限定公開( 33 )
映画「DRAGON QUEST YOUR STORY」で、主人公「リュカ」の名前や、称号を付けて呼び掛けられる表現を無断で改変・使用されたとして「小説ドラゴンクエストV」作者の久美沙織さんが製作委員会を訴えていた裁判で、最高裁判所は2月12日、原告の請求を棄却した。久美さんが自身のXアカウントやnoteで報告した。
久美さんのnoteによると、「リュカ」という名は久美さんが小説の主人公につけたものであり、映画はそれを無断使用したという事実を、裁判所、被告側も認めたという。しかし、著作物性は認められなかった。
「強いことばにすれば、確かにパクリがあったと認められたものの、このパクリは違法とはいえない、とされたことになります」
しかし提訴したことは後悔していないという。久美さんが当初求めていた、1)「リュカ」は久美沙織の小説オリジナルであることを認め、2)無断使用を謝罪してもらいたい、という要求の半分は認められた形になる。
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それでも、名前や呼び掛け表現の著作物性を認めなかった点について裁判所が条文上の根拠となる箇所や、そうした判断に至ったロジックを示さなかったことには疑問を呈している。「双方の主張を理解した上で判断した、というより、話が噛み合っていないまま判決された、そんな感想を持ちました。これらの【論理破綻】を、とても残念に思います」。
久美さんは今後、裁判費用を募ったクラウドファンディングの残金に私財を加えて「リュカ基金」(仮称)を設立する考え。個人あるいは弱小のクリエイター集団が仕事で理不尽な目に遭った時、あるいは組織に「ノー」と言いたい時に裁判などの費用面を支援するという。
「クリエイターが『声をあげること』が、いわゆる『難しい作家』の奇異なふるまいではなく、大きな非対称性のある中で対立解消をするための当然の権利で、ごく普通の手段だと思っていただけるような世の中にしたい」(久美さん)
小説ドラゴンクエストVは、エニックス(当時)の人気ゲーム「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」を原案として久美さんが執筆し、1993年に発売した作品。その際、久美さんは主人の名前「リュカ」や公的な呼び掛け「リュケイロム・エル・ケル・グランバニア」を創作した。
一方のDRAGON QUEST YOUR STORYは、同じくドラクエVから派生した3Dアニメ映画で、2019年に公開された。主人公の名前は「リュカ・エル・ケル・グランバニア」だった。
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映画公開前にそれを知った久美さんは、クレジットでリュカの名前が小説ドラゴンクエストV由来であると明示することなどを求めたが、スクウェア・エニックスは名前には著作権がないとして拒絶。その後、久美さんはクラウドファンディングに資金を募り、映画の制作に関わるスクエニや東宝などを提訴した。
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