日本における子宮頸がん検診の認知度と課題
日本で年間約1万人1)が新たに診断されている子宮頸がんは、主にヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因で発症します。世界保健機関(WHO)は子宮頸がんの撲滅を目標に掲げ、HPVワクチンの接種、定期的な検診と適切な治療を推奨しています。
「子宮の日」(4月9日)を直前に控えた2025年4月7日、NPO法人子宮頸がんを考える市民の会と診断薬・医療機器メーカーのロシュ・ダイアグノスティックスは子宮頸がんの予防と検診の重要性を周知する目的で、合同記者会見を開きました。

子宮頸がんを考える市民の会理事長の今野良先生(右)とロシュ・ダイアグノスティックス社の直江佐穂理さん(左)(子宮頸がんを考える市民の会提供)
子宮頸がんを考える市民の会理事長の今野良先生(自治医科大学名誉教授)は、「子宮頸がんから身を守るには2つが大切。ひとつはワクチンによるHPV感染の予防、もうひとつは効果的な検診の普及による早期発見だ」と説明しました。検診については受診率の低さと検診方法の質が大きな課題となっています。
ロシュ・ダイアグノスティックス社の直江佐穂理さんは同社がアジア太平洋地域(APAC)8か国・地域で実施した女性の健康管理に関する意識調査2)の結果を報告しました。その結果によると、日本人女性の70%以上が、子宮頸がん検診の知識について「あまりない」「全くない」と回答しており、調査対象国・地域のなかで最も低い結果となりました。学校で「子宮や子宮頸がんについて学んだ」と回答した日本人女性は14%にとどまり、「健康診断に関する情報を学んだ」と回答した人は7%とさらに低い状況です。
今野先生は「日本では小学6年生〜高校1年生相当の女の子を対象に、国の定期接種プログラムとして子宮頸がんの原因となるHPVを防ぐワクチンの接種を提供している。HPV感染を防ぐことは、将来の子宮頸がんを予防するために重要なので多くの方に知ってほしい」と強調しました。
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子宮頸がん検診の新時代 、 HPV検査の普及を目指して
子宮頸がん検診の方法は大きく分けて2種類あります。ひとつが2年に1回の受診が推奨されている細胞診、もうひとつが5年に1回の受診が推奨されているHPV検査です。
厚生労働省は、これまで市町村で実施する子宮頸がん検診の内容について20歳以上に細胞診を推奨していましたが、HPV検査単独は細胞診単独よりも感度(細胞の異常やウイルスなどの発見率)が高く、検診頻度も少なく受診者の負担が少ないことを踏まえて、2024年4月より30歳以上に対しHPV検査単独法の追加3)を発表しました。
しかしながら、1年経過した2025年4月時点でHPV検査単独法を導入した自治体は全国で埼玉県の志木市と和光市、神奈川県の横浜市のみにとどまっています。
今野先生は「HPV検査が陰性の場合、次は5年後に検査をすればよい。陽性の場合に細胞診を行うことで、異常を見落とす確率も減る。HPV検査の検診導入は受診者負担の軽減だけでなく費用の削減にもつながる」とその意義を解説し、2025年度はより多くの自治体にHPV検査が広がることを期待しました。さらに今野先生は「子宮頸がん撲滅のためには、HPVワクチン接種率20%以上、検診受診率80%以上、そしてHPV検査の普及が重要」と述べています。
検診への参加は子宮頸がん予防への第一歩となります。まずはご自身の住む地域の検診を受けてみてはいかがでしょうか。(QLife編集部)
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1) 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)(2025年4月21日閲覧) [https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/17_cervix_uteri.html] 2) ロシュ・ダイアグノスティックス「女性の健康管理に関する APAC 8 カ国・地域の意識調査」(2025年4月21日閲覧) [https://assets.roche.com/f/239071/x/a29b5b4f11/20250407.pdf] 3) 厚生労働省「HPV検査単独法による子宮頸がん検診の導入」(2025年4月21日閲覧) [https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001283555.pdf]