
関税を武器に強硬姿勢を貫いてきたトランプ大統領に変化です。関税の引き上げをめぐり、報復合戦となっていたアメリカと中国ですが、ここにきて、トランプ氏が「中国と毎日コンタクトを取っている」と話すなど、関税を見直す動きが出ています。
【写真で見る】強気一辺倒の姿勢を改める?アメリカが検討する中国への対応
「怖い」トランプ関税に伴う物流の混乱を不安視する日本企業1985年、アメリカの貿易赤字解消のための為替に関する歴史的合意「プラザ合意」の舞台となった、ニューヨークの名門「プラザホテル」。
その中に2024年、店舗をオープンしたのが、高級子供服の「ミキハウス」です。
ミキハウスUSA 武田欣克社長
「皆さん日本製のものを求めておられる」
|
|
メイドインジャパンの品質を武器にした高価格帯の商品の売れ行きが好調だといいます。
日本製の子ども服を購入した外国人
「価格も問題ないですよ。多くのものが手作りの日本製なので、品質が良くて気に入っています」
“トランプ関税”で日本からの輸入はどうなるのか。
現時点では商品の在庫に支障はありませんが、気になるのは関税に伴う物流の混乱です。
ミキハウスUSA 武田欣克社長
「関税が上がるかどうかよりも、水際で欲しい商品が(米国に)入れられなくなる方が怖い」
加藤勝信財務大臣(加藤財務大臣のXより 米・ワシントン23日投稿)
「昨日からワシントンに参っております。ワシントンも桜が終わっているということでありますけれども、大変過ごしやすい気候となっています」
|
|
渡米したばかりの加藤財務大臣が、この投稿の後に臨んだのは、ワシントンで始まった「G20」。主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議。
初日の議論では、各国からトランプ政権の関税措置について、言及があったということです。
加藤勝信財務大臣
「米国の関税措置と一部の国の対抗措置や、それがもたらす不確実性が足元の為替を含む金融市場を不安定にし、実体経済に悪影響を及ぼしていると指摘した」
加藤大臣とアメリカのベッセント財務長官との会談は、日本時間の25日未明の見込みです。
トランプ政権は、ここにきて各国への関税や通貨などの政策を見直す動きが出ています。
ロイター通信によりますと、ベッセント財務長官は日本との協議で、「具体的なドル・円相場の目標を話し合う考えはない」と表明。
為替について、どのような議論が交わされるのか注目されます。
貿易赤字の削減を目指す上で、これまで“円安を牽制”するような発言を繰り返してきたトランプ大統領。
アメリカ トランプ大統領
「日本は円安を目指して戦ってきた。中国も通貨を低く維持しようとしてきた。私はシンゾー(安倍元総理)によく言っていたんだ。『円をそんなに安くしないでくれ。トラクターが売れなくなるし、観光業も難しくなる』と」
|
|
市場では今後、アメリカ側が日本側に対し、円安の是正を強く求めるのではないかとの観測が広がっていました。
ところが、ベッセント財務長官の「通貨目標は念頭にない」との発言を受け、円安が進行。
輸出関連株などを中心に買われ、日経平均株価も一時400円以上、値上がりしました。
また、トランプ政権は、中国に対しても強気一辺倒の姿勢を改めようとしています。
関税を巡っては、現在、アメリカが中国に対して、合わせて145%の追加関税を課す一方、中国も対抗措置として、アメリカに125%の追加関税を課すなど、激しい貿易戦争に陥っています。
国連の場でも、両国は…
中国国連大使
「一方的な主義が猛威を振るい、いじめのような行為が横行している。いかなる圧力、脅迫、恐喝も中国に対処する正しい方法ではなく、中国人民の偉大な復興を阻止することはできません」
アメリカ代表
「トランプ大統領は貿易環境を見直し、中国がもはや不当な利益を得られないようにしています」
国際平和などについて話し合う安保理で、関税が議題になるのは異例のことです。
こうした中、アメリカの『ウォールストリート・ジャーナル』は4月23日、トランプ政権が中国に課している145%の関税について、税率を半分以下(50〜65%?)の水準に引き下げることを検討していると報じました。
また、国家安全保障上の脅威にはならないと判断される品目については35%。アメリカの戦略的利益に関わるとみなす品目については、少なくとも100%の関税を課すといった案も検討されているとしています。
――いつ中国に課している関税を引き下げたいか。
トランプ大統領
「中国の対応次第だ」
――中国と直接コンタクトをとっているか。
トランプ大統領
「もちろん。毎日とっている」
トランプ大統領はこう強調した上で、新たな関税率の設定については、「今後、2週間から3週間で各国の関税率を決めようとしている。中国についても決まるかもしれない」と述べました。
斎藤さん「トランプ大統領ピンチです」トランプ関税の風向きに変化藤森祥平キャスター:
トランプ大統領が、中国に対する関税引き下げを検討している。大幅に引き下げるという声までメディアで報じられ始めました。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
トランプ大統領ピンチです。最初は中国に圧力をかけて、エリート大学にも圧力をかけて、ゼレンスキーにも圧力をかけたけれども、強く反撃すればトランプはひよって引っ込めてしまうということが世界中にばれてしまった。これは大変なことで、中国もロシアもこれから絶対言うことを聞いてくれない。機嫌をうかがってくれるのは日本ぐらいになってしまうと。
そうなってくると、トランプ大統領の今までのやり方というのは通用しなくなって、勢いや人気がなくなっていけば、内輪揉めもどんどん増えてくるだろうし、これは風向きがだいぶ変わってきたかもしれないです。
藤森キャスター:
そうなると、今後、日本がこの動きを冷静に見極めて、どう対応するかですね。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
石破総理が近々会いに行くのであれば、日本も「自分たちの考えていることはこうだから、これ以上は譲歩しない」という姿勢を、はっきり見せてほしいなと思います。
==========
<プロフィール>
斎藤幸平 さん
東京大学准教授 専門は経済・社会思想
ドイツ在住 著書『人新世の「資本論」