大型補強が難しい時代に求められる“育成・采配・マネジメント”の力――阿部慎之助は「新しい巨人」を作れるのか?

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2025年03月28日 01:01  サイゾーオンライン

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読売ジャイアンツの阿部慎之助監督(写真:Getty Imagesより)

 かつて名捕手として巨人を支え、今はチームのかじ取り役を担う監督の阿部慎之助氏。2025年シーズン、指揮官として2年目を迎える彼の手腕に、大きな注目を寄せている。

 長年にわたり「補強による戦力強化」で勝ち続けてきた巨人において、時代の変化に適応した“新しいチームづくり”ができるか? そのチャレンジの最前線に立っているのが、ほかでもない阿部監督である。

圧倒的な大型補強の時代は終わった?

 巨人といえば、スター選手の補強により話題性と戦力を一気に高めるスタイルで、多くのファンを魅了してきた。

子どもたちの深刻な野球離れ

 しかし、近年はメジャー挑戦が多く、FA市場の流動性の変化や、若手重視の球団方針がトレンドとなり、即戦力の補強による成功モデルは通用しにくくなっている。国内に移籍する選手の意識も「プレーのしやすさ」や「環境」などを重視する方向へ変化し、巨人だからといって自然に有力選手が集まる時代ではなくなった。

 実際のところ、2022年オフに森友哉、2024年オフには大山悠輔の獲得に名乗り出たが、共に獲得にはならなかった。ライデル・マルティネスや甲斐拓也を獲得できたものの、2008年オフや2011年のような豪快な大補強ができない状況なのは否めない。

 この状況で求められるのは、「育成」と「生え抜き主義」である。球団がこれまで蓄積してきた若手選手の素材をいかに引き出し、戦力として計算できる段階に引き上げていけるか。それは単なる育成方針の転換ではなく、チーム文化そのものを変えていく試みでもある。

 昨年はベテランと若手・中堅の融合が目立っていた。その中でも、岡本和真と吉川尚輝はチームの主軸として成長を感じられたシーズンだった。

 特に、吉川は自身初となるフル出場を記録。3番に座りながらもセンターラインとして、優勝に大きく貢献した。前任の原辰徳政権では、坂本勇人・丸佳浩・岡本が中心だっただけに世代交代が感じられたシーズンだった。野手に関しては、大きな補強なしで上手く運用していたことがわかる。

大胆さと柔軟性のバランスを兼ね備えた采配

 就任当初から阿部氏の采配には「柔軟性」が見られた。例えば、ポジションの固定にとらわれず、選手の調子や相手の戦力に応じて大胆なオーダー変更やスタメン起用を決断する場面も多い。大城卓三の一塁起用や、レギュラー確定と思われた門脇誠の不振による泉口友汰との併用。トップバッターに丸を起用、その他、中堅・若手を積極的に起用などの姿勢は、従来の「固定型スタメン」からの脱却といえる。

 印象的なのは、開幕直後の起用法である。開幕戦はルーキーだった佐々木俊輔をトップバッターで起用。そのほか、萩尾匡也やオコエ瑠偉なども起用し、丸が固定されるまでは若手選手に1番打者としてチャンスを与えていた。

 また、試合展開に応じた投手交代のタイミングや、攻撃面での代打・代走起用も積極的で、データを活用しつつも選手の“今の感覚”を尊重するマネジメントは、まさに阿部氏らしいといえる。現役時代、捕手としてあらゆる状況を見てきた経験が采配にも活きており、試合の流れを読んだうえでの采配だろう。

 また、甲斐の加入による捕手運用も、今シーズンの阿部采配の注目点のひとつ。甲斐、大城、小林誠司、岸田行倫と代表経験がある4人の捕手を状況に応じて使い分けることで、投手との相性やリズムを重視した布陣が構築されている。捕手出身の監督らしく、守りから試合を作る意識が随所に表れており、派手さはないが「守り勝つ野球」を目指す姿勢がうかがえる。

阿部監督は新しい巨人像は作れるのか?

 2025年シーズン、読売ジャイアンツは例年以上に多くの課題と向き合いながら、開幕を迎えようとしている。主砲・岡本はオフにメジャー移籍の噂がつきまとい、チームの顔として長年活躍してきた坂本勇人も年齢的な衰えが囁かれるようになった。

 さらに、頼れるベテラン・丸がオープン戦中に離脱し、開幕から戦列を離れるというアクシデントも発生。かつては「不動の戦力」として君臨してきた主力選手たちに変化の兆しが見え始めている。

 一方で、球団内では着実に成長を遂げつつある若手選手たちが頭角を現してきた。2023年に二桁本塁打を記録した秋広優人をはじめ、浅野翔吾や中山礼都、泉口など、これからのチームを背負う可能性を秘めた新世代の台頭は、ファンの期待を集める一方で、指揮官には難しい決断を迫る。ベテランの経験と若手の勢い、そして現状のコンディションをどうバランスよく配置してチームを機能させるか。この“変化のマネジメント”こそが、2025年の巨人を語る上で最も重要なテーマといえる。

 この激動の中、チームの指揮を執るのが、監督として2年目を迎える阿部氏だ。現役時代からチームを知り尽くし、精神的支柱でもあった阿部氏は、今やチーム全体を率いる立場となった。「常勝軍団・巨人」に課せられるプレッシャーは並大抵のものではなく、優勝争いに絡むことはもちろん、「常に勝ち続ける姿勢」が求められる。

 そんな厳しい環境下で、阿部氏は「育てて勝つ」という現代野球における理想に、真っ向から挑戦しようとしている。

 実績のあるベテランを使いながらも、将来を担う若手に積極的に出場機会を与え、失敗を恐れずに経験を積ませていく。その一方で、采配面では柔軟さを忘れず、日々変化するチーム状況や選手のコンディションに応じた戦略を練り上げていく。阿部監督の姿勢からは、勝利だけでなく「チームの未来」を見据えたマネジメントの意思が感じられる。

 確かに、育成と結果の両立は簡単ではない。勝てなければ批判され、若手が育たなければ将来への不安が残る。だが、それでもなお、長期的な視点に立ってチームを再構築しようとする阿部監督の挑戦には、どこか清々しささえ感じられる。それは、短期的な成績よりも、10年後、20年後に「あの時期がターニングポイントだった」と語られるような大きな変革への第一歩かもしれない。

 阿部慎之助が率いる“新しい巨人”は、これまでの「勝って当然」とされてきたチーム像を超え、「育てて勝ち続ける」チームへと進化できるのか。その答えは、シーズンのグラウンド上、選手たちの躍動、そして監督の采配のひとつひとつに表れていくはずだ。

 果たして阿部慎之助は、本当の意味で“新時代の巨人”を作り上げることができるのか? その答えを目にするのは、これから始まる2025年のシーズンである。

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(文=ゴジキ)

このニュースに関するつぶやき

  • 岡本のあとを打つ5番をしっかり固定できるかがカギ。100打席or30試合はキャベッジでいきたいけど、そこまで、メディア・ファン・阿部監督がガマンできるかというと微妙でw
    • イイネ!2
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