限定公開( 3 )
プロフィギュアスケーターの高橋大輔さん(38)がフルプロデュースするアイスショー「滑走屋」が3月に広島で再演される。
昨年2月に初演され、スピード感あふれる演出や、1公演75分とし、低価格に抑えた新機軸で話題となった。今回、2月上旬の初稽古に潜入。今年は若手スケーターたちで出演するためのオーディションを行うなど、ショーとしての完成形を誓う。フィギュアが題材の人気アニメ「メダリスト」で主役を担当し、ショーの応援団長に就任した声優の春瀬なつみとの対談で、思いを語ってもらった。【取材・構成=阿部健吾】
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2月4日、午前10時のスケートリンクに「滑走屋」文字が入ったパーカーを着込んだ選手たちが集まっていた。慣れた手はずでリンクの端にコーンを設置していく。1年前の舞台のサイズ。その記憶を呼び起こすように準備を終え、初稽古の時間が始まった。高橋さんは「今日は初参加の選手が4人いましたが、前回と同じテンションでリハーサルをスタートして。最初は一瞬戸惑ってたんですけど、対応してくれました」と笑顔で初日を振り返った。
氷上に群舞で複雑な図形を描き、世界観を作り上げていく作業。出演者は19人から26人に増え、今回はさらに複雑になるが、「前回より2段階ぐらいレベルアップさせて、完成系を見せたい」と期している。
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その中で大事にしてきたのが、才能の発掘と意識付けだ。「試合だけでは分からない」と地方大会の公式練習から足を運ぶこともあった。「この後、滑走屋をどこまでできるか分からないですけど、年数を重ねるごとに成長していくんだろうなと感じた」新戦力を加えていった。
この日の初稽古を見学した春瀬。10年バンクーバー五輪を見てフィギュアのとりこになり、いまでは現地観戦はもとより、海外のジュニア選手の動向まで気にかけている。現在はフィギュアを題材にした人気アニメ「メダリスト」で主役を担当。高橋さんとの対談では「今回、櫛田育良選手が選ばれたのがすごくうれしいです。ノービス時代に見てから、背も伸びて、どんどん大人な演技に」と目を輝かせた。
高橋さんのスカウト基準は成績に寄らない。春瀬は「全日本選手権に出場経験がない選手でも、ブロック大会で拝見して、すごく魅力的なスケートをする選手がいます。見つけられたのが財産で、すごい幸せなことだなと。踊れる実力は裏切らないと思ってるので、そこをショーで見ることができるのはすごくありがたいです」と力説する。
その上で、高橋さんは今回、「(演目の曲である)ナンバーに出るためのオーディションをします」と明かした。人数が多いからこそ、自分の魅力を貪欲に伝えてほしいと願う。「最初はそろえることも大事なんですけど、そろえた中で自分をどう見てもらうか。仲間ではありますけど、ある意味で全員ライバル」と説く。「楽しかっただけで終わらずに、『自分は見せれなかったな』『できなかったな』と思うなら、そこをどう次につなぐか」と糧にしてほしい。
実際、昨年の出演者にはスケート人生の岐路となり、現役続行や復帰を決めた者もいた。今年は集団内の競走を意識してもらうことで、より深く自分の将来、可能性を模索してほしい。
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「スケートしててよかった」。去年の公演を完走直後に、そんな言葉が聞こえてきた。高橋さんは「みんなで作り上げたものがこんなにお客さんに喜んでもらえた事で、すごいやりがいを感じて、見せる喜びをあらためて感じたと思う。成績に繋がる、繋がらない関係なく、スケートに向き合う気持ちの1つのプラスにはなったのではないかな」と目的の1つを果たしたと感じた。それは今年も−。
「表現に貪欲になっていけばいくほど、皆さん魅力的になっていたのは、去年も目に見えて分かりました。今年はさらになんですね」と春瀬。その期待に、高橋さんは「集団としても個人としても、昨年を超えるものをお見せします!」と熱く誓った。
◆「滑走屋」 シングル選手として10年バンクーバー五輪銅メダル、10年世界選手権優勝などの功績を残し、アイスダンスに転向して3季を過ごした高橋さんが、23年5月の引退後に初めて手掛けたアイスショー。75分間ノンストップで「職人技」で見せるエンターテインメント。村元哉中さん、村上佳菜子さんらメインスケーターの他、若手をアンサンブルスケーターとして招集し、「パフォーマンス集団」として打ち出す。1年ぶりの再演はひろしんビッグウエーブで3月8、9日の全6公演で、チケットは販売中。購入はhttps://cocoticket.comへ
◆高橋大輔(たかはし・だいすけ) 1986年(昭61)3月16日、岡山県生まれ。7歳でスケートを始め、五輪3大会に出場。10年バンクーバー五輪銅。20年にはアイスダンスに転向。22年全日本選手権優勝など。23年5月に引退後、活躍の場を広げている。
◆メダリスト つるまいかださん作のフィギュアスケートを題材にした漫画。マンガ誌「アフタヌーン」(講談社)で20年に連載を開始し、「次にくるマンガ大賞2022」でコミックス部門1位になるなど、人気が加速。世界に憧れる少女の結束(ゆいつか)いのりと、スケーターとして挫折した指導者の明浦路司(あけうらじ・つかさ)が、メダリストを目指す。1月から放送開始されたアニメでは春瀬が結束の声を務めている。
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