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恋愛はある意味で、力関係の闘いだ。結婚という制度に乗ったとき、その力関係を引きずる可能性もある。そうなると結婚生活における夫婦関係が対等でなくなるかもしれない。そもそも「恋愛」と「結婚」は別のものだとする考え方も増えている。
夫にベタぼれした私の今
「夫とは同じ会社の先輩後輩という間柄でした。私が入社してすぐ彼に一目ぼれ、そこから何年もかけてさりげなくアプローチを続け、ようやく付き合えるようになったんです。結婚しようと言われたときが関係の頂点だったような気がします」エリカさん(40歳)が、大卒後に入社して知り合った先輩と付き合うようになったのは27歳のとき。そして29歳のとき、33歳の彼と結婚した。
「今思えば、私は彼の言いなりでした。それがうれしくもあった。同じ会社にいると仕事がしづらいから転職してほしいと言われて退職しました。転職しようとしたときに妊娠が分かり、夫は仕事はしばらくしなくていいんじゃないかと……」
31歳で長女を、34歳で次女を出産した。子どもが幼いころはもう少し家事、育児をしてほしいとも思ったが、夫に「オレが仕事第一だというのは分かってくれてるよね」と言われて何も言い出せなかった。
私だけが変わらざるを得なかった
「正直言って、夫への恋愛感情はもうまったくありません。年数がたてばたつほど、恋愛感情は薄れていった。それが自分ではショックでした。友人は『結婚は現実生活なんだから、恋愛感情なんかあったらやっていけないでしょ』って。でも私はいつまでも夫に恋していたかったんです」結婚前の恋愛感情が強かっただけに、薄れていくことが耐えられなかったのかもしれない。エリカさんは「もうあの頃の気持ちは戻ってこない」と嘆く。
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「夫は父親としては悪くないと思います。でも、他人だったこの人と家族になれたんだなという実感もないんですよね……。夫は相変わらず、外に出れば独身時代のように振る舞っているだろうし、夫の生活は何も変わってない。
私だけが変わらざるを得なくて、なんとなく結婚で割りを食ったような気はしますね。もちろん自分が望んだことだけど……」
恋愛感情をうまく家族愛に切り替えられなかったのではないかと友だちに指摘されたこともあるというが、エリカさんにとってはそんな簡単なものではないらしい。
だから「友情結婚」が正解だった
姉夫婦が大恋愛の末の結婚だったというユミコさん(42歳)。「もう20年近く前ですが、当時、バカップルぶりをさんざん見せつけられました。知り合ったときは互いに恋人がいたのに、それぞれ別れて一緒になるまでのストーリーをさんざん聞かされた。
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ユミコさんは、自分はあんなに激しい感情の波には性格上、耐えられないと思ったそうだ。大恋愛もしたくない、自分も相手も穏やかにいられて家族として仲よくできる人と結婚しようと決めた。
「仕事関係で知り合った人が、そういうタイプでした。声を荒げたこともない、彼の実家に行ったら両親も穏やかな人。『うちの子はなにがあっても怒らない。ちょっと歯がゆいときがある』とお母さんが笑って言うほど。3年付き合いましたが、彼が怒ったのを見たことがなかった。それで私からプロポーズしました」
ユミコさん31歳、彼が29歳のときだった。3年の間に、二人が育んできたのは恋愛感情より友情だった。好き好きとベタベタするわけではなく、いつものんびりした時間の中で話をしてきた。ときにユミコさんが職場の理不尽を怒っても、彼は一緒に怒るわけではなく、話を聞いて共感してくれた。
男を売りにしない夫
「優柔不断なわけではないんです。僕はこう思うということははっきり言う。でも感情的になって怒るということがまずない。私が女だからどう、ということはほとんど言ったことがないと思います」仕事を続けながら一緒に子育てをしているが、「母親ならこうだろ」と言われたこともない。男を売りにしないのだとユミコさんは笑う。
「うちは夫より私の方が力持ちなんですよ。だから重いものはだいたい私が持つ。周りからみると、女性に重いものをもたせてると思われるかもしれない。夫はたまに気にしていますが、いいんですよ、そんなの。持てる方が持てばいい」
夫はこまめに冷蔵庫や部屋の片付けをしてくれる。ユミコさんが絶対に手を出さない分野らしい。
「互いにできないことを補完しあえるのがありがたい。まさにベストフレンドだといつも思っています」
恋愛より友情。そういう結婚が今後、増えていくのかもしれない。
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亀山 早苗プロフィール
明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(フリーライター))