「多子家庭支援」の恩恵を手厚く受けられるのは"子ども3人以上の家庭"からなのはなぜ?

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2025年05月08日 18:10  週プレNEWS

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昨年11月に開催された「全世代型社会保障構築本部」で、高等教育無償化のさらなる拡充に言及した石破総理大臣


今春から多子世帯に向けた「大学無償化」が始まった。多子とは子ども3人以上を指し、2人とは違って児童手当の増額など国から受け入れられる恩恵が手厚くなる。その一方で、地方自治体でも子どもが3人目以降で独自の祝い金を支給するところも多い。中には総額100万円を支給する自治体もあり、地方でも様々な多子支援が広がっているようだ。

【写真】多子世帯優遇策は適切なのか

■第3子から児童手当が増額。保育料も無料

4月からスタートした「大学無償化」とは、正確には2020年から始まっている「高等教育の修学支援新制度」の拡充だ。今回の拡充では、子ども3人以上を扶養している世帯が対象となり、所得制限なしで大学(短大ほか専門学校なども含む)の授業料などを国が負担してくれるようになった。

ただし、無償化といっても上限はある。例えば国公立大学の場合は「入学金28万円・授業料54万円」、私立大学では「入学金26万円・授業料70万円」がそれぞれ上限だ。そして、子どもが3人いる世帯でも、長子が就職などで扶養から外れれば、下の子2人は無償化の対象からは外れる。あくまで「扶養する」子どもが3人以上いなければ対象にならない。そのほか、子どもの成績評価にも一定の要件を設けている。

「『大学無償化』では上限額や課される条件がいくつかあるものの、子ども3人以上と2人以下では国から受けられる恩恵に大きな差があるのは確かです。この『大学無償化』以外でも、昨年10月からは児童手当が拡充され、第3子以降はこれまでの倍となる3万円が支給されていますし、保育料は副食費含めて第3子は無料です」(全国紙社会部の教育担当記者)

■3人目以降に総額100万円の応援金

このような多子世帯への支援は国だけでない。地方自治体でも様々な取り組みが広がっている。

山梨県北西部に位置する北杜市は南アルプスの自然に囲まれ、移住先としても人気がある。そんな北杜市では2022年から、第3子以降が生まれた世帯に対し、その子が7歳になるまで総額100万円の応援金を支給するようになった。

同市では出生時に第一子で10万円、第2子で30万円を支給するが、第3子以降はさらに手厚くなり、出生時に30万円、3歳で20万円、7歳で50万円と、その子の成長に合わせて支給する。首都圏から子育て世帯を呼び込みたい狙いもあるようだ。

2年前に都内から北杜市に家族で移住してきた中山久さん(仮名、42歳)は、このような多子世帯への支援が移住する後押しになったという。

「当時妻は第3子を妊娠中。私も妻も遠方の地方出身なので、助けてくれる親戚も周囲におらず、夫婦だけの子育てに限界を感じていました。そんな時、たまたまネットニュースで北杜市の多子世帯への取り組みを知りました。

元々北杜市は大学生の時に趣味の登山で奥秩父や八ヶ岳に何度か訪れたことがあって、空気が澄んでいて夏も涼しくて住みやすい街だなという好印象もあり、妻を説得して移住を決めました」(中山さん)

中山さんは移住に際して勤め先は変わらず、ITベンチャーでシステムエンジニアとしてフルリモートで働く。都内の会社に出社するのは月1、2回だという。

「最寄り駅から新宿まで特急を使って2時間ほどで行けますので不便は感じません。たまに行く東京が新鮮で楽しいです。移住後まもなく生まれた子どもは、生まれた時に30万円、まもなく3歳なのでまた20万円もらえます。一度に支給されると生活費に消えてしまうので、分割支給されるのはありがたい。子どものために全額使おうという気になりますよ」(中山さん)

北杜市の応援金には支給の条件に「支給対象児が満10歳に達するまで、対象児とともに本市に定住する意思があること」とあるが、中山さんは昨年、同市の子育て世帯向けの補助金も利用し、新居も構えた。

「定住というか、終(つい)の棲家です。またどこかに引っ越すことは全く考えていません。子ども3人で都内にいたら、住居費もめちゃくちゃ高かっただろうし、経済的にかなりきつかったと思います。都内ではフルタイムで働いた妻も、いまは気ままにパートを楽しんでいます。多子世帯は地方移住を勧めたいですね」(中山さん)


一方で、「3人未満家庭」からは多子家庭との線引きに疑問の声も上がる。福島県南部で3歳の一人娘を育てる、杉原里香さん(仮名、39歳)はこう話す。

「うちの自治体の出産祝い金制度では、第2子までは支給額が30万円ですが、第3子からは50万円に跳ね上がる。しかし、出産や育児の大変さは子供の数に関わらず同じ。むしろ第1子こそベビーベッドやベビーカーなど新たに購入しないといけないものがたくさんあるので、経済的負担は大きいはず。子供の数で支援額が変わる制度には不満もあります」(杉原さん)

これについて、前出の教育担当記者の見立てはこうだ。

「少子化を食い止めるには、合計特殊出生率で2.06〜07となることが必要とされている。つまり、人口増加に寄与する子供の人数は3人ということになる。多子家庭支援の多くに『3人以上』の線引きが存在する背景には、戦前戦中から引き継がれた古いナタリズムがあるのでは」(教育担当記者)

総務省が去る4月に行った発表によると、2024年10月の人口推計で日本人は前年比89万8千人減の1億2029万6000人で、減少数は過去最大。都道府県別で人口が増加したのは東京都と埼玉県だけだった。

待ったなしの少子化対策。子をもうけることを経済的理由で諦めるカップルが一人でも減る社会づくりが急務だ。

文/山本優希 写真/photo-ac.com

このニュースに関するつぶやき

  • DQNの在日外国人の家族は3人以上の多産家庭が多いので岸田の宝を応援したい石破政権はそれを狙っているんだろう。
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