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パナソニック ホールディングス(以下、パナソニックHD)は5月9日、構造改革の一環として1万人規模の人員削減を行うと発表した。同社の楠見雄規社長は、同日開催したオンライン会見で自身の今年度の報酬総額の40%を返上することも明らかにした。
同日発表した2025年度3月期通期の連結決算(24年4月〜25年3月)は、売上高が8兆4582億円(前年比0.5%減)、営業利益は4265億円(同18%増)、純利益は3662億円(同18%減)。
前年にパナソニック液晶ディスプレイの解散と債権放棄を決議したことに伴う法人所得税の減少があった反動で減益となったものの、はた目には大規模な人員削減を行うような切迫した状況には見えない。
なぜ、今なのか。
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楠見氏が挙げた理由は、これまで続けてきた構造改革の遅れだ。パナソニックHDは、2022年度から24年度の中期戦略で、1)累積営業キャッシュフロー2兆円(22〜24年度)、2)ROE(自己資本利益率)10%以上、累積営業利益1兆5000億円(22〜24年度)を掲げていたが「22年度から24年度は大きく目標未達だった」という。
「先行して改革を進めている他社をベンチマークにすると販管費率が5%くらい高い。固定費の構造にメスを入れなければ成長に転じることはできない」。24年度の営業利益率も「悪くないようにみえるが、他社に比べると低収益」としている。
このため25年度は経営改革に集中し、社員一人あたりの生産性が高い組織へと変える考え。グループ各社で営業部門や間接部門を中心に業務効率の見直しを行い、必要な人員数を設計し直す。
その一環として、パナソニックHDの連結対象会社を対象に、早期退職なども使って国内で5000人規模、海外でも5000人規模の人員削減を行う。25年度を中心に実施する計画で、構造改革費用として1300億円程度の損失を見込む。
また不採算事業からの撤退や他社への譲渡、拠点の統廃合なども実施する計画だが、詳細については「決定してから順次お伝えする」と慎重な姿勢。2月のパナソニック解散騒動が影響したようだ。
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新たな目標は、28年度に収益改善効果3000億円以上、そしてROE10%以上など。ROEは、株主から集めた資金(自己資本)をいかに効率よく利益につなげているかという指標で、業種により平均値に違いはあるものの10%以上が理想とされている。
「雇用に手を付けるというのは、本当に忸怩(じくじ)たる思いで(社員には)申し訳なく思う。しかし経営基盤を変えなければ、10年後、20年後も社会への責任を果たせる企業であり続けることはできない」(楠見氏)。
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