なぜおじさん上司は部下の肩を揉んでくるのだろう――。Z世代に注目が集まる反面、おじさんへの風当たりは強まるばかり。そんな現代社会を先輩目線から描いた漫画『もーれつ課長澤部』がXに投稿されている。
「第7回 ゲンロン ひらめき☆マンガ大賞」で読者賞を受賞している本作を生み出したのは、どんどこすすむさん(@dondoko_susumu)。20年前に肩を揉まれ嫌な思いをした彼自身も今では上司側の気持ちが理解できるようになったという。その理由と漫画の制作について話を聞いた。(小池直也)
――Xに投稿した手応えなどはいかがですか?
どんどこすすむ(以下、どんどこ):結構な反響をいただいて嬉しかったです。自分の描きたかったことが伝わったのかな……と思います。
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――「肩を無性に揉みたくなってしまった!」という場面がハイライトだと感じました。
どんどこ:あの部分が作品の着想になった場面なんですよ。いきなり他人から肩を揉まれるってあまり気持ちのいいことじゃないですよね。僕も若い時に職場の年配の方からされて嫌な気分になりました。
でも逆に若い人と一緒に仕事をするようになった時に、彼らが頑張っているのを見て、なぜか「肩を揉みたい」という気持ちが生じたんですよ(笑)。「あの時の先輩みたいに自分もなってしまったんだ……」と。それを面白おかしく描いたのが本作です。
――作中の上司も部下もご自分を投影している?
どんどこ:僕は実際に揉んではいませんが、自分の感情が入っていると思います。あとは一緒に作った若い担当編集の方に「共感できない」と言われ、劇中のジェネレーションギャップを制作中に感じたりもしました。
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――なぜ年齢を重ねるとそういう気持ちになるのでしょう。
どんどこ:自分より年下の頑張っている人たちを応援したくなる感じですね。声をかけたくなるというか……。恋愛ということでなく、仕事に打ち込む後ろ姿が「健気で可愛いな」と。今の年齢になって、自分の上司の気持ちが理解できるようになりました。
――こういった世代差は今に始まった問題ではないのですね。
どんどこ:少なくとも20年前からあります。「コンプライアンス」という言葉が今はありますけど、今の時代に限ったテーマではないと思いますね。
最後の片桐君が課長に助けられるシーンで自分の仕事観が描けたかなと。やっぱり個人的に「すごい人と一緒に働いている時」が一番楽しい。だからこそ片桐君が「この人すげえ」と感じる、あの瞬間を描きたかったんです。
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――「Z世代」や「老害」など世代を括りがちな世の中で相互理解の価値を考えさせられました。
どんどこ:どちらかというと「おじさん賛歌」みたいな感じですね(笑)。今はおじさんへの風当たりが強いのですが、当然カッコいいおじさんもいるぞと。
――作画面についても教えてください。
どんどこ:澤部のギャップを面白く見せたかったので、カッコいい部分と滑稽な部分の両面を出せるキャラクターデザインにしました。現代劇なので背景をある程度描き込んでリアリティを出せるように意識しています。
――また本作は「第7回 ゲンロン ひらめき☆マンガ大賞」で読者賞を受賞しています。「ひらめき☆マンガ教室」で学んだことは?
どんどこ:本作は受講生としての最終課題で提出した作品です。大賞は逃しましたが、読者の投票で入賞することができました。授業の形式がネーム(下書き)を出して、先生方からもらったアドバイスをもとにペン入れして完成稿を出すという流れなんです。
その「自分の作品をプロの助言に基づいて修正する」という訓練、50点のネームが70点になる経験が自分にとって糧になりました。そこが他の漫画スクールとは違うところだと思いますね。
――今後の展望があればお願いします。
どんどこ:漫画家志望なので担当編集さんと読切作品を作りながら、当面の目標は商業デビュー。次はヒューマンドラマを作ろうと構想しています。
(文・取材=小池直也)
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