フランスに本拠を置くゲーム会社、Ubisoftが、5月14日に2025年度4月期(4月14日までの1年間)の通期決算を発表しました。売上高は前年比20%減の18億4600万ユーロ。この発表の後、同社の株価は18.2%も下落しました。
Ubisoftといえば、いわゆる「DEI」に傾倒しているといわれるゲームメーカーの一つです。DEIは、本来なら多様性・公平性・包括性を尊重する考え方なのですが、黒人やLGBTQ+の人たちの権利を主張するあまり、なぜかそれ以外の人たちがないがしろにされる状況を生み出してきた経緯があり、嫌っている人も多いのが実情です。例えば、女性のスポーツ大会にトランス女性(元男性)が出場して無双したとか、逆にトランス女性の出場を認めた大会を女性アスリートたちがボイコットした、なんて話もあります。
Ubisoftの人気ゲームシリーズの最新作である「アサシン クリード シャドウズ」(以下アサクリ)は、昨年春に主人公を実在した黒人の「弥助」にしたと発表したことで、海外のゲームファンの間で「DEI的なゲーム」と認定されたことをきっかけに、それから1年近くも炎上を繰り返してきました。決算では具体的な販売本数は公表されませんでしたが、芳しくはなかったとみられ、それが株価に現れたかたちです。
この連載でもDEIの要素の大きいゲームを何本か取り上げてきましたが、そのすべてが成功とはほど遠い結果となっています。多様性に配慮したキャラクターデザインが不評だった「CONCORD(コンコード)」は、わずか2週間でサービスを終了。開発スタジオも閉鎖に追い込まれました。
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・「コンコード」はDEI(多様性)に殺された? ゲーム好きのマンガ家が最近、気にしていること
・「コンコード」開発スタジオは閉鎖 SIEが発表 開発に8年かけるも2週間でサービス停止
DEIコンサルタント会社の関係者が制作に関わっているということで炎上した「Unknown 9:Awakening」は、SteamでCONCORDを下回る最大同時接続数を叩き出しました。人気シリーズの10年ぶりの新作だった「ドラゴンエイジ:ヴェイルの守護者」は、発売からわずか4カ月でPlayStationのオンラインサービスで無料で遊べるようになりました。
・多様性に配慮したせいで不評とされる「アンノウン9」をマンガ家がプレイした感想は……「ちょっと違う」
ボクはCONCORDを除き、上記のゲームをすべて遊びました。感想はそれぞれの記事に譲りますが、実はアサクリに関しては楽しんでプレイできて、クリアまでしています。操作性で気になる部分があったり、代わり映えしないサブクエストに飽きたりはしたものの、全体的な完成度は高く、さすがは人気シリーズの最新作と感心したものです。
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ただ、アサクリをプレイしていて、DEI要素の強いゲームは「そこそこ面白いだけじゃ売れないだろうな」と感じたのも事実です。これらの作品は、キャラクターの容姿や性格、そしてストーリーに至るまで「こうあるべき」「こうでなければダメ」といった縛りがあるように感じます。つまり制作上、大きなハンデを抱えた状態で作られたゲーム。それ以外の部分が相当面白くないと売上が伸びることはないでしょう。
ゲーム開発者も人間ですから、その人の考え方や思想が入り込むことはあるでしょうし、ゲーム内でうまく昇華できていればボクは文句を言うつもりはありません。ただ、メッセージ性を追求するあまり、抱えてしまったハンデに気付かず、あるいは無視してきた結果が現在の状況ではないでしょうか。ゲーム会社には、まず純粋に“面白いゲーム”を目指してほしいと思います。
●著者紹介:サダタロー
1998年にテレビ番組「トロイの木馬」出演をきっかけに漫画家デビュー。代表作は「ハダカ侍」(講談社、全6巻)、「ルパンチック」(双葉社、1巻)、「コミックくまモン」(朝日新聞出版、既刊7冊)など。現在、熊本日日新聞他で4コマ漫画「くまモン」を連載中。Pixivはsadataro、Twitterは@sadafrecce。
●連載:サダタローのゆるっと漫画劇場
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漫画家のサダタローさんが、世界初の電脳編集者「リモたん」と一緒に話題のアレコレについてゆる〜く語るまんが連載。たぶん週末に掲載します。連載一覧はこちら。過去の連載はこちらからどうぞ。
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