
熟年離婚を決心する夫が妻にそれを告げるのは、ほとんどの場合「ある日突然、思い立ったから」ではありません。実は、長い時間をかけて妻から心が離れてしまったケースが多いのです。
では夫たちは、妻にどのような思いを抱えて「もう無理だ。別れよう」と結論を出すのでしょうか。日常生活で生じる妻への小さな不満のその先にある、夫たちの本音をひもといてみましょう。
夫の本音1.「思いやり」がなさすぎる
「妻から思いやりの気持ちが感じられない」という夫の言い分を聞くと、妻にしてみれば「お互いさまでしょ?」とイライラするかもしれません。確かに「ありがとう」や「おつかれさま」というねぎらいの言葉を惜しんだり、「いってらっしゃい」「おかえりなさい」といった基本の挨拶すら交わせない関係は、思いやりの問題以前に、相手に対して不満が募っている状態といえそうです。
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例えば「ウチの夫はATMだから」と、夫のことを女友達と笑い合っている妻や、「面倒だから平日の夕食は外で食べてきて」と家事を手抜きしようとする妻に対しては、言葉にすることはなくても『なぜ、自分はこんなに頑張って働いているのに、妻からの感謝もリスペクトもないのだろう』と感じているもの。
「夫は稼ぐのが当たり前」「家事分担は夫婦平等で当然」という妻の思い込みがルール化されて定着してしまうことで、夫は夫婦生活にむなしさを感じるようになっていきます。
その結果、「長年我慢してきたけれど、住宅ローンの返済や子育ても終わった今、もう妻子への義務は十分はたしただろう」と夫たちは熟年離婚に踏み切るのです。
夫の本音2.「関心」がなさすぎる
夫婦生活が長くなると、結婚前のような情熱で相手に接することはなくなるもの。「こんなことを言ったら、相手はどう思うだろう」「あんなことをしたら、きっと相手はこう感じるに違いない」という視点でパートナーと向き合うことも減るのではないでしょうか。
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特に、熟年離婚を決意する夫の多くが感じているのは、「妻にとって、もうオレのことは大事ではなくなったんだな」ということです。
「お金を家に入れてくれさえすればいい」「子どもが無事に育つようにサポートしてくれさえすればいい」というように、妻の関心の中心はお金と子どもになり、夫のことに関心が薄れてしまった夫婦関係ではよくあること。「だったら、オレは必要ないだろう」と妻への愛情も冷めてしまうのです。
妻への失望から不倫相手との再婚に向かうケースも
夫が熟年離婚を切り出す理由は、実はもう1つあります。「長く関係が続いている不倫相手と一緒になることを決心したから」というものです。これは、前述した2つの本音と関わってくることでもあります。というのも、「妻の思いやりが感じられない」「妻の関心が自分にない」と感じている夫に、もしも別の女性の存在があったとしたら、それは今の妻と別れて新しい幸せに向けてリスタートするチャンスになるからです。
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だからこそ、熟年離婚を回避したいのであれば、今すぐ夫婦関係を見直すことは必須。手遅れになる前に「思いやり」と「関心」をもって、パートナーとの生活を改めてみませんか?
岡野 あつこプロフィール
夫婦問題研究家、パートナーシップアドバイザー、NPO日本家族問題相談連盟理事長。立命館大学産業社会学部卒業、立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科修了。自らの離婚経験を生かし、離婚カウンセリングという前人未踏の分野を確立。32年間で相談件数3万8000件以上、2200人以上の離婚カウンセラーを創出。著書多数。近著に『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』。(文:岡野 あつこ(離婚ガイド))