なぜ日本は30年も復活できない?資産10億円を築いたFIRE投資家が解説する「権益争い」の末路

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2025年05月05日 09:20  日刊SPA!

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―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―
東京23区の中古ワンルームマンション中心に不動産投資を展開。現在、38戸の物件を所有し、資産額10億円、年間家賃収入4000万円の個人投資家・村野博基氏。バブル崩壊後、失われた30年と言われるほど長期低迷している日本経済について、村野氏は「国力が減っているのだから浮上しないのは当然」と言います。日本経済がなかなか浮上しない理由と企業の取り組みについて、村野氏が切り込みます。

◆「失われた30年」から脱せられない日本経済に物申す

日本経済は長らく低迷しています。バブル崩壊後は「失われた10年」と言われていましたが、その期間は段々伸び20年になり、昨今では「失われた30年」と言われていたりします。

日本経済が長らく低迷しているのは当然のこと。何しろ日本は少子高齢化社会で人口減少社会に突入しています。国の力は、人口の力に比例すると言えるでしょう。高度経済成長期からバブル崩壊までの日本は、団塊の世代が主力の働き手になり、大きな労働力になる一方で最大の消費世代でもありました。現在は若くて消費に旺盛な世代がそもそも減っているのですから国力が弱っているのも無理もないことです。

一方で昨今の「政治家批判」や「財務省批判」も、かなり理解できる部分はあるものの、特定の人物や組織を悪者にして批判をしても、何も変わらないと思っています。財務省も限られた財源のなかでやり繰りをするーーつまり限られたパイのなかで再分配を行っています。MMTの理論も理解できなくはないですが、当然のごとく流通量が増えれば貨幣価値は下がるでしょう。もちろん、タイムラグが発生するので現在の我々は良いかもしれませんが、後の世代に「インフレ」というリスクを回すことは忘れてはいけません。

給料は高くなるかもしれませんが、物価も高くなる。物価がそのままで手取りが増えるような「自分だけに都合の良い世界」なんて、他者との関わりがある社会で実現できると想像するほうがナンセンスだと考えています。

◆皆が「自分の権益を守る」とした結果

個人も企業も税金を減らしてほしいと望みます。しかしながら、水道管や道路といったインフラが次々と古くなっていく現状では、その整備が必要不可欠です。また、年金や医療費の負担の軽減、子どもたちへの教育補助金など、社会全体の利益を考える要求も数多くあります。

ほとんどの人は自分の生活のためのお金については削減されたくないと望みますが、一方で自分に関係のない分野の予算については「無駄遣い」と声高に叫び、削減を求める傾向にあります。その結果、人口が多かった団塊世代の利益を享受できなかったのが、その子供たち世代である団塊ジュニア世代であり、そのまま就職氷河期世代となってしまったと考えています。

◆スペシャリスト偏重のホワイトリスト重視が良くなかった

ちなみに、日本経済が「失われた30年」として長引いた理由はいくつかあるのでしょうが……。私は少し変わった視点として「スペシャリスト偏重によるホワイトリスト重視」があると考えています。

日本企業は個性を重視する流れの中で「スペシャリスト偏重」が行われてきました。自身の専門領域を持ち、スペシャリストになることがキャリアでも推奨されています。確かにその分野で一番を目指すのは素晴らしいこと。しかし、その商品の機能が素晴らしければ売れるものではありません。市場への周知も必要ですし、ユーザーインターフェース・エクスペリエンス(UI/UX)が難解で使いづらければ市場には受け入れられません。スペシャリストを偏重するのは、絶対的な評価のみが重視されて、相対評価を軽視することに繋がります。

物事は複合的に判断するべきです。専門家の一意見、つまり一方的な意見のみで動くことで総合的な判断をから逃げてしまっているように感じます。エビデンスのある一方からの意見のみで動き、総合的な判断ができないまま、物事を進めることが多いと感じないでしょうか。結果、横串が通ってない施策がどんどん生まれて企業組織は硬直状態になっていったと考えます。

◆なんでも勝とうという「ホワイトリスト重視」の弊害

例えば、「海底ケーブルを敷設する」という施策を考えたとき、経済の専門家と環境の専門家では賛成と反対とで分かれるでしょう。海底ケーブルを海に敷設するのであれば、多少なりとも海洋生物への影響は出てしまいます。しかし、敷設しなければ各国と通信情報網から漏れて経済的に孤立してしまいます。

専門家はあくまでその分野の専門家。専門家の観点からはある種の正解があります。しかしそれ以外の観点で言えば正解とは限らないもの。本来であれば両方を天秤にかけて、敷設するかしないかを判断する「ゼネラリスト」が必要です。環境に負荷をかけない形で海底ケーブルを敷設するという折衷案を考え出す必要があるのです。

これはどの仕事にも言えること。営業もマーケも財務も技術も一定程度理解している人のほうが総合的に判断しやすいのですが……。ただスペシャリスト偏重の現在では、突出したものがない総合力重視のゼネラリストはなかなか評価されにくく、結果として創業者や創業家出身の2〜3代目ではない限り、組織の中で決定権を持つような立場にはなれていません。このスペシャリスト偏重は、何でも勝とうとする1番を目指そうとする「ホワイトリスト重視」の考え方につながります。その結果、ブラックリストである「負けを避けること」を軽視しているように思います。

技術的にだったり、経済的に1番になれるかどうかは時の運もあると思います。日本経済もバブル期からの復活を目指して、スペシャリスト重視で一点突破をしようとした結果、かえって「負け」である不況が長引いた。そのように私は日本の失われた30年を考えています。

構成/上野 智(まてい社)

―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―

【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち16区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)

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