲得は厳しくなる。

 また、メジャーでプレーするにはタフなメンタルも必要になる。村上は昨シーズン33本塁打を放ったが、相手バッテリーに勝負を避けられたことに焦り、フォームを崩した時期があった。サトテルにしても、追い込まれると無理にバットを振り回し三振が増えた。どれだけ自分を律することができるのか、そこも重要なポイントになるだろう。

 海を渡れば言葉の壁、移動の大変さ、食事の管理など、プレー以外の部分でも気を遣わなくてはならない。精神的な強さがよりいっそう求められるのは言うまでもない。

 いずれにしても、日本で安定した成績を残さないことにはメジャー挑戦は厳しい。メジャーでレギュラーとしてプレーしたいのなら、日本で45本塁打、100打点がひとつの基準になるだろう。

 課題は多く、一朝一夕で克服できるものではない。夢を実現するには、日々の努力と工夫が必要だ。彼らが今シーズン、どんな思いでプレーし、どんな目標を立てるのか注目したい。

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