死にたい気持ちに悩まされつつも「生きていていいんだと最近思えた」と吉野さん 自殺で命を落とす者たちがいれば、未遂で生き永らえる者たちもいる。“死ねなかった”人々はどんな後遺症を抱え、その後どのような人生を歩むのか。彼らの声に耳を傾け、“生きること”の意味を考える。
◆「生きづらさに殺される」自殺未遂で下半身不随に
「4階のマンションの部屋から、頭から着地するように後ろ向きに飛び降りた。確実に逝けると思ったんです」
そう語るのは吉野聡さん(仮名・31歳)。飛び降りた直後に友人に発見され、一命を取り留めた。しかしその代償は、脊髄損傷、下半身不随という重すぎる現実だった。
◆生きづらさの原因になったものは?
「僕が幼稚園の頃から、統合失調症を患う母が突然ヒステリーを起こして家中引っかき回したり、僕をかばってくれた祖母と大喧嘩をしたり常に荒れていた。父とは僕が小学校低学年の頃に離婚。いつしか『自分は死んだほうがいい』と思うようになったんです」
自殺の原因は他にもある。
「同性しか愛せない自分の性的指向も悩みでした。それに、勤め先のコールセンターで毎日罵声を浴びるのも辛かった」
◆「自力で排泄も入浴もできない」
一人暮らしをしても、状況は変わらなかった。
「脆くて不安定な性格の上に、いろんな“生きづらさ”が乗っかっているような状態です。もう人生を終えようと思った。でも死ねなかった。そして僕は、下半身が動かない障害者になりました。移動は車いすで、自力で排泄も入浴もできない。こんな体になりたくて、飛び降りたわけじゃないのに」
◆「少しだけ楽観的になれた」リハビリに励む
障害者施設に入居してもうすぐ1年。暗闇の中でもがきながら、最近、少しずつ心境に変化が表れてきたという。
「まだ、自分が障害者であることに慣れていません。治るわけがないのに、再来年ぐらいには自力で立てるんじゃないかと思ってしまう。でも慣れていないからこそ、少しだけ楽観的になれた気がします。歩行器を使ったリハビリも、最近始まりました。できることを増やしたい。足かせは重いけれど、いつか社会復帰をして自立するのが僕の夢です」
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取材・文/週刊SPA!編集部
―[[自殺に失敗した人]が生きる人生]―