トランプ大統領就任で再熱!「沖縄米軍基地問題」が生まれたワケを上念司氏が解説

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2025年03月29日 09:20  日刊SPA!

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 トランプ大統領就任によって、刻々と変わる国際情勢。その変化の波に巻き込まれているのは、日本も同様だ。
 なかでも、以前から「日本は米軍の駐留経費を全額負担すべき」との発言を繰り返してきたトランプ大統領就任により、再度注目を集めているが米軍基地問題。特に沖縄の米軍基地問題については、頻繁に基地反対運動も行われるなど、社会的にも大きな争点となっている。

 そこで、『保守の本懐』を出版したばかりの作家・経済評論家の上念司氏に、沖縄米軍基地問題が日本を分断する理由や問題が生まれた社会的背景などについて解説してもらった。

(本記事は、『保守の本懐』より一部を抜粋し、再編集しています)

◆「隙間産業」に目を付けた共産主義者たち

 ソ連崩壊後、自民党は2度にわたって政権の座から陥落します。1度目は1993年の細川連立政権の時、2度目は2009年の民主党政権の時です。共産主義者たちとの闘いに勝ったのになぜ?

 理由はバブル崩壊以降の経済失政にありました。平成に入ると、それまで経済政策だけは間違えなかった自民党がことごとく悪手を打ち続けたのです。この点については拙書『経済で読み解く日本史 平成時代』(飛鳥新社)に詳しく書きましたので、ここでは簡単に説明します。

 1990年から始まる土地バブルの崩壊とそれに続く不良債権問題の処理に、日本政府は13年もの年を費やしてしまったのです。

 そもそも、バブル崩壊自体が大蔵省による不動産融資規制と日銀の利上げによるオーバーキルが原因でした。さらに、2003年に不良債権処理が終わった後も、物価上昇率がマイナスになるデフレは解消しませんでした。

 速水優、福井俊彦、白川方明と続く日銀総裁が十分な金融緩和を行わなかったからです。そのせいで、1998年から2012年までデフレ状態は解消せず、失業が大幅に増えました。その影響を受けたのがロスジェネと呼ばれる、私より少し後輩たちの世代です。

 すでに齢50に達する彼らは、学校を卒業した直後からデフレ不況が続き、ろくに就職できないまま年を取ってしまいました。この時期、日本の自殺者数はそれ以前の2万人台から3万人台に増加し、その原因の多くが経済的な問題を苦にしたものでした。

◆「革命は起こせないけど、現状の批判はする」隙間産業

 経済的に困窮した人々は救済を求めて過激思想に走ります。革命運動はソ連崩壊で下火になっていましたが、行き場を失った共産主義者は新たな運動を開始していました。かつて日本共産党のナンバー4で参議院議員だった筆坂秀世氏は、それを「隙間産業」と名付けました。

 例えば、それらは環境問題、LGBTQ、沖縄の米軍基地問題、アイヌ問題、在日朝鮮人問題、反グローバリズムなど、革命という大きなテーマに比べれば矮小で、それだけで世の中が変えられるのかと思えるようなショボい運動です。

 デフレ不況時に話題になった派遣村のような活動も、ポストモダンのようなファッショナブルでナンセンスな思想運動も、隙間産業に加えていいでしょう。

 これら隙間産業に共通することは、「革命は起こせないけど、現状の批判はする」という点です。

 例えば、資本主義の暴走が地球環境を破壊しているとか、今の政府のせいでマイノリティの人権が抑圧されているといった批判です。

 もちろん、こういった社会的課題は1つ1つ解決していかなければならないものもあるでしょう。

 だからこそ、批判ばかりでなく建設的な議論が必要です。過去にそういう制度が決まった歴史的経緯、先人たちの議論、先行研究を踏まえた議論を着実に行っていくことが大事なのではないでしょうか?

◆なぜ米軍基地反対運動が、沖縄の分離独立につながるのか?

「隙間産業」の活動家たちはむしろ問題を解決させないことを目指して運動を展開します。いや、正確に言うとそういう問題を本当に解決したいという思いで集まった、困っている人と、その困っている人を利用してビジネスをしている活動家が混在しています。

 活動家はピュアな人たちを利用し、その批判の矛先を政府に向け、その権威を失墜させつつ、金儲けまでしている。しかも、問題なのはこういった活動家の一部は外国に支援されている疑惑があるということです。公安調査庁は次のように報告しています。

「琉球帰属未定論」を提起し,沖縄での世論形成を図る中国人民日報系紙「環球時報」(8月12日付け)は,「琉球の帰属は未定,琉球を沖縄と呼んではならない」と題する論文を掲載し,「米国は,琉球の施政権を日本に引き渡しただけで,琉球の帰属は未定である。

我々は長期間,琉球を沖縄と呼んできたが,この呼称は,我々が琉球の主権が日本にあることを暗に認めているのに等しく,使用すべきでない」などと主張した。

 既に,中国国内では,「琉球帰属未定論」に関心を持つ大学やシンクタンクが中心となって,「琉球独立」を標ぼうする我が国の団体関係者などとの学術交流を進め,関係を深めている。

こうした交流の背後には,沖縄で,中国に有利な世論を形成し,日本国内の分断を図る戦略的な狙いが潜んでいるものとみられ,今後の沖縄に対する中国の動向には注意を要する。

(参考:https://www.moj.go.jp/content/001221029.pdf)

 なぜ沖縄の米軍基地反対運動が沖縄の日本からの分離独立に繫がるのか?

 そもそも、沖縄は日本語を話す日本人が住んでいる島です。領土として未定であったことはありません。しかし、歴史的事実を捻じ曲げる屁理屈(ナラティブ)はしつこく拡散されています。反米をこじらせた一定割合の人が、こういった言説に簡単に引っかかってしまうのです。

◆環境問題にちらつく外国の影

 例えば環境問題を拗らせた人も、非科学的な放射能脅威論に洗脳されるリスクがあります。世界中の科学者から問題ないとお墨付きをもらっている福島第一原発の処理水が危ないと言い張っていた左翼活動家や左派政党の政治家がいましたね? 

 彼らのこの言説にも外国の影がちらついていることをご存じでしょうか? 読売新聞は次のように報じています。

 北朝鮮、処理水巡り韓国で反日扇動…スパイ組織に指令「日韓対立を取り返しつかない状況に追い込め」(読売新聞 2025年1月9日)

 北朝鮮が韓国内で運営する自国のスパイ組織に対し、東京電力福島第一原子力発電所の処理水放出に関して反日行為を扇動するよう指示する指令文を送っていたことが判明した。大量の指令文を証拠採用した韓国の裁判所の判決文を本紙が入手した。

 北朝鮮が反日機運を利用し、韓国内の分断と日韓対立をあおっている実態が浮かび上がった。(中略)

 判決によれば、組織のリーダー格である50歳代の男は、韓国最大規模の労組「民主労総」(組合員約120万人)で傘下団体などを統括する担当局長だった。組織には「理事会」があり、北朝鮮からの指令に基づき、下部メンバーに指示を出していた。

北朝鮮とのやりとりは2018年10月から23年1月に捜査が本格化する直前まで、ほぼ毎月1〜5回の頻度で行われていた。摘発されたスパイ事件では過去最多の規模だ。

(参考:https://www.yomiuri.co.jp/world/20250108-OYT1T50155/)

 隙間産業とはいえ、侮るなかれ。自民党が経済失政によって1人コケしている間に、これら隙間産業は着実に支持者を増やし続けていました。そして、自民党は2008年のリーマンショックの対応を完全に間違えてしまうのです。

<文/上念 司 構成/日刊SPA!編集部>

【上念司】
1969年、東京都生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の日本最古の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一教授に師事し、薫陶を受ける。金融、財政、外交、防衛問題に精通し、積極的な評論、著述活動を展開している。

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