ブルペンで投球練習するロッテ・中森俊介[撮影=岩下雄太] 高卒3年目の田中晴也が7回を無失点に抑え、高卒5年目の山本大斗が6回にプロ初本塁打となる先制の3ランを放ち、4−0の9回を締めたのは山本大斗と同学年で、先発した田中晴とはアメリカで自主トレを行ったロッテ・中森俊介だった。
中森は先頭の松本剛を1ボール2ストライクから外角低めの138キロフォークで空振り三振を奪うと、続く万波中正を初球の152キロストレートで遊ゴロ、最後は郡司裕也を152キロのストレートで中飛に打ち取り、危なげなく3人で片付けた。
◆ リリーフで存在感
中森はプロ5年目の今季に向けて、“規定投球回到達”を目標に掲げ、自主トレ、石垣島春季キャンプと過ごしてきた。2月の練習試合でも2月19日の広島との練習試合で3イニング、続く2月27日の西武戦も4イニングを投げた。一軍のオープン戦の登板はなかったが、3月9日の楽天との春季教育リーグで4回1/3、3月20日のオイシックス戦では3回を投げ、開幕直前に一軍合流。「状態は良いと思います。状態はすごく良いので、どれだけ出力というか、調子を維持できて、シーズン入っても同じクオリティのピッチングができるように頑張りたい」と意気込み、開幕一軍を掴み取った。
ただ、開幕から任されているポジションは先発ではなく、リリーフだ。「中継ぎは以前も経験があるので、問題なくやっています」。3月28日のソフトバンクとの開幕戦に早速、登板の機会が訪れた。0−1の5回先発・小島和哉の後を受けて登板すると、1イニング目の5回を無失点に切り抜け、直後の6回に打線が6点を奪い逆転に成功。6−1となった6回も今宮健太を二ゴロ、続くダウンズを外角のフォークで見逃し三振、リチャードを遊飛と、ソフトバンクに流れを渡すことなく三者凡退で終えた。2回を無失点に抑えた中森は、勝利投手になった。
中森は開幕前に状態が良いと話していたが、開幕してからここまでの状態について変わらず「いいと思います」と頼もしい言葉。
昨年は3月に状態を落としたこともあり、石垣島春季キャンプでは「今年アメリカで西野さんと一緒にやらせてもらった時に言われたので、やるときやって、しっかり休む時は休んでっていう今年のテーマというか、肝に銘じてやっていきたい」と話していたが、「まだ始まったばかり。疲れとかはないので、臆することなく今まで通り試合に臨めたらなと思います」とキッパリ。
中森は石垣島春季キャンプから変わらずストレートが良い。4月6日の楽天戦、0−3の6回先頭の太田光を3ボール2ストライクから空振り三振に仕留めた153キロのストレートが良かった。
「真っ直ぐは状態が良いですし、真っ直ぐを見せるために真っ直ぐ張りのところで、実際にホームランも打たれていますし、それまでですね。追い込むまでというか、初球、もしくは2球目までに1ストライク1ボール、2ストライクと追い込めるように、カウントを整えられる変化球を課題に取り組んでいる。そこをクリアできたらもう一段階上のレベルに上がるかなと思います」。
変化球も4月2日のオリックス戦、1−1の7回に先頭の太田椋を2ストライクから空振り三振に仕留めた3球目の139キロのフォークはストライクゾーンからボールゾーンに良い落ちだった。
フォークに関して「良い球もありますし、軌道、高さ、そこが大切になってくると思うので、数値的には悪くないです。むしろもっと空振りを取れてもいいボールなんですけど、まだもう一つ取れていないというのは、投げる高さ、コースやアナリストの人とも話しましたが、物足りないところがある。そこを意識しつつ、真っ直ぐの出力を落とさないようにやっていきたいと思います」と説明した。
ストレート、フォークが抜群に良く、今季ここまで8イニングを投げて7奪三振。奪三振率は7.88だ。3年目の23年が奪三振率4.43、昨季が奪三振率4.88だったことを考えると、奪三振力が上がっている。
中森本人は「僕自身、めちゃめちゃ空振りを取れている感覚はないですし、もっと取れてもいいと思っているので」と首を傾げる。「真っ直ぐの球威、変化球の質的にも悪くはないので、投げるコース、コントロール、そこで足を引っ張っちゃっている。そこの精度を上げられたらなと思います」と誓った。
「無失点で帰ってくることが一番ですし、開幕戦もそうですけど、相手に流れを持っていかないというか、こっちに流れを持っていきたいときにパターン的に起用されていると思うので、そういうピッチングができるようにしたいと思います」。この先も、チームの流れを呼び込む投球を披露していくつもりだ。
取材・文=岩下雄太