輸出企業、米関税でパニック=海運取扱量8割減も―「倒産の波」におびえる中国

88

2025年04月20日 08:01  時事通信社

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

時事通信社

広州交易会で立ち並ぶ中国企業の出展ブース=16日、中国・広州
 トランプ米政権による中国からの輸入品に対する145%の高関税が、中国の輸出業者にパニックを引き起こしている。主要港の米国向け貨物は8割も減り、米市場に依存する企業は存続の危機に直面。広東省広州市で開幕中の中国最大規模の貿易見本市「中国輸出入商品交易会(広州交易会)」では、出展企業から悲痛な声が上がる。

 ◇想定外の高関税

 「米国向け出荷が止まった」「死活問題だ」「人員削減も避けられない」。浙江省の内装材メーカー担当者によれば、交易会では関税の話題で持ち切り。業者は最新の情報を交換するために必死になっているという。

 この内装材メーカーの米国向けは輸出量全体の3割を占める。ただ米中貿易摩擦の激化で現在は完全に出荷を停止。「受注がどれだけ減ったか。代替手段があるのか。とにかく最新の情報が知りたい」と訴えた。米テキサス州から訪れたバイヤーは「商品探しで来たものの、現状では発注できない」と諦め顔だ。

 山東省のタイヤメーカーも港に発送した商品を倉庫に回収し、米国向け生産を停止した。担当者は「ここまでの関税引き上げは想定外だ。このままだと米市場をあきらめるしかない」と意気消沈の様子。以前は8割に上った米市場向けは、今では2割まで落ちた。それでも主要な輸出先であることは変わらず、「今はただ様子見をするしかない」と戸惑いを隠さない。

 ◇米中「分断寸前」

 特に大きな打撃を受けたのは対米依存度が高い業者だ。交易会の出展業者からは「知り合いのかばん業者は工場閉鎖を検討している」「100%米国向けだったペットフード業者は放心状態で、輸出先を多角化しなかったことを悔やんでいる」といった声が聞かれた。

 人員削減を検討している業者も多い。浙江省寧波市の家電メーカー関係者は「米国に依存する企業には倒産の波が押し寄せる。相当の失業者が出てくるだろう」と危機感を募らせる。

 景気低迷が続く中国経済を支えたのは輸出だ。3月の輸出額は関税発動前の駆け込み需要もあり、前年同月比12.4%増。中国の2024年の貿易黒字は9922億ドル(約141兆円)で、このうち対米は4割近くを占める。寧波港の物流関係者は「4月の輸出が落ち込むのはほぼ確実。米中経済関係はデカップリング(分断)寸前だ」と嘆いた。

◇新市場開拓に活路

 港湾物流関係者によると、世界有数のコンテナ取扱量を誇る広東省深セン港では、トランプ大統領による相互関税の発表後2週間で、米国向け貨物の取扱量が6〜8割も減った。寧波港でも7割以上落ち込んだ。この関係者によれば、複数の海運世界大手が米中間航路を一時的に運休する措置を取ったという。

 中国の対米輸出が激減する中、輸出業者は東南アジアなど第三国を経由した迂回(うかい)輸出に活路を見いだそうとしている。売上高の6割を米国向けが占める寧波市の自動車部品メーカーでは、出荷できない商品の在庫が積み上がり、事業を継続するための資金がなくなる恐れが強まっている。担当者は「寧波の同業者らで協力し、タイに進出して米国に輸出する計画を立てている」と説明。欧州やロシア、オーストラリアなど米国に代わる市場の開拓に大きな期待を寄せた。 

中国製品の買い付けのため広州交易会に集まった新興・途上国のバイヤーら=17日、中国・広州
中国製品の買い付けのため広州交易会に集まった新興・途上国のバイヤーら=17日、中国・広州

このニュースに関するつぶやき

  • 中国は表向き米国に対抗姿勢を見せてるけど内情はこんなモノだろう。対米貿易では最大黒字を享受していながら米国抜きで世界の覇権や秩序の構築に挑んでるから潰されて当然かもね
    • イイネ!36
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(74件)

前日のランキングへ

ニュース設定