
「犬くん、元飼い主さんがつけた名前です。
元々は、元飼い主さんのお母さんが飼っていた猫さん。
お母さんが亡くなり、息子さんの所に来て、更に息子さんが亡くなられて1匹取り残されました…」
元飼い主が亡くなった後、1カ月ほど部屋の中で置き去りになっていた高齢猫の犬(けん)くん(10歳以上・雄)を保護したことを、福井市の動物保護団体「特定非営利活動法人しあわせにゃん家」さん(@shia_nyan)がInstagramで報告。投稿には、「見つけてもらえて良かった」「1人で頑張って来たんだね」「よく生きてた」と感激する人たちからたくさんのコメントが寄せられ、話題になりました。
元飼い主が亡くなった後、部屋の中に高齢猫がいることを気付かれず…なぜ?
しあわせにゃん家さんによると、犬くんはもともと元飼い主さんのお母さんが飼っていた猫さんだったとのこと。お母さんが亡くなり、さらに元飼い主さんも亡くなってしまい犬くんだけが1匹取り残されたといいます。
「1カ月ほど部屋でひとりぼっち置き去りにされていた犬くん。ゴミの中からキャットフードを見つけこじ開けて食べたのか、何とか生き延びていました。元飼い主さんが亡くなり遺体を運び出す際も、部屋の中に犬くんがいたことを気付かなかったみたいで…後から近所の方が猫の鳴き声を聞いて、犬くんが発見されたとのこと。最終的に元飼い主さんの親戚の方が、私たち団体のところまで相談に来られました」
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そこで置き去りになった犬くんを保護することに。しあわせにゃん家さんたちは現場の部屋に足を運びました。
「部屋は散乱しておりました。親戚の方に同行していただきましたが、私たちが入った時はそれでも少し片付けたとおっしゃっていましたが。奥のお部屋や台所は手付かずで、ひどい状況でした。犬くんの存在に気付かなかったとのことでしたが、トイレなどがあったので猫がいる環境だということは普通なら分かるのではないかと思いました。
ただ犬くんは私たちが家に入った時も押入れの中に隠れていったので人が入った時は、その場にはいなかったのではなかったかなと。遺体を運ぶ際は猫のトイレのことまで見たり、他の生き物のことを考えたりというのは現状ではしないのかもしれません。私たちは保護活動をしていますので、猫がいる気配が少しでもあれば探しますが…そんなことはしないんでしょうね」
保護した高齢猫、酸素室に入り一時危篤状態に
こうして無事に保護された犬くんですが、ご飯を食べず…また足の状態が悪かったこともあり急きょ病院に連れて行くことに。検査の結果、心臓と脊椎の状態が悪い上、下半身まひで圧迫排尿の必要があり完全介護となりました。
「つながってできている背骨の1個1個が全部変形しており、それが脊髄に触れて神経まひが起こっているのではないかと。また心臓はそれとは関係なく悪い状態でした。水が少し溜まっており、それにより圧迫され呼吸もままならない状態に…それで酸素室に入りました。一時危篤になるなど危険な状態でした」
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とはいえ、何とか一命を取り留めたという犬くん。今は薬の服用などで入院中の危篤状態が嘘のように回復しているそうです。
「2週間に一度検査に行ってます。薬の服用で回復してはいますが、下半身まひは治っているわけではないので圧迫排尿は日々必要です。夕方から朝にかけては人がいないのでケージで生活し、朝は投薬が終わると猫カフェ内の個室に他の猫さんたちとともに過ごしています。また、お客様も入られるようになっていますので、犬くんのことをご存知で、介護が必要な猫さんであると理解されている方には一緒の時間を過ごしてもらっています。犬くん自体も人が大好きなので、それもプラスになっているように感じます。最初は力がなかった目もしっかりしてきています」
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保護猫カフェでお客と触れ合い、いきいきした表情になった高齢猫
今回ひとり置き去りになった犬くんを保護したことに、しあわせにゃん家さんは気持ちをこうもらします。
「犬くんの介護は毎日大変です。排尿もさせてあげないといけない。自分で移動ができないので全部してあげないといけません。それでも、あの荒れた部屋でひとりぼっちで死んでいくのを待つ犬くんを想像すると涙が止まらなくなります。お腹すいた。真っ暗。誰にも助けを求められない。自分のことだと思って想像すると耐えられない。猫さんだから耐えざるを得なかった。その1カ月の寂しさとの戦いを想像してしまいます。
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そして、今の犬くんを見ると、みんなに『犬くん犬くん』と言われ、常連様にもなでてもらって抱っこしてもらって、犬くんの表情は何だかちょっと誇らしげで老猫なのにかわいいんですよね。お目目キュルキュルさせています。正直高齢なのもあり、いつお空にいくかは分かりません。ただ、今幸せそうに鳴いて甘えてくる犬くんを見ると私の心もほっこりと幸せに感じます。なので、犬くんの保護は犬くんの幸せのためなのかもしれませんが、それを見ている私たちも幸せです。このまま少しでも長く幸せな時間を過ごしてほしいなと思っています」
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)