新しい製法で作った厚さ1センチを超える「培養肉」(東京大竹内昌治研究室提供) 家畜の細胞を増殖させて作る「培養肉」を厚くする新しい製法を東京大の竹内昌治教授の研究チームが開発した。従来の製法では、厚くなると栄養分が届かずに細胞が壊死(えし)して薄い肉しか作れなかった。内部が空洞の化学繊維「中空糸」を使って培養することで、厚さ1センチ超まで厚くすることに成功した。論文は生物工学の国際学術誌に16日付で掲載された。
培養肉はシンガポールや米国などで販売が承認されており、食料難の解消や環境負荷の軽減につながる技術として注目されている。開催中の大阪・関西万博でも最新技術が展示されている。
研究チームは、髪の毛より一回り太い中空糸を大量に張った培養装置を作り、そこに鶏肉の細胞と培養液を流し込む製法を開発。厚さ約1センチの培養肉約11グラムを作ることに成功した。
中空糸から栄養分や酸素が染み出ることで、内部まで新鮮な状態だったほか、糸に沿って細胞が並んでいるため、本物の肉らしい食感に近づいたという。また、成分分析の結果、従来製法よりもうま味成分の一つ、アミノ酸の量が増加しており、風味が向上したとみられる。
竹内教授は「本物と見間違うような培養肉が作れる有効な製法は世界でもまだ確立されていない」と指摘。「新しい製法を開発できて、この分野への貢献になったと思う」と述べた。