お茶漬けを“1500食以上食べた女性”を直撃、体調について聞いてみた「高血圧になりそうと思われがちですが…」

飽食の時代、寿司・焼肉・カレー・スイーツなど、あらゆるものが好きな時に食べられる日本。そんな状況にあって、徹底的に同じものを食べる人も存在する。
これまでに、お茶漬けを1500食以上食べたという、お茶漬けマニアのライター・もちづきもちこさんもそのひとり。インタビューを敢行し、“お茶漬け愛”について存分に語ってもらった。

◆気がついたらお茶漬けを“14000円分”買っていた

もちづきさんが、初めてお茶漬けを食べたのは小学生の時だったという。現在にまで続くお茶漬け愛は“一目惚れ”からはじまった。

「ある時、家族全員が寝坊した日があったんです。仕事や学校の支度に、もう映画『ホーム・アローン』の冒頭ぐらいバタバタしていました。それでも、何か食べて行くようにと、母が“永谷園様”のお茶漬けを出してくれたんです。それが衝撃的に美味しくて。しばらく動けなくなったほどでした」

“様”という敬称は、本人が永谷園を崇拝しているためにつけているのだそう。それ以降、お茶漬け愛を育み続けていたものの、はっきりと“マニア”であることを意識したのは、社会人になってから。

「世間と比べて自分のお茶漬け好きのレベルがどんなものかわからなかったので、マニアだという自覚はありませんでした。でも、友人と全国の物産品が集まるお店で買い物をしている時、ふと気がついたらお茶漬けの素を14000円分買っていたんです。当時、ライターとして売れたいと思っていながらも、自分の強みがわからずにいたのですが、友人に『強み、それじゃん！』と言われ、“お茶漬けマニア”を自称するようになりました」

◆週7でお茶漬けを食べるも「体調はむしろ良い」

そこから、全国のお茶漬けをさらに広く深く食べ比べるようになったもちづきさん。基本的に週7でお茶漬けを食べるようになったというが、体調に変化はないのか。

「塩分を摂りすぎて高血圧になりそうと思われがちですが、今のところは問題ありません。体調的には、むしろ良くなったように感じますね。個人の感想ですが、毎日お茶漬けを食べている時期は、お肌の調子がいいんですよ」

連日お茶漬けが続いても、身体への大きな悪影響はなさそうだ。むしろ好きな食べ物を口にする幸福感により、日々のストレスは軽減されているのかもしれない。

◆“がっかりするお茶漬け”に出会うことも

好きな食べ物といえど、百発百中とは限らない。ときには“がっかりするお茶漬け”に出会うこともあるという。

「ある居酒屋で『石焼茶漬け』を注文しました。ちゃんとしたお店なら、おこげができて美味しいんですよ。でも、そのお店は、熱々の状態でゆっくり持って来て、移し替えの器もないので、あっという間にお湯が完全に蒸発してしまいました（笑）。お茶漬け体験で珍しく残念な気持ちになりましたね」

さらに、これほど“お茶漬けまみれ”……いや、“お茶漬け漬け”の生活をしていると、ときにはならではのピンチが訪れることも。

「お茶って利尿作用がありますよね。ある日、お茶漬けのマガジンを作るために、何杯も食べ比べしたんです。そのあと観劇に行ったんですが、公演中めちゃくちゃトイレに行きたくて。どんな劇だったのか、内容がまったく頭に入ってこないくらいトイレを我慢していて、危ういところでした（笑）」

◆おすすめを紹介してもらった

関西では贅沢をした日などに「明日はお茶漬けやな」などと言うらしい。自宅でサッと済ませるイメージが根底にあるのだろう。逆に、“わざわざ”お茶漬けを食べに出かけるとすれば、どんなお店がいいのだろうか。

「実は、新宿はお茶漬け激戦区。気軽で美味しいのは『出汁茶漬け えん』。お茶漬けを日本のファストフードとして定着させようとしているお店なんですよ。具材も全国の美味しいものを選りすぐり、お米も産地にこだわり、季節ごとの商品もあって、『あ、今の季節はこのお魚が旬なんだな』って知ることができます。自社ブレンドで黄金出汁を作っていて、出汁のテイクアウトもあるので、それを使って自宅でオリジナル茶漬けを作るのもいいですよ」

同店には、テイクアウト用として出汁の素も販売されているそうで、自宅で好きな具材でお茶漬けを作るのも楽しそうだ。ただ、サラサラ食べられるゆえ、食事としてパンチが足りないようにも思えるが。

「パンチを求めるなら、渋谷の『和牛ひつまぶし六重亭』です！　出汁は優しいんですが、ガツンとした和牛の旨味が感じられます。温泉卵がのっていてパワーがみなぎりますよ。自宅で食べるならKALDIの『エスニック茶漬け 火鍋』。パッと見、辛そうに見えないんですけど、一口食べると辛さがガツンときて、朝食べたらシャキッと目が覚めますね」

また、ガッツリ量を求める人には京都の『阿古屋茶屋』がオススメだという。

「白ごはん・十六穀米・おかゆと、20種類のお漬物、お味噌汁に日本茶が取り放題で、『お茶漬けバイキング』ができるんです。食後の甘味として、最中（もなか）まで食べ放題なので、満足感もすごく高いですよ！」



◆「ホットケーキを焼く前の状態のもの」に…

全国の各店をめぐる一方で、自宅でアレンジお茶漬けも自作しているという彼女によれば、冷凍食品の焼きおにぎりや、餅などをお茶漬けにしても美味しいとのこと。さらに、まさかのスイーツにもお茶漬けが合うのだという。

「ホットケーキミックス、牛乳、卵を混ぜ、ホットケーキを焼く前の状態のものを作ります。そこに、永谷園様のお茶漬けのりを2袋混ぜて焼くんです。これが『甘じょっぱウマ〜！』って感じで、めちゃくちゃ美味しいんです！お茶漬けの塩気が、ホットケーキの甘味を持ち上げてくれて、スイカに塩をかける発想に似ていますね」

甘味とお茶漬けは意外なマッチングだが、焼き菓子にはお茶漬けがよく合うのだそう。しかし、その他のスイーツでは失敗もあったのだとか。

「なめらかプリンに、お茶漬けの素でつくったあんかけソースをかけてみたんですが、これは本当に美味しくなかった！お茶漬けもプリンも大好きなのに、こんなに美味しくないことあるんだなと、逆に衝撃的でした（笑）」

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いずれはお茶漬け専門家として、グルメ専門誌『dancyu』（プレジデント社）に出たいと野望を話すもちづきもちこさん。筆者がお茶漬けを食べるタイミングといえば、もっぱら急いでいるときの朝食に限られる。だが、彼女の熱量にあてられて、たまにはメインで食べるのも良いかもと思ってしまった。

＜取材・文／Mr.tsubaking＞

【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大！天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。