9代目カローラ―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―
腕時計投資家の斉藤由貴生です。私はモノを買うとき、常に「いくらで売れそうか」を考えてから買うようにしているのですが、そうすることによって、本当の『消費額』がわかります。
たとえば、購入価格だけを見ると高いモノでも、価値が残りやすい場合、その実質額は「安い」可能性があります。そのため、私はあらゆるモノの相場を常に調査しているのですが、そうなると、意外と「価値がある」というモノを発見することがあります。
たまに、知り合いのおじさんと話していると、本人が「こんなの価値ないだろ」と思っていても、実は価値があるということに遭遇します。私と話したことによって、本人は実は価値があるモノを持っていたと気づくわけですが、教えてあげると喜ばれるので、私としてもいいことをした気分になります。
ということで今回は、意外と価値あるモノとして、クルマを取り上げたいと思います。
◆中途半端に古い車は“ボロ”という印象に
近年では、新車から5年10年といった期間では価値が残りやすいクルマが多いといえますが、その一方で、製造から15年ぐらい経過したクルマの価値は一気に下がるといえます。
もちろん、ものすごく古くなれば逆に価値が出てくるのですが、近ごろの事例だと、そういったことになるのは「製造から40年後」ぐらいだといえるかもしれません。
そのため、15年から30年ぐらいといったクルマは、中途半端に古く、単なる「ボロ」といった印象になるでしょう。
カーマニアの場合、2007年式といわれると「新しい」という印象を受けるかもしれませんが、車齢としては18年。現在の世の中では、これぐらいの年式のクルマは「十分普段遣いできる」のですが、全体的に相場は安価だといえます。
たとえば、新車価格700万円以上のメルセデスベンツの相場(業者間)は20万円程度といったことも珍しくありません。また、この価格帯の場合、程度が良くても悪くても、大して相場が変わらないことも珍しくないのです。
しかし、このような年式のクルマにおいて、実はびっくりするぐらい価値が高くついている車種が存在するのです。
具体的には、「走行距離10万キロ超え、車齢20年以上、程度が悪い」という条件でも、価値が50万円以上となっている車種、それが9代目カローラです。
◆「いつでも安く買える」という認識がひっくり返った
2000年にデビューした9代目カローラは、「菊次郎の夏」のテーマソングのCMが印象的で、初代プリウスのような、当時としては未来的なパッケージが魅力的でした。
この世代では、8代目まで存在した「GT」グレードが省かれ、スポーツモデルは消滅。その反面、最上級モデルには本革シートがオプション設定されるなどの魅力がありました。
私は個人的に4代目カローラが好きなのですが、4代目は20年以上前から個体数が少なく、相場が高い傾向がありました。その次に、この9代目カローラが好きなため、一度、セカンドカーとして本革シートの前期モデルを購入検討したことがあります。
記憶によれば、2007年頃から2017年頃まで、この9代目カローラはヤフオク相場が20万円程度であり、いわゆる「最も安いクルマ」という相場になっていたといえます。
また、グーやカーセンサーにも売り出しが掲載されていることが多く、「いつでも安く買える」という印象だったといえます。
それが今、9代目カローラの中古車数は1件、2件といった状態。
かなり数が減っていたため、私は早速オークション情報をチェックしましたが、業者オークションにはたくさんの台数が出ていたことが分かりました。
こういった現象は、このカローラに限らず、よくあることです。中古車として販売しても売れないから出てこない、といったことが考えられ、相場は大して高くない場合もあります。
そのため、私は9代目カローラを業者オークションで買ってしまおうかと思ったのですが、その際相場を見てびっくり。
走行距離10万キロ以上、程度が悪いような個体でも大体50万円以上で取引されているのです。
◆ゼロクラウン、ベンツよりも価値が高い!
通常であれば、こういった車種や年式の場合、相場は10万円台というのが珍しくありません。9代目カローラは、ゼロクラウンや、その時期に販売されていたベンツよりもはるかに高い価値となっているのです。
では、なぜこの9代目カローラがこんなに高い相場なのでしょう。
その答えは、おそらくどこかの国に輸出されているからだと思います。
特定の車種が、特定の国で需要が高いという現象があるため、このカローラもその例の1つなのでしょう。最近、SNSで話題となっていたのは、アフリカのコンゴでトヨタistがたくさん走っているという点ですが、そういった現象は珍しくないようです。
ただ、トヨタistの場合、相場はそこまで高くないため、必ずしも特定の国に輸出されているからといって、相場が高くなるとは限りません。
ちなみに、この9代目カローラの後は、セダンに「アクシオ」というサブネームが入りますが、このアクシオだと相場は全然高くありません。また、9代目カローラには「カローラフィールダー」や「アレックス」という派生車種がありますが、それらを含めて“高い相場”です。
その一方で、10代目カローラにもワゴンタイプの「フィールダー」がありますが、それは高くありません。ですから、9代目カローラは不思議とものすごく高い評価となっているわけです。
◆初代オデッセイのプレステージも“異常な高値”に
日本国内では一般向けに販売しておらず、解体してパーツを販売しようと思っても、本体価格の安さゆえに、決して高くは売れないでしょう。消去法で考えると、どこかの国に輸出されているから相場が高値となっている、と考えられますが、熱狂的に9代目カローラの需要が高い地域があるのでしょう。
9代目カローラを売れば、程度が良い中古の現行型ハイブリッドカローラアクシオを購入できるということになってしまうぐらい、9代目は高いのです。
今回は9代目カローラを取り上げましたが、これ以外にも「年式が古い、走行距離10万キロ以上、程度が悪い」といった条件で価値が50万円以上となっている車種があります。
たとえば、初代オデッセイのプレステージはまさにそういった状態。ただ、この車種の場合、趣味性が強いため、どこかの国で「日常使い」への需要というよりも、カーマニアのコレクション目的で価値が見出されていると思います。
また、トヨタの初代イプサムも、この年式の車種としては価値が高くなっています。不思議なのは、同じ世代のイプサムの上級車種として出た「ガイア」はそこまで高くないのに、初代イプサムだけが高いのです。
カーマニアから評価が高いような“趣味性の高い車両”でなくても、「なぜか価値が高い車種」があるということが、お分かりいただけたかと思います。
<文/斉藤由貴生>
―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―
【斉藤由貴生】
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある