骨髄バンクのドナー候補に…「仕事どうしよう?」 勤務先に相談した経験者「制度をまったく認識しておらず」

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2025年02月18日 07:00  まいどなニュース

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ドナーに登録してから…仕事を休むことに。勤務先の対応は? 写真はイメージです(Paylessimages/stock.adobe.com)

骨髄ドナーに登録し、提供のお願いがSMSで届いた…「はたして仕事を休めるのか」と不安になった登録者。上司に仕事を休むなと言われたり、有給の使用をすることになったり…という声があるなど、社会からの理解があるとはまだまだ言えない現状…はたしてどうなったのでしょうか?

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今回、骨髄ドナーとしての経験を教えてくれたのは、沖縄科学技術大学院大学(以下OIST)の研究員・森山陽介さん。半休の際は、有給などを使用していたそうですが、連続して5日間休むこととなり、人事に相談。その後について話を伺いました。

ドナーになるために必要だった日数は?

森山さんがドナー提供者になったのは40代前半の頃。ドナー提供の候補者になると、2〜4カ月間で平日に8〜10日間程休みが必要とされます。森山さんは、コーディネーターとの電話ミーティングで半日、ドナー候補として病院での確認検査で半日、親族(妻)を伴って最終同意のために半日、提供の21日前までの術前健診で1日、末梢血幹細胞の提供のための入院で5日間、そして術後1カ月の健診で半日を要しました。

最終候補になるまでのミーティングや検査などは有給休暇を利用しましたが、入院により数日休む必要があるため、勤務先であるOISTの人事部に相談。

そこで初めて知ったのが、ドナーのための特別休暇制度。2011年の開学時から設けられていたこの制度は、教職員が利用できますが、「ドナー提供者として休む際、就業規則にある特別休暇として適用できるか、問い合わせるまで認識していませんでした」。

過去に医科大学で働いていた頃にもドナー候補者になりましたが、勤務先の医科大学にはドナー休暇制度が設けられていませんでした。最終的には候補から外れましたが、「その時の確認検査などは、勤務先の附属病院で行うことができたこともあり、有給は使ってないように記憶しております」。そういった経緯から、OISTにもドナー休暇制度はないだろうと思っていたのです。

「骨髄ドナーとして休暇が取れる組織ということに驚きつつも、最終候補者としての採取前健康診断(提供の21日前までに1日を要して実施する検査)と提供のための入院に、この休暇制度を利用することにしました」。

「ドナーになれる人が、できるタイミングで」

ドナー提供には、全身麻酔下で腸骨から注射器で骨髄液ごと造血幹細胞を吸引する「骨髄提供」と、白血球を増やす薬を予め注射し、末梢血中に造血幹細胞が増えてきたところで血液から造血幹細胞を採取する「末梢血幹細胞提供」があります。森山さんが行ったのは、末梢血幹細胞提供。特に痛みを感じることはなく、病院食もしっかり食べられたそうです。入院中はパソコンを持ち込んで仕事や勉強、読書も。

「特に身体的な辛さはなかったと記憶していますが、あえて言うなら、末梢血幹細胞の採取は3〜6時間かかる長い献血のようなものですので、尿意を我慢するのが大変でした。心理的には、当時6歳と3歳の子供を妻に一人で世話させることになるのが心苦しいとは感じました」と振り返ります。

過去にもリスクの説明を何度も受けたことから、細心の注意を払って骨髄ドナー制度を運営されていることを感じたそうですが、リスクはあるが非常に低い、という説明については「リスクはある」と捉える人がいるだろうと思ったそうです。

森山さん自身は、献血の延長線上にある、いささかの善行という程度の意識で骨髄バンクのドナーの提供に応じました。「レシピエント(提供を受ける患者)が寛解していたらいいなとは思いますが、そうでないこともあるでしょう。そうだとしても提供行為が無駄になったかもしれないと考えることはないです。ドナーとして提供した前後で、特に気持ちの変化はないように思っています。肉体的に大した負担ではなかったからそう考えることができるのだと思います」。

ドナー登録をしたものの、適合者になったときに提供できるかわからないと考え、登録に二の足を踏む人もいるかもしれませんが、森山さんはこのように語ってくれました。

「仕事や家庭の状況により提供条件に合致しなければドナー依頼は断ることもできます。それはドナー候補の権利です。ドナーになれる人が、できるタイミングで提供したらいいのだと思います。

一方でドナー登録者数が少なければ白血病患者は回復・寛解の可能性にたどり着くこともできないわけです。

いつかドナー提供の依頼が来たそのときに、職場と家庭の状況がなんとかなるようであれば応じることを考えたらいいのではないでしょうか。宝くじは買わないと当たりませんが、骨髄ドナーも登録していないといささかの善行もできません。後で迷えばよいのではないかと思っています」

そのように迷いが生じた際や、健康状態や家族・仕事の状況が変わったことで一時的に提供できない場合は、その期間中は患者さんと適合しないように登録状態を「保留」することもできます。

◇ ◇

骨髄・末梢血幹細胞提供は、健康な人が、血を造るもとになる細胞(造血幹細胞)を白血病など血液の病気を発症した人に移植し、全身の血液を入れ替えて病気を治癒させる治療方法・骨髄移植。公益財団法人日本骨髄バンク(以下日本骨髄バンク)がドナー提供の登録を募り、患者と適合するドナーをマッチングしています。

ドナー候補者になると、検査や面談、採取のための入院などで複数回の休暇が必要となることから辞退を申し出る人もいますが、会社や所属組織のドナー休暇制度を利用した人や、適合者となった社員からの働きかけで制度を導入した会社も。しかし、まだまだ導入していない企業も多く、自らの有給を利用することになるなど、提供へのハードルが高くなってしまっているようです。

日本骨髄バンクは、ドナーが安心して提供できる環境整備として、ドナー休暇制度やドナー公欠制度の導入を推進。また、「誰かのヒーローになれるって、うれしい。」とのスローガンを掲げ、さまざまなアクションで移植を待つ患者さんや提供に応じるドナーさんを応援できることをSNSで発信しています。

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・宮前 晶子)

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このニュースに関するつぶやき

  • もちろん、風俗などで不特定多数との性的接触があった人は男女、それ以外のジェンダーであっても骨髄バンクのドナーになれません。薬害エイズ問題があったので、善意があってもダメ
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