サントリー「山崎55年」が2億円で販売は妥当?国産ウイスキー高騰のカラクリ

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2025年02月09日 16:30  Business Journal

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サントリー「山崎55年」(同社の公式サイトより)

 


 あるECサイトでサントリーのシングルモルトウイスキー「山崎55年」「山崎50年」の2本セットが2億円で販売されていることが話題を呼んでいる。近年では国産高級ウイスキーが高値で取引され、数年前には海外のオークションで「山崎55年」に約8000万円という値がつけられる事例も出るほど。なぜ、一部の国産ウイスキーの価格が高騰しているのか。また、その価格に見合うほどの味なのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。


 現在の相場はどうなっているのか。酒の買取・販売専門店「キングラムリカー」の事業責任者・本村翔太氏はいう。


「2010年代の半ば頃から一部の国産高級ウイスキーの値上がりが始まり、2021〜22年あたりがピークで、『山崎25年』が130万円くらい、『響30年』が80万円くらいまで上がりましたが、24年頃から徐々に値下がりが始まり、現在ではどちらも20〜30万円ほど下がっています。サントリーが24年4月にウイスキーの値上げを行い、『山崎12年』が1万円から1万5000円になったりして、さらに相場全体が上がっていくのかなという気配もありましたが、その頃から逆に下降トレンドに入っていきました。値上がりの要因だった中国とベトナムの業者や富裕層の大量買いが、景気低迷で弱まったことが背景にあるとみられています」


 国産ウイスキーとしては、サントリー「山崎」「響」「白州」、ニッカ「竹鶴」「余市」「宮城峡」、秩父「イチローズモルト」などが知られているが、なかでも知名度としては「山崎」が群を抜いているといってよい。希望小売価格(税別)は、「山崎25年」は36万円、「山崎12年」は1万5000円、「山崎」は7000円。ちなみに同じサントリーの「響30年」「白州25年」は36万円、「白州12年」は1万5000円となっているが、希望小売価格でスーパー、百貨店などの一般的な小売店や酒専門店で購入することは非常に困難である。


投機商品化して異常な値上がり

 サントリー最高酒齢である「山崎55年」は、日本最古のモルトウイスキー蒸溜所である山崎蒸溜所で、1964年以前に蒸溜・貯蔵した酒齢55年を超える長期熟成モルト原酒のみを使用し、1964年蒸溜のホワイトオーク樽原酒や、1960年蒸溜のミズナラ樽原酒など、熟成のピークを迎えた原酒を厳選しブレンドした逸品。2020年に100本限定で抽選販売された際の価格は300万円だった。


 では、「山崎55年」「山崎50年」の2本セットが2億円という値づけは適正といえるのか。


「現在ネット上で取引されている『55年』の相場観は概ね高くて5000〜6000万円のようなので、結論からいうと、相場的には非常に高額だといってよいのではないでしょうか。ここ数年は希少な高級ウイスキーが投機商品化し、異常な値上がりをみせており、今回はその最たる例といえるかもしれません。『55年』『50年』が2本セットで買えるという点は非常に魅力的ではありますが、今後この商品が品切れになるのかどうかで、その価格が適正だったのか判断することができるでしょう。値下げされる可能性も0ではないように思います。」(本村氏)


 気になるのは、『山崎55年』のように数千万円もの値が付くウイスキーというのは、その価格に見合うほど美味しいのかどうかという点だ。


「まず前提として、1本数千万円とか数百万円といった値がつくのは、投機目的の取引なので、メーカーの希望小売価格を大幅に上回っているわけです。一般的な『山崎』は7000円ですが、仮に『山崎55年』を7000万円で購入したとして、1万倍も美味しいということはあり得ないでしょう。一方、『山崎55年』の定価自体は300万円なので、そこに『山崎』の歴史やロマンを感じ、唯一無二の味を知りたくて、300万円ならぜひ飲んでみたいと感じるコアな愛好家の方もいらっしゃるかもしれません。また、『山崎25年』の希望小売価格は36万円と非常に高価格ですが、飲んでみると非常に美味しいのは確かであり、小売り希望価格で飲めるのであれば、その価値は十分にあると感じている方は多くいるでしょう。サントリーさんは、そのあたりの品質と値付けのバランスが絶妙にうまいと思います。以前よりは値上がりしましたが蒸溜所の見学ツアーで飲めることもあるので、そういう方法でより低コストで飲むという選択肢もあるでしょう」(本村氏)


“普段使い”にお薦めのウイスキー

 最後に、プロの目線で、味が良くて手頃な価格で買えるコスパが良い“普段使い”にお薦めのウイスキーを本村氏に選んでもらった。


「スコッチウイスキーなら『ホワイト&マッカイ』がお薦めです。1500円くらいで結構美味しいので、もし専門店などで見かけたら試してみてほしいです。そのほかには『グレンリベット12年』や、ちょっとマニアックなところだと『シングルトン オブ ダフタウン12年』。ともに3000〜4000円くらいで買えます。スーパーなどで手に入りやすいところでは『ジェムソン』もお薦めです。2000円くらいで、ジンジャーエールなどで割ると美味しいです」


(文=Business Journal編集部、協力=本村翔太/キングラムリカー事業責任者)



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