約40年ぶりに奈良公園に設置されたごみ箱=1月10日、奈良市 国の天然記念物「奈良のシカ」がいることで有名な奈良公園(奈良市)に、約40年ぶりにごみ箱が設置された。シカの誤食を防ぐためにこれまで置かれていなかったが、インバウンド(訪日客)増加などを背景にごみのポイ捨てが目立つようになったのが理由で、県担当者は「設置には賛否があったが、観光客の利便性向上とシカを守るために設置を決めた」と話す。
県によると、奈良公園内のごみ箱は、シカが中をあさって有害なごみを食べるのを防ぐため、1985年ごろに撤去された。その後は、県職員やボランティアが園内を清掃し、入園者には看板などでごみを持ち帰るように呼び掛けてきた。
ところが近年、ごみの捨て場所に困った外国人旅行客が増えたことなどで、ポイ捨てが増加。誤食によるシカの健康被害も問題となり、保護団体が行った調査では、2019年に園内で原因不明で死んだシカ14頭のうち、9頭の胃からプラスチックごみが確認された。
県は今年1月中旬から1カ月間、園内にあるバスターミナルの屋内と屋外に3台ずつごみ箱を設置し、ごみの種類などを調べる実証実験を実施。その結果、「食べ歩きでのごみが大半で、常設化しても問題ない」(担当者)と判断し、設置を続けることにした。新たなごみ箱は開閉式で、シカの誤食はできないようにした。数を増やすかは今後検討するとしている。
公園を訪れた大学生の山本優愛さん(21)は「今までごみ箱がないことを知らなかった。広い公園に6台しかないのは少ない。もっと増やすべきだ」と話した。

奈良公園のシカ=2月15日、奈良市