授業料以外の費用は引き続き自己負担 【家電コンサルのお得な話・247】 高校授業料の無償化が、2025年度から公立において所得制限を撤廃する形で本格的に始まっている。私立高校についても2026年度から所得制限が撤廃され、支援上限額が全国平均額である45万7000円に引き上げられる見通しである。教育費用の負担軽減という点では喜ばしい動きであるものの、国民全体の視点から見たとき、この政策は本当に優先すべきものなのかという疑問も浮かぶ。
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●公立に続き私立も! 「高校授業料無償化」の所得制限が撤廃
この制度の仕組みは、「高等学校等就学支援金制度」に基づき、授業料に相当する金額を国が支給するというものである。支援金は保護者に直接支給されるのではなく、学校を通じて授業料に充当されるため、形式上は「無償」となる。ただし授業料以外の費用(入学金、教科書代、制服代、通学費用など)については引き続き自己負担であり、公立高校でも年間30万円前後の支払いは必要となる。これらを加味すると、おそらく授業料の無償化だけでは、少子化問題の解決には至らないだろう。
無償化政策は、メリットだけではなく財源にも目を向けるべきである。今回の制度改正には年間4千億円規模の予算が必要とされ、今後10年で見れば兆単位の支出となる。この金額はかなり高額であり、「国民全体に恩恵が及ぶ減税措置のほうが先に議論されるべき」という声もある。
物価高が続くなかで、子育て世帯だけでなく、若い世代から高齢者まで、幅広い層が生活の苦しさを感じているはずだ。子育て世帯の経済的負担の軽減のため、高校進学に伴う費用の無償化が必要だとしても、それを理由に他の国民にさらなる負担を強いるのであれば、まずは「誰にとっても公平な恩恵」となる減税の優先が筋ではないだろうか。
今回の所得制限のない高校授業料無償化は、高校生以下の子どものいる家庭やこれから子どもを育てたいと思っている夫婦にとって前向きな一歩であることに疑いはない。しかしその一方で、党利党略が最優先され、国民全体が納得する税の使い道という視点を欠いたまま進む政策は、さらなる分断や不信を招きかねない。制度の目的が正しくとも、その「順番」や「説明責任」は厳しく問われるべきだろう。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)
堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。