ついにホンダ・日産超え! 進撃する中国の"二刀流メーカー"BYDの実力

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2025年03月09日 07:10  週プレNEWS

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ニッポン市場にリアルガチに攻めてきたBYDは、東南アジア市場にも攻勢を強めている。その実力はいかに!?


EV(電気自動車)とPHEV(プラグインハイブリッド)の"二刀流自動車メーカー"、中国BYDが、なんと米フォード、日本のホンダ、日産を抜き去り世界6位に大躍進。この背景にはいったい何があるのか? 中国の大巨人の目指す場所はどこなのか。今後の日本市場の戦略はどうなっている!? 関係者や専門家らに話を聞いた!!

【写真】知名度を爆上げした長澤まさみ

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■ついに日本市場にPHEV投入を発表

中国BYDの進撃がもうどうにも止まらない!

昨年の世界新車販売台数でBYDは427万台を記録し、ホンダと日産を抜き去り中国メーカー史上初となる世界6位に大躍進したのである。しかも、販売台数を前年から40%近く伸ばすミラクルぶり。

内訳で目を引くのはPHEVの数字だ。前年比72%増となる248万台超をマークし、EVを大きく上回っている。加えて2月2日にBYDが発表した今年1月の新車販売台数は30万台超。依然としてPHEVが需要を伸ばしており、前年比79%増となる17万台超を叩き出している! 


これまで日本の大手メディアはBYDをかたくなに"中国のEVメーカー"と呼び続けてきたが、実際のところはどうなのか。

「BYDは2008年に世界初の量産PHEVを世に送り出したパイオニア。EVとPHEVが魅力の自動車メーカーです」(販売店関係者)

つまり、BYDはEVとPHEVの"二刀流メーカー"なのだ。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いのBYDが日本の乗用車市場に参入してきたのは23年1月だが、潮目が大きく変わったのは、昨年4月12日から放送開始となった同社のCM。


なんと大人気女優の長澤まさみが登場し、BYDの認知度は一気に爆上がりした。専門家筋は、BYDの日本市場攻略に対する本気度を示すCMだと口をそろえる。

今年1月24日には、東京都内でBYDが初の事業方針発表会を開催している。そこには、BYDジャパンの劉学亮(りゅう・がくりょう)社長が登壇。ちなみに劉社長はアジア太平洋地域全体の総責任者だという。自動車専門誌の編集者が言う。


「劉社長は、『充電設備が少ない日本の消費者の要求に応える』と語り、今年中に日本市場に"伝家の宝刀"とも言えるPHEVを投入する方針を電撃発表。さらに日本導入4車種目となるSUVタイプの新型EVを4月に発売するともアナウンスしています」

この事業方針発表会で、乗用車事業を担当するBYDオートジャパンの東福寺厚樹(とうふくじ・あつき)社長からもアナウンスがあったという。

「現時点でBYDのディーラーは全国で59店舗がオープンしていますが、年内に100拠点を目指すそうです。また、27年頃までにEVとPHEVを7、8モデル体制にするとも語っていました。いずれにせよ、BYDは日本市場に攻勢をかけています」


■BYDの躍進の理由

このBYDの躍進について、自動車ジャーナリストの桃田健史氏に聞いてみた。

「BYDが自動車産業に参入した初期から、同社の動向を中国国内で見てきましたが、ここ5年ほどの急成長に驚いています。BYDはイチ企業というよりも、"中国の次世代自動車事業の旗頭"という位置づけなのが大きいでしょう」


中国を代表する自動車メーカーとなったBYDは、これまで日本市場に3車種のEVを投入している。まず23年1月にSUVのアットスリー、同年9月に小型ハッチバックのドルフィン、そして昨年6月に日本市場におけるフラッグシップセダンのシールだ。

また、鈍化傾向にある世界EV市場だが、BYDは昨年のEV販売でトップを走る米テスラに2万台差まで肉薄している。要するにテスラと激熱の販売バトルを繰り広げる世界的EVメーカーでもあるのだ。BYDのEVについて桃田氏はこう言う。

「現在のモデルラインナップの走りのクオリティは、日米欧韓のEVと遜色はない。ちなみに乗り味、走り味についてはマイルドな印象ですね」


昨年BYDは創立30周年を迎えた。そもそもBYDは1994年に電池メーカーとして誕生。当初は携帯電話やパソコン向けの電池事業からスタートしている。起点となったのは2003年。中国の国有自動車メーカーを買収し、自動車メーカーへの道を進み始めたのだが、ここで疑問が浮かぶ。わずか22年で世界新車販売台数6位になれた理由だ。もちろん、世界最大の自動車市場を"母国"に持つ強みもあるが......。

「BYDの強みは"多国籍"にあります」

こう語るのは自動車評論家の国沢光宏氏だ。いったいどういうこと?

「16年に独アウディのデザイナーだったヴォルフガング・エッガー氏を招聘(しょうへい)したのです」

これにより、中国国内で失笑されていたBYDのクルマが劇的に変わったという。

「BYDではいろんな国の人間がクルマを造っている。もちろん、日本人もいます」


■BYDが誇るPHEVの実力

日本市場への投入が発表されたBYDのPHEVについて桃田氏はこう解説する。

「BYDは00年代後半に、最初の電動車としてPHEVを量産しており、それ以降も技術の蓄積が十分にある。また、EVの販売台数が中国国内で増えたことにより、EVと部品の共通性を高めることでPHEVのコストを削減できているのもポイントです」

国沢氏もうなずく。

「PHEVの問題点となるのは電池の価格です。BYDはEVで磨いてきた電池をPHEVに活用できますから、コスパは高くなる。ただし、まだBYDのPHEVは日本に導入されていないので、その耐久性については未知数」

BYDの販売は中国市場がメイン。とはいえ、海外販売比率は1割近くに達しており、すでにPHEVがその過半数を占めている。このPHEVで世界を席巻することはありえるのか。桃田氏が言う。

「BYDは中国という国の対外政策のひとつ。そういう立ち位置なのです。中国の自動車産業は、00年代からの国内経済の成長に伴い、国内需要を重視してきました。しかし、10年代後半頃からは国内需要の高止まりもあり、輸出産業の強化に国が乗り出している。そうした政策の中、BYDはタイなどの東南アジアを皮切りに現在、中国国外での生産拠点の拡充を進めているところです」


だが、米国とEU、カナダは中国政府から不公平な補助金を受けているとして、中国製EVに関税を大きく上乗せしている。正直、輸出の壁は高い。

「需要が伸びるのは主に欧米以外の国や地域でしょう。欧米については、中国と各国との政治的な駆け引きがある中、BYDが市場を拡大するのは当面難しい」

一方で、BYDが進める別のビジネスもあるという。

「BYDはバッテリーメーカーとして、定置型電源を含めた社会インフラ全体を見据えて事業を拡大中です。この領域は、日本の自動車メーカーを含めた既存の自動車産業が収益性の高いビジネスモデルを確立できていないため、BYDの強みとなるのでは」

■中国自動車メーカーの"地殻変動"

そんな中、実は中国市場で自動車メーカーの"地殻変動"が起きているという。自動車誌の元幹部が解説する。

「昨年の新車販売台数でBYDが初めて中国で首位に立ちました。これまで中国の自動車市場に君臨してきたのは、国有企業と手を組んだ独フォルクスワーゲン。つまり、国有企業と外資の合弁企業によって寡占状態だった中国の自動車市場に民営のBYDが風穴をあけたのです。

中国の自動車関係者からは、『大小合わせると1000社近くあったEVメーカーとの生存競争を勝ち残ったBYDの力はホンモノ』という声も」

国沢氏からはこんな話が。

「2月10日、中国メディアが、中国の国有自動車メーカーの長安汽車と東風汽車が経営統合交渉を始めたと報道しましたが、私の耳にもその情報は入っています」

長安汽車はマツダとの合弁会社を持ち、昨年の新車販売台数は約268万台。一方の東風汽車も日産とホンダなどとの合弁会社を持つ。こちらの昨年の新車販売台数は約189万台である。

「仮に両社が統合すると販売台数は約458万台になる。BYDの427万台を上回って世界新車販売台数6位にランクインします。つまり、6位と7位が中国の自動車メーカーになるわけです」


中国の自動車産業の発展は、国有企業と外資企業との合弁事業によって得た資源と技術により開花し、08年には世界最大の自動車生産国となった。そして15年5月、中国は製造業発展計画「メイド・イン・チャイナ2025」を発表する。実はこの中で、25年に世界自動車強国入りの目標を掲げていたのだ。

この戦略の中心に据えられているのがEVを中心とした新エネルギー車(PHEVを含む)。しかし、ご存じのように中国経済は不動産不況が引き金となり、ドロ沼状態。頼みの綱はEVとPHEVの輸出という声もチラホラ。国沢氏が総括する。

「BYDの実力だけでは、欧米市場進出は厳しいですから、かじ取りを含め難しい局面を迎えていると思います」

取材・文/週プレ自動車班 撮影/山本佳吾 写真/時事通信社 共同通信社

このニュースに関するつぶやき

  • 何でも日本製が良いと思っているから中国製は信用してない。
    • イイネ!11
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