アメリカ離れの奥の手 ウクライナを守るデンマーク・モデルとは?【報道1930】

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2025年05月02日 17:11  TBS NEWS DIG

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ロシア寄りと思えば、突然ゼレンスキー大統領と打ちとける…。トランプ氏の外交は先が読めない。そんなトランプ氏の言動とは関係なくウクライナでの戦争は続いている。
はっきりしていることは西側の支援なしにウクライナはロシアに太刀打ちできないことだ。
そこでヨーロッパではアメリカに頼らないウクライナ支援を始めている。それは“デンマーク・モデル”と呼ばれていた…。

【写真でみる】脱アメリカの「デンマーク・モデル」とは

「ここで榴弾砲を作っているなら我々が他の国から買って持ってこなくてもいいんじゃないか」

ヨーロッパの国々が今ウクライナのために進めていること…。それはアメリカがウクライナから手を引いたときのことを念頭において考案された新しい軍事支援の形だ。既に去年11月、ゼレンスキー大統領の口からその言葉は発せられていた。

ゼレンスキー大統領
「私たちはウクライナにおいて“デンマーク・モデル”という防衛産業発展モデルを構築した」

この発言をした会見でゼレンスキー氏の隣にいたのはデンマークのフレデリクセン首相だ。
果たして“デンマーク・モデル”とは…。
武器や弾薬を供給する従来の軍事支援とは違い、ウクライナの防衛産業に資金提供することで、ウクライナの兵器生産を増強するというシステムだ。

“デンマーク・モデル”なら同じ武器を半額で作れる

脱アメリカの軍事支援としてEUはこの“デンマーク・モデル”に期待している。
既にEU各国で14億ユーロ(2270億円)を拠出しているが、その額はこれから大きく伸びるだろう。実は、このモデル最大の強みはコストにあった…。
ウクライナ在住のEU大使はこの支援形態は、実はウクライナに適していると語る。

駐ウクライナEU大使 カタリナ・マテルノヴァ氏
「ウクライナは伝統的に非常に技術が進んだ国で、ソ連時代には多くの兵器が製造されていた。今もウクライナには軍事兵器を製造するためのとても大きな能力や余力がある。1年前、ウクライナの兵器工場をデンマークの防衛大臣が訪れた際、『ここで榴弾砲を作っているなら我々が他の国から買って持ってこなくてもいいんじゃないか』と言ったのが“デンマーク・モデル”の始まり…ウクライナは西側諸国よりも安く早く武器を作ることができる。私も10か所ほどのドローン工場を訪れたが、どこも3交代制で24時間稼働していた。現地で生産すれば輸送コストも削減できる…」

現在すでに戦場に投入されているウクライナの自走榴弾砲『ボフダナ』。デンマークが約81億円の資金を提供しウクライナ国内で18台を製造した。1台当たり約4.5億円の計算だ。これまで西側諸国から供与されていた同じ規模の自走榴弾砲の生産コストは9億円前後と言われる。つまり“デンマーク・モデル”なら同じ武器を半額で作れるのだ。

さらにこのモデルは、ウクライナの経済支援にも繋がっている。

駐ウクライナEU大使 カタリナ・マテルノヴァ氏
「ウクライナ企業が製造して、その企業が国に税金を納める。経済全体の支援になり、国内のサプライチェーンの形成にもつながる。革新的な軍事支援だ」

弾薬やドローンの製造も半額から3分の1のコストで生産可能だという。
だが、ウクライナが今一番必要としている、アメリカのパトリオットのような防空システムは製造できないという。

駐ウクライナEU大使 カタリナ・マテルノヴァ氏
「ウクライナは独自の防空システムを製造していないため、それは次のステップになる。ヨーロッパや日本の技術で作ることになるかも知れないが、今はまだ出来ません…」

RUSI日本特別代表の秋元氏によればウクライナは苦しい中から生まれた画期的な技術が多いという。

英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)日本特別代表 秋元千明氏
「(ウクライナは)どこの国も考えないような変わったシステムの兵器を非常に安く作るんです。ミサイルとドローンを一緒にしたやつとか、自律型のロボットを沢山作っていて、ドローンも飛ぶものだけじゃなく、地を這って適陣地を攻撃する地上ドローンとか、対空ミサイルを搭載してヘリを撃墜できる水上ドローンとか…。辛いから新しい発想が生まれてくる。(兵器によく使われる)チタニウム合金とかアルミ合金とか使わずに非常に安い材料で作る。面白いのは一般のセスナ機をドローンに改造したりもする…」

とはいえ、ソフトウエアやAIを駆使した精密兵器や防空システムは欧米からの供与に頼るほかないのもまた現実だ。
だが、ロシアはこの“デンマーク・モデル”をある意味で警戒していると話すのは兵頭慎治氏だ。

防衛研究所 兵頭慎治 研究幹事
「(これまでの軍事支援では)ロシア領内を攻撃するには使用する兵器を供与した国の許可を取らなければならなかった。ウクライナが完全に自立した兵器産業を築き上げそこで製造した兵器であればどこの国にも気兼ねすることもなくロシア領内を攻撃することもできるわけですよ。ロシアが懸念してるのは、この話はウクライナの兵器製造能力を高めるというものなのでかなり気になっているものだと思います」

(BS-TBS『報道1930』5月1日放送より)

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  • 米国のDSを退治したとしても世界中にあらゆる種類の戦争の犬たちが存在し殺戮とそれに伴うビジネスによってしか自己実現ができないのである。彼らの合言葉は「祖国防衛‥」。。
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